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お仕事 「ワイン城」の宝 2018/06/04 12:41 pm

北海道池田町の「ワイン城」。自治体ワイン造りの先駆、「城」は北海道観光の重要な立ち寄り先として君臨してきました。

しかしハードもソフトも改修時期です。今回特別に、専門的な解説を受けながら見学できました。

寒冷地のブドウ栽培、地下の古いワインセラー、ブランデー造りなどなど。

物はどこでも買える時代、この「学び」こそが城の宝と、実感しました。
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私はワイン好きでこだわりのワインを日々飲む、というわけではありません。

やたらワインの講釈をする方が多いですが、私はその全く逆でしょう。

だからか、これまで「ワイン城」?観光施設でしょ。くらいでそれ以上の興味は持ちませんでした。

今回うかがったのはお天気の日。「城」は山の中ではなく、JR池田の駅からすぐ、ホームから見えるすぐそこにそびえていました。

線路沿いを歩いていくと、なんだか映画の重要なシーンに出てきそうな線路を渡る歩道橋がありました。

フィルムコミッションの方がこれを見つけたなら大発信するだろうと思える、インスタ映えするサビ感が貴重。

あんまりかっこいいいピカピカの世界では人は緊張するものですが、なんだか味があって心が緩みます。

さっきまでのファストライフと別れて、スローライフに渡る結界のように思えました。

ちょうど子どもたちが楽しそうに渡ってきて、こんにちは〜!と挨拶です。

スローな世界に入ったからか、緑を渡る風や、足元の花に目が行きます。

大型観光バスでドンと着いた「ワイン城」と、こうしてゆっくり歩いて入るのと、印象はずいぶん違うでしょうね。

建物がお城のようなのでこの名がありますが正式には「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」。城は地下2階、地上4階、1974年の建設。耐震改修と合わせて今、リニューアルを始めています。

もともと観光施設というよりは、研究所であり、目的は町の農業振興にあったわけで、ここのワインは「十勝ワイン」の名で出荷されています。

ワインにうとい私でも「十勝ワイン」の名は知っていました。
ホームページにはこうあります。

〜〜『昭和20年代後半、十勝地方は次々と自然災害に見舞われました。・・・十勝沖地震・・・2年連続の冷害による凶作となりました。この苦境からどう脱却するのかという中から、「ブドウ栽培」と「ワイン製造」への道が生まれたのです。
当時の町長(丸谷金保氏)の発案で、「秋には山野には山ブドウがたわわに実る。冬の厳しい池田でもブドウ栽培が出来るはず。農業所得のアップにつながり、町内に多い未利用の傾斜地も活用できる。」・・・ゼロからのブドウ栽培といった壮大な挑戦が始まりました。昭和38年には果実酒類試験製造免許を取得し、国内では最初の自治体経営によるワイン醸造を手がけ始めました。』〜〜〜

始まりは、北の地で生き残るための必死の策だったのですね。だから今も「ワイン城」は町営。研究所であり、工場であり、観光施設であり、まちおこしのシンボルということになります。

今回は安井美裕所長さんがご案内くださいました。

大変に知識豊富な方で、穏やかに歴史の話、ワインづくりの話、丸々本一冊分くらいのことを解説くださいました。

各地で観光ガイドのお話を聞きますが、ウケねらいやうわべの話が多く残念なときもあります。

今回の技術肌の所長のお話をうかがう時間は、まさにプレミアムなひとときでした。

「ブドウ・ブドウ酒研究所」略して「ブブ研」の品格と、誠実さがにじみ出てくるようなお人柄です。

最初に見せていただいたのがブドウ畑。「ブブ研」の歴史はまさに品種改良の歴史、寒さの中で育つブドウを作ることだったそうです。

この畑のブドウは、幹がかなり下の方に横たわって見える。これは寒い時期は培土して土の中で冬を過ごすからだそうです。

土を盛り、幹に布団をかけたようにして、春になったらその土をまた取り除く。大変な手間のかかる作業をしているのでした。

一方こちらは、培土しなくても大丈夫な品種。ここまで来るのにどのくらいの改良作業が行われたのか・・。

ここのブドウの基本は山ブドウ。寒さに強い山ブドウと醸造用品種の交配により、耐寒性ある品種にしていったとのことです。

冷涼な北国でつくられるブドウは酸味が強くなる。それを活かして、十勝ワインはこれまで一貫して辛口路線を堅持してきたとのことでした。

苗をどこかから買って植えるわけではありません、「ブブ研」ですから苗から作ります。

一見、美味しそうな野菜にみえるのがブドウの苗。これは寒さに強い「山幸」。この名前でワインも売られています。

この苗そのものを売ってくれないかしら?東京の我が家では、うまく実らないかもしれませんが、窓辺に「ワイン城」のブドウが観葉植物代わりにあるだけでなんだか嬉しい。

「山幸」を飲みながら、「山幸」の緑を楽しむなんて素敵です。

一般観光客が入れないエリアに、「ブブ研」の出発当時の看板が掲げられ、小さな建物がありました。

畑作業を終えた方が農具を洗っています。ワインが美味しい、まずい、安い、高い、などと消費側は簡単に言いますが、日々、こういう方々の汗がブドウを育て、私たちの食卓と健康を作ってくださっているのですね。


