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お手振り「SL大樹」2018/10/15 2:39 pm

日光市の下今市駅から鬼怒川温泉まで走っている「SL大樹(たいじゅ)」に乗りました。

ほんの35分間の蒸気機関車体験ですが、驚いたのは沿線の方々が手を振ってくれること。家のベランダから、イモ畑から、ふと見ると手を振っています。

ついこちらもニコニコと振り返します。往復乗ると、何人もの人と友達になった気分。

淋しくなったらお手振りを求めて、また乗りましょう。
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東武鬼怒川線に50年ぶりにSLが走ったのは昨年の夏。下今市の駅舎もぐっとレトロに、新しく古くなりました。









SLについての魅力は、撮り鉄、乗り鉄、SLマニアの方にお任せするとして。ここのSLは首都圏からすぐに、サッと乗れるというのがひとつの際立った特色と私は思います。

片道35分ならば、日帰りで往復2回なんて乗り方が可能なのですから。





東武鉄道の偉かったのは、SLを単なる観光資源だけにせず、まちづくりのきっかけにしようとしたこと。

「SL大樹にみんなで手を振ろうプロジェクト」や花植え、絵画募集、ネットワーク組織の立ち上げなどを行い、沿線住民の地域づくり運動を展開しています。



カメラを向ければ、関係者がサッとポーズを取ってくれる。

駅員さんもSLアテンダントさんも、素敵な笑顔ですね。







誰もが写真を撮りたい撮られたい時代ですから、SLなどはとても良いモチーフなのでしょう。










運行初日などに、地域の人たちがずらっと並んで手を振るということは多々あります。

でも、ここではずーっと一年以上も、誰かが手を振っている。

SLを撮りに来ている人が、カメラそっちのけで手を振っている。




ふと見ると、景色の中に手を振っている人がいる。

右にも、左にもです。









手を振られれば、こちらもつい嬉しくて振り返すから、ああ、写真が間に合いませーん。










あの親子は、何時からあそこで待っていてくれたのか?

今日の夕飯の時に、このお手振りの話をするのでしょうね。また振りに行こうね、なんて話すのでしょうか。







山手線のようにしょっちゅう走っているわけではないので、調べて待って手を振る。傘を振り回したりしている。

あのエネルギーは何なのだろう?こちらにも力が伝わってきます。元気になります。

わーい!と声が出ます。



イモ畑の端のおじさんは、どんな気持ちであそこに1人、ちょっぴり恥ずかしそうに立っているのだろう。

旗までもって、振ってくれる。

心がジーンと熱くなります。きっと客車の窓からもたくさんの人が手を振っている、その笑顔がおじさんにも届いているはずです。


ベランダでワンちゃんを抱いて、その小さな足を振っている女性も。

なかにはSLの絵を描いた大きな看板みたいのを持って、飛びはねている家族もいます。

これまた、こちらが大きく手を振っているうちに写真が撮れず・・。



踏切で止まっている車、手前から2番目の車の窓で手が振られてます。

遠く離れていても、向こうとこちらが繋がっている感じ。糸電話で声まで聞こえてきそう。








病院の前には、車いすのおばあちゃんが。お手振りをするために外まで出てきていました。SLへのお手振りは、ワクワク感もあるし健康に役立っているのでは。

なんだか、泣けました。





こんなに普段、手を振られてことなどありません。

理屈じゃない、ただただ笑顔が手を振ってくれる、そうするとこちらも笑顔で手を振る。

窓越しに、損得抜きの人間関係ができている。「人間て、いいなあ〜」と思えてきます。



都会暮らしは過酷です。他人を無視しないと生きていけないこともある。

いえ、家族でも、夫婦でも。笑顔で手を振るなんてこと、だんだんなくなってきています。

そもそも今回の旅行で、家族のだれかが手を振って見送ってくれたかしら?

このSLに乗って、たくさんの手のひらをみて、心が温まった人が多いのではないでしょうか。

そして、「SLが走っている、すごいなあ自慢だな」と胸を張るそんな地元家族も多いことでしょう。

この「SL大樹」に乗ると、アテンダントさんが昔のSL写真のハガキにスタンプを押してくださいます。

都会のマンションに、これを飾っておきましょう。そして「なんだか1人っぽっちで、心が寒いなあ〜」という気持ちになったら、「SL大樹」に乗ることを思い出しましょう。

大樹に身を預ければほっとして、たくさんの手のひらが心を温めてくれます。

温泉にも浸かれば、身体も温まって帰れますね。


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略歴

<野口智子(のぐちともこ)>
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局長
千葉市生まれ。東京でコピーライター、プランナーを経験。1977年静岡県に移り企画・編集プロダクション設立。
1992年ゆとり研究所を開きコンサルタント業務を開始。
ライフスタイルの提案、「一店逸品運動」による商店街の活性化、時間消費型観光おこし、人材育成などの分野で活動。
2000年からスローライフ運動を開始、2003年スローライフ・ジャパンを設立、現在、事務局長・副理事長。
2006年から活動拠点と自宅を東京へ。現在はスローツーリズムの提案、商品開発、地域観光の育成、都市と田舎の交流、移住・定住プロジェクト、“食”をテーマにしたまちおこし、などに力を入れている。住民参加の独自の楽しいワークショップが得意。
現在、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域再生マネージャー(ふるさと財団)、国土審議会半島振興部会委員。