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ちょっとしたこと 「視点」展をみて 2018/06/11 12:35 pm

全国公募写真展2018「視点」。もう43年も続くリアリズム写真の展覧会です。

全国から寄せられた1185作品のなかから、入選入賞した174作品が展示されています。社会的な作品から、かわいい動物、美しい風景まで。

そこに日本の今があるようで、まるでドキュメンタリー映画を観たような、小説を読んだような深い満足感を得る数時間を過ごしました。都美術館で13日までです。
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写真の作品にはそれぞれ作者の思いがあって、また鑑賞する方にも好みがあります。
今回、落選した私から見れば、「すごいな〜」と思える作品ばかりなのですが。こんな写真を撮りたいな〜という作品をご紹介です。

「長いつきあい」というタイトルの作品。
作品ですからここに勝手に載せるわけにもいきません。図録に載っているものを遠くから撮ってこっそりご紹介です。

何を撮ってあるの?と問われれば、高齢夫婦のスナップが主の6枚組。

「1枚目」夫婦はどこかの公園か、参道などの大きな松の樹?の根元、縁石のようなところに座っています。二人ともコートを着ているから冬でしょうか。日も傾いて影が長く伸びています。旦那さんが発泡酒?のロング缶を持っています。缶ビールは冷たいから、奥さんが渡したのか、ピンクのタオルで巻いて持っています。横に寄り添う奥さんは両足を伸ばし、その間に荷物を置いて、落ちないように足首をあげている。足の荷物に気をつけながら、丁寧に柿ピー?を袋から手渡している「こぼさないでよ〜」。これまた旦那は落とさないように手の平を丸めて受け取っている。この後、彼は柿の種を数粒口に入れてかみ砕き、スーッと一口飲む。きっとその後奥さんも、ポンと数粒口に入れる。すると旦那が缶をぬっと渡す。ロング缶を飲みきるまで、寒くても、つまみはこれだけでも、美味しい時間のはずです。

「2枚目」表情の固まった旦那さんと、眉毛をはっきり描いた奥さんが、どこかの神社から帰ろうとしています。両者ともステッキを持って。奥さんの足の開き方から、スイスイ歩けない様子がうかがえます。旦那は手を引いてやるでもなく、片手はポケット。首にはカバーにしっかり入ったカメラ。この参拝で、彼が彼女を撮るなんてことがあったのでしょうか?と一瞬思うのだけれど・・。きっとこの夫婦にはこの距離感がいいのでしょう。少し離れてお互いの気配を感じながらのっそりのっそり歩く。いきなり振り向いて、「おい、そこに立て」などと旦那がつぶやき、奥さんもコトリとも笑わないでカメラに納まるのかもしれません。本当に仲が悪かったら、一緒に出掛けることもないでしょう。夕飯時、美味いまずいなど会話の無いままテレビをみて、「寝る」と言って彼は布団に入る。そういう暮らしをずっと続けているように思えます。それが二人にとっていい感じなのですから。

「3枚目」どこかのイベント会場か?壁面緑化に黄色いビオラが使われている壁を背に、コート姿でベンチに座った夫婦が食事中です。屋台で買ったお好み焼きか?ピザか?ひとつのプラ容器から二人がお箸を使って食べています。奥さんはブランド品の偽物バック、髪の生え際の毛染めが薄くなってきています。夢中で食いちぎっている旦那は、紺色の野球帽とジャンパー。雨上がりなのか、2人は傘をベンチに立てかけています。奥さんは骨の数の多い少し高級傘、旦那は白いビニール傘。奥さんの口元のしわと、旦那の目元のしわが何ともいい味です。けっこう激しい喧嘩をしてきたのかもしれません。今もしているのかもしれません。でも「あんた残り食べなよ」「お前にやるよ」なんて言葉が聞こえそうです。

「4枚目」奈良東大寺の山門横?のように思えるのですが、ベンガラ色に塗られた壁を背に何かを夫婦が見上げています。いかにも久しぶりの旅行という感じ。眼鏡に帽子、黒いショルダーバックの旦那さんは、ループタイなどしそうなお人柄です。奥さんはツーピースなど着て、少し重いけれど革のバックを下げてきました。秋口でしょうか、奥さんの薄手の半そでの服は着やすそう「新幹線の冷房で膝が冷えないようにすその長い服にしたのよ」かしら。何を見ているのでしょう。東大寺の大屋根を見上げているのしょうか。「大きいね〜」「ああ、でかいなあ」これから大仏に参拝なのか、旦那はワイシャツの襟を止め直しています。素直に見上げるこの夫婦に幸あれと思います。

「5枚目」高齢者夫婦が住んでいるだろう家に干されている洗濯物の写真です。画面の3分の1を占めているのはパイル地のピンク色のシーツ。そして、干してあるのはLLサイズくらいの男物の股引。肌着。ホカホカ部厚い女物靴下。いずれもずいぶん着ているのでゴムが伸びているのか、サイズが大きいのか、ハンガーにかけてさらに洗濯ばさみで止めてあります。洗濯物の下には、発泡スチロールに植わったセダム。つつましく暮らしている、夫婦の姿が見えてきます。この洗濯物の乾く頃、「母さん、夕飯は昨日の鍋の残りでいいからよ」「そうだね、じゃあうどん玉でも入れようかね」なんて会話があるのでしょう。

「6枚目」繋いだ手のアップ。男性は素手で、女性は手袋で。男性の右手の薬指に、女性の左手の人差し指がちょいと絡んでいます。ちゃんとつなぐわけでなく、さらりと触れ合う手と手。少しの温もりを感じているのでしょう。女性の手袋の指先にできた毛玉が、生活感を伝えてくれます。


こうして6枚を眺めると、「人生の楽園」風でもなく、もちろんお金持ち風でもなく、普通にそれぞれに長いつきあいをしている夫婦のほどほどの幸せがあぶりだされてきます。わが夫婦も暮らし始めて41年、長いつきあいになりました。不愛想でも、貧乏でも、おなかが出ても、しわだらけでも・・・・まあまあの幸せをかみしめたいと思います。

写真ていいなあ、6枚の写真から本当にそう思いました。

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野口 智子 のぐち ともこ
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略歴

<野口智子(のぐちともこ)>
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局長
千葉市生まれ。東京でコピーライター、プランナーを経験。1977年静岡県に移り企画・編集プロダクション設立。
1992年ゆとり研究所を開きコンサルタント業務を開始。
ライフスタイルの提案、「一店逸品運動」による商店街の活性化、時間消費型観光おこし、人材育成などの分野で活動。
2000年からスローライフ運動を開始、2003年スローライフ・ジャパンを設立、現在、事務局長・副理事長。
2006年から活動拠点と自宅を東京へ。現在はスローツーリズムの提案、商品開発、地域観光の育成、都市と田舎の交流、移住・定住プロジェクト、“食”をテーマにしたまちおこし、などに力を入れている。住民参加の独自の楽しいワークショップが得意。
現在、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域再生マネージャー(ふるさと財団)、国土審議会半島振興部会委員。