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ゆとりある記 練馬の「農」 2018/10/01 2:27 pm

東京23区の中で最も農地の多い練馬区、減少する都市農業をさまざまな工夫で支えています。

援農する“農サポーター”を育てる「農の学校」。農業者が開
校する農の塾「農業体験園」。果物狩りできる「果樹あるファーム」も各種。もちろん「区民農園」や農産物販売の「ねりマルシェ」の開催も。

農が身近にあることの幸せを、皆で大事にしていきたいものです。
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環状八号線からすぐの高松地区を歩きました。車がたくさん行き来している道路から、少し入るとこんな風景がありました。

そこらじゅうが畑や田んぼ、森、という土地の方には、この写真を見て、そんなに貴重か?と思われるかもしれません。

畑には住宅が迫っていますし、大規模農業というような畑でもありません。

でも向こうにはかつて農家がたくさんあったころの屋敷林が少し見える。土が見える。育つ苗が見える。

もしこの近くに住んでいる会社員なら、通勤の朝、マンションを出て歩きながらも、土を耕す人の姿をみたり、ブロッコリーの収穫の様子を見たりする。挨拶もするかもしれない。

土の匂いや、季節の変化を感じる。ヒバリの姿も見るかもしれない。もうそれだけで、この畑は価値あるものなのではないでしょうか。畑からは“癒し”という農産物を受け取っていることになります。

私の住んでいる新宿区四谷には、こんな風景はありません。野菜に出会うのはスーパーの売り場だけ。

土を見るのは街路樹の足元か、小さな公園位なのですから。

練馬区には農地や農家が多いとはいえ、ぐんぐん減っています。人口がいまだに集まっている東京で、減り続けているのは農家と緑でしょう。

「歳をとって、いつまでも安い値段にしかならない野菜を作っているより、もう引退したい」という農家さんがほとんどです。

ならばサポーターを派遣しましょう、というのが練馬区の考え方。高松の「農の学校」では、希望する区民が農家さんや専門家から知識や技術を学ぶことができます。

卒業すれば、相性のいい農家さんのお手伝いに行くことになる。平成27年にできて55人が卒業、31人が農のサポーターとして動いているそうです。

都市部の高齢者で、それまでサラリーマンなどしてきた人、特に男性は、退職後しばらくは好きなことをしても結局はテレビ人間になりがちです。そしてぶくぶく太り、病気になるだけ。

それなら感謝されて作物をつくる応援をする役割を担う方が、建設的です。そういう場があれば学びたいという方、これからますます増えることでしょう。

学んでいるうちに友達もできる、いい空気も吸える、筋肉も着く。農だけでなく、ここは第二の人生学校なのではないでしょうか。

これも、農地と農家さんがあるからできることです。

練馬の農家さんはいいアイディアを考えました。農業は続けたい、いろいろな事情から続けなくてはならないのではあるけれど、マンパワー的に無理。

ならば、農作業を教えてあげる、畑を塾にしよう、というわけです。教えるだけでなく、ちゃんと結構広いエリアで作物を作ってもらう。それを利用者が買い取ったという考え方で、授業料?使用料?体験料?的なものを年に数万円いただく。

これならば農業を続けられる。畑も守れる。自分の身体もしんどくない、というわけです。

畑が農の塾のようになっていると農園が17カ所もあるとのこと。これは他の都市も見習いたいですね。

一般的な区民農園もあります。小さな畑にいろいろ植えている姉妹に出会いました。

「イチゴ作ってみようと思って〜。ホームセンターで苗を買いました」苗ひとつだけ植えて、イチゴは実るのでしょうか?収穫はあるのでしょうか?

「深く植える?浅く植える?どっちだろう?」おぼつかない農作業ですが、もうこの人たちは“くつろぎの時間”“実りへの想像”という上質の時間を得ているのです。

デュズニーランドに行くのとは違う、リフレッシュタイム。こういう時間を自分に用意できるなんて、おしゃれですね〜。

畑の横に「マルシェ」スペースもありました。あちこちで年に30回位農産物のマルシェが立つ。

練馬区民でなくても楽しみ、だからマルシェには年間4万人も集まるのだそうです。

そうなると、畑は、農産物は、観光資源・交流資源となるわけです。キャベツは単にビタミンや繊維を私たちにもたらす物ではなく、「ねりマルシェに行ってみよう」という人寄せパンダにもなるのです。

ブルーベリー農園の多い練馬は「果樹あるファーム」という果物狩り、摘み取りができる農園にも人が集まります。

道ばたにはこんな直売所もあります。

覗いていると、向かいのおうちからお爺さんが現れました。ついいろいろおしゃべりをします。ネギを買います、ナスを買います。ああ、生姜もおいしそう。

もしこれが小さな子どもとお母さんなら、お爺さんは「そこの畑から採ったナスだよ」と教えてくれるでしょう。

子どもはナスの花が黄色いこと、ぶら下がってなることを知ります。お母さんは、抜きたてのネギには泥がついていることを知ります。

興味がわけば、区民農園や農業体験園を借りて農作業もするでしょう。自分が育てた野菜は残しません、捨てません。一度経験すれば、すべての農産物を見つめる目が変わるでしょう。

こうした経験のない子どもや若い親はどうなるのか?生き物のわからない、生き物を扱えない、生き物に優しくできない、そんな人間になるはずです。

都心のマンションに暮らし、育ち、という子どもたちは、親がよほど努力しない限り、自然・緑・生き物・野菜・農作業などを知らずに育ちます。

お受験にパスして高学歴になったとして、歪んだ物差ししか持たない人間ができてしまうでしょう。

だからこそ、練馬は偉いし、素敵だと思うわけです。

すぐそこで採れた野菜が手に入る、食べられる、とうことがどんなに素晴らしいことか。

歩ている時にあった焼肉屋さんは、近くの農家さんの経営。メニューより先に練馬の野菜の讃歌が書かれていました。

こういうお店があることは、この地の誇りですね。

練馬の「農」は、“癒し”“上質なリフレッシュ時間”“生涯学習”“いきがい”“元気な身体”“人の繋がり”“健全な子ども”“緑”“季節の伝達”“賑わい”“地域の誇り”という農産物を創り出します。

さらに、災害時には避難場所になり、畑の野菜は食べることもできます。近々、「世界都市農業サミット」も計画中と聞きました。

練馬、えらいぞ!

そう思いながら、私、いま「練馬大根」についての小学生用のガイドブックを読んでおります。

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連絡先

野口 智子 のぐち ともこ
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局
ゆとり研究所

TEL 090-7433−1741
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NPOスローライフ・ジャパン
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略歴

<野口智子(のぐちともこ)>
ゆとり研究所所長・NPOスローライフ・ジャパン事務局長
千葉市生まれ。東京でコピーライター、プランナーを経験。1977年静岡県に移り企画・編集プロダクション設立。
1992年ゆとり研究所を開きコンサルタント業務を開始。
ライフスタイルの提案、「一店逸品運動」による商店街の活性化、時間消費型観光おこし、人材育成などの分野で活動。
2000年からスローライフ運動を開始、2003年スローライフ・ジャパンを設立、現在、事務局長・副理事長。
2006年から活動拠点と自宅を東京へ。現在はスローツーリズムの提案、商品開発、地域観光の育成、都市と田舎の交流、移住・定住プロジェクト、“食”をテーマにしたまちおこし、などに力を入れている。住民参加の独自の楽しいワークショップが得意。
現在、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域再生マネージャー(ふるさと財団)、国土審議会半島振興部会委員。