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奥出雲で燻されて2017/09/17 4:24 pm

島根県奥出雲町にある「囲炉裏サロン“田楽荘(だらくそう)”」を訪ねました。

移住した白山洋光さん・里香さんがお住まいの250年前の古民家。農作業や民泊体験ができます。

天井は煤で真黒、栗の木が燃える囲炉裏端は煙いのですが炎を見ながらだと話が弾み、安らいで時間がたつのを忘れます。

体中が煙臭くなりましたが、“燻される”ことは、“癒される”ことなのではと思えました。

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お二人は関東で出会い、13年前、今のように移住ブームになる前に、奥出雲に来ました。お二人いわく「気にいって勝手に来た」のだそうです。

今でこそ、移住者募集で行政が手厚く応援している仕組みがありますが、それよりもずっと前です。

外食産業にいらした洋光さん(45歳)は、「食べるもとは、作るからやらないと」と思い、だんだん無農薬の農業や自然を大切にする暮らしなどに目覚めていったそうです。

里香さん(44歳)は松江出身、外国の子どもたちに日本語を教えることを目指して大学から東京へ。

2人とも、満員電車に揺られてクタクタになる暮らしが嫌になり「何処に身を置いて、どう暮らすか」を真剣に考え、奥出雲にたどり着いたとのことです。

道路からの入り口は、藤のツルが絡まって、緑の門のような、トンネル状になっています。

どんな背広姿のおじさんも、ここをくぐれば子どものように瞳が光り出す。そんな、ファストライフからスローライフへ至るトンネルのような印象です。




白山さんたちが住む前は、おばあちゃんが一人で暮らしていたとか。快適に直せばできるのでしょうが、あえて昔のままの壁、雰囲気を残しています。

「遠くにいるここの身内の人たちが、またここに住みたくなったらお渡しする、それまでこの家のお守りをするつもり」なのだそうです。



土間も昔のままで、ピカピカ。土に雲母が混ざっていて、光線によって光ります。

贅沢な入り口、入った途端に煙の匂いがしました。なつかしいと思うのは、ある年代以上の人でしょう。私はなつかしい。

家に囲炉裏こそなかったですが、お風呂を薪で沸かしていた。あの匂いです。

広い座敷。昔はここで、お客様を迎え、お葬式も結婚も、法事もやって来たはずです。

今は、田舎を体験したい人たちが泊まる。5人が限度。完全予約制で2食を一緒に作って、泊まって、体験料は一人8,800円です。

夏にはここに麻の蚊帳が吊られる。ああ〜その時来たいなあ〜。

冬は家ごと雪に包まれることもあるとか。その方が温かい。雪のない冬は、家の中で零下15度にもなるそうです。

そもそもここの名前の「田楽荘」は、出雲弁で馬鹿者という意味の言葉「だらくそ」から。白山さんのジョーク。

里香さんから「奥へどうぞ」と促されて、囲炉裏端へ。






暗い!都市の普通の家の照明になれていると、ここはかなり暗い。もちろん電気は通じていますが、あえてピカピカに明るくしないのがお二人の方針とか。

そのうち目が慣れてきました。確かにこの古い家には、このくらいの明るさが似合っています。

それに薄暗いと緊張がほぐれるというか、リラックスできるというか。化粧直ししていないことも、疲れた顔のことも、自分で恥ずかしくない、気にならなくなります。


囲炉裏端で「まこも茶」と「キンカントマト」「藻塩」が出ました。

この在来種のトマトの美味しいこと。白山さんはこういう物にこだわって農作しています。出雲市の夕日の名所・日御碕あたりで作られる本物の塩の、これまた美味しいこと。この塩で日本酒が飲めるなあ〜。

「まこも茶」は穏やかな味がして、何杯も。飲めば飲むほど善人になるように思えます。この地の名水で淹れているからでしょうか。

白山さんはとめどもなく語ります。奥出雲について地元の人よりも知っている感じ。おそらくよそ者の方が、いろいろに興味を持って探求するからでしょう。

それだけでなく、白山さん夫妻の言葉の端々に、土地の人への尊敬の気持ちが感じられます。おじいちゃんやおばあちゃんが守ってきたこと、繰り返してきたことの尊さを、他所から来たからなおさら分かる。それを地元の人にも気づいてほしい。お二人とも力説はしませんが、普段の暮らしのなかで、それを示しているように思えました。

囲炉裏の横のコンテナには青い渋柿が。里香さんが柿渋をとるための作業中です。










ミキサーにかけて樽に詰め、3年ぐらい置くと渋が取れるとか。この渋と囲炉裏の煤を混ぜて木を磨くと長持ちして、艶も出るそうです。









「柿渋は二日酔いにもいいんです」と白山さん。お二人には、誰も相手にしない青渋柿も宝なのです。









お二人は奥出雲でお仲間と綿の栽培も。その綿が5パーセント含まれた、ピュアコットンのタオルも販売されています。

お母さんに抱かれているような安心感ある肌触り。普段使っているタオルは何だったのだろう?と考えてしまいます。




台所のカウンターに小さな粒の梅干しが瓶に詰まっていました。手間を考えると、私にはできません!

「植物や野菜が大好きなんです。苦にならないんです」と里香さん。カボチャにもピーマンにもその愛情が注がれています。

ガスは使わない。囲炉裏の火でご飯を炊き、味噌汁を作り、お茶を煮だす。人が多い時は、囲炉裏にいくつも火をおこす。「慣れれば大変じゃないですよ」と。

囲炉裏端でお二人は火の番をしながら寝るそうです。煙は家を守り、虫を寄せ付けない。衣服に煙の匂いが付くと、その匂いで猪やクマなどが人のテリトリーと判断して襲ってこない。お二人からいろいろなことを教わりました。

「人が囲炉裏を囲むようなところを作りたかった」という白山さん。その意味が分かったように思います。

奥出雲で、すっかり燻されて、癒されて、東京に持ち帰ったタオルからは煙の匂いがしました。

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略歴

<野口智子(のぐちともこ)>
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局長
千葉市生まれ。東京でコピーライター、プランナーを経験。1977年静岡県に移り企画・編集プロダクション設立。
1992年ゆとり研究所を開きコンサルタント業務を開始。
ライフスタイルの提案、「一店逸品運動」による商店街の活性化、時間消費型観光おこし、人材育成などの分野で活動。
2000年からスローライフ運動を開始、2003年スローライフ・ジャパンを設立、現在、事務局長・副理事長。
2006年から活動拠点と自宅を東京へ。現在はスローツーリズムの提案、商品開発、地域観光の育成、都市と田舎の交流、移住・定住プロジェクト、“食”をテーマにしたまちおこし、などに力を入れている。住民参加の独自の楽しいワークショップが得意。
現在、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域再生マネージャー(ふるさと財団)、国土審議会半島振興部会委員。