その昔の研究所の地下に、ワイン貯蔵庫がありました。

もちろんもっと大きな貯蔵庫は別にあるのですが、ここは超特別なビンテージもののワインセラーです。

急な階段で、一見、忍者屋敷の隠れ穴のようです。



ひんやりした地下はフサフサ?に育った、カビの世界。ここで特別なワインは眠っていました。

このカビに、え?と驚きますが、もちろん飲めるし、むしろワイン好きにはたとえひとなめでも味わいたいところでしょう。

古ければいいというものでもない、その年の気候、その前の年の気候などでブドウの、ワインの出来が違う。ひとつひとつを解説していただきました。

ブランデーの樽が眠る倉庫。ここも一般は入れないエリア。樽が少し動いているように見えるのは、地震によるそうです。

一滴、手の平に垂らしていただきました。両手でこすると、もうこれは純度の高いアルコール。

あのブドウ畑から、ここまで来るのに何年かかり、どれほどの手間がかかっているのでしょう。

ワインの貯蔵樽です。紫色にウエスト辺りが色づいています。

樽はワインを吸い少しずつ蒸発させます。その分空気がたまる。なので、週に2回、ワインを一杯に継ぎ足し、蓋をすれば溢れる。そのこぼれたワインだそうです。きれいです。こんな着物や帯がほしくなる!



「ワイン城」のオフィスエリアで、品評会に出すワインを決めるテイスティングが行われていました。

ワインのテイスティングなんて聞くと、おしゃれでカッコいい世界のように思えますが、雰囲気は実直です。





「ワイン城」は世の中の移り変わりの中で、一歩一歩「ブブ研」として歩んできたのでしょう。

そんな真面目な、本物のところだからこそ、これからは少し笑顔やコミュニケーションや、発信にチャレンジしませんか。

町の中学生がブドウ収穫を手伝い、そのブドウで作ったワインは成人式にプレゼントされるということも聞きました。

もっともっと、城を開放して、町民が参加できる仕組みを考えてもいいでしょう。

十勝ワインに親しんでもらうための、オリジナル資格制度「十勝ワインバイザー」をつくり、早くからワインファンを育てているとのこと。皆でワイン談義できるFacebookページをつくってもいいですね。

今回をきっかけに、何だか私も試験を受けたくなってきました。


屋上からは、広々とした景色とすぐそこの池田駅がみえます。

今までは車と観光バス主体だった観光客も、今後は電車でスローにやってくる人が増えるはずです。電車ならワインもたっぷり飲めますね。

そして、この城の後ろに広がるスローライフな丘、森を散策し、民間のロッジに泊まってもいいでしょう。あちこち巡らない、「ワイン城」でワインのある暮らしを学ぶワイン合宿もいいですね。

所長の質の高い講義などを頂点に、ワインについて、池田のチャレンジについても知る。

さらに、日本の普段のおかずやご飯に合う、ドイツやフランスにもない“和いん”の世界にも触れる。肉じゃがに合うワインは?なんて知りたいですもの。

町民の方々からワイン料理を習ったり。ブドウのツルでリース作りをしたりもしましょう。

ワインはスローフードの代表なのですから、ここで皆がスローライフを身につけて帰る、そんなお城の在り方もあるはずです。

物を買うより、知識や体験にお金を払う人が増えているのですから。


帰りがけに帯広の屋台で「山幸」をいただきました。所長のプレミアム解説をうかがったあとなので、一杯をいただくことに重みを感じます。

山ブドウ由来の味、酸味が、十勝を飲んでいる気分にさせてくれます。

同じテーブルに着いた他のお客様が、イタリアによく行くそうで「イタリアに比べると十勝ワインはもっと研究してほしい」などと話されていました。

横で私は思いました。「十勝は十勝、山ブドウは山ブドウ、イタリアと同じじゃつまらないでしょ、“和いん”なんだから!」と。

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連絡先

野口 智子 のぐち ともこ
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局
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NPOスローライフ・ジャパン
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略歴

<野口智子(のぐちともこ)>
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局長
千葉市生まれ。東京でコピーライター、プランナーを経験。1977年静岡県に移り企画・編集プロダクション設立。
1992年ゆとり研究所を開きコンサルタント業務を開始。
ライフスタイルの提案、「一店逸品運動」による商店街の活性化、時間消費型観光おこし、人材育成などの分野で活動。
2000年からスローライフ運動を開始、2003年スローライフ・ジャパンを設立、現在、事務局長・副理事長。
2006年から活動拠点と自宅を東京へ。現在はスローツーリズムの提案、商品開発、地域観光の育成、都市と田舎の交流、移住・定住プロジェクト、“食”をテーマにしたまちおこし、などに力を入れている。住民参加の独自の楽しいワークショップが得意。
現在、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域再生マネージャー(ふるさと財団)、国土審議会半島振興部会委員。