こんなことにこだわります

その1「スローウエア 和服」

着物が大好きです。

冷え性の私にはなんといっても暖か、寒風に足をさらすことなく、腰の冷えは帯がしっかり守ってくれます。 夏はこれがまた、結構涼しいんですよ。みやつぐち(脇の下の空いているところ)や裾から、風がふわっと入って汗を飛ばすし、 ストッキングなど履かなくてすむし。

最近しっかり中年太りなのですが、かつてのスーツは全く入らなくなっても着物はOK、 「ぽっちゃりお肉がついた体型の方が似合うわよ」と居直ることもできます。たためばぺちゃんこになって場所を取りません、 出張にスーツ何着も持っていくのは無理でも、着物の数枚はなんのその、しわにもなりません。

そしてなんといっても地域性があります。 新潟県加茂市の「加茂縞」、千葉県館山市の「唐山織」と仕事に訪れた土地のものを求めると、そこの思い出にもなります。 最近若い人の間に“昔きもの”の名で古い着物がブーム、これは大歓迎。先ずは安くて趣味に合うものからチャレンジして、 着るのになれるのが一番ですもの。

私も、母が15歳の時の、つまり今から67年も前!のものなど着ています。雰囲気があっていいですよ。 箪笥におばあちゃんの着物などがあったら、引っ張り出してきてあげると着物が喜ぶはず。じゃまだから捨てる?なんて方、それなら私にください!です。

大量生産でない着物の世界は、“手仕事”“味わい深い”“臨機応変”“風土にあった”と、スローライフの象徴のようなものです。 日本のスローウェア、さあ着ましょ、着ましょ。

その2「スロービール 常温」

数年前からあったかビールにしています。

飲屋さんに行くと、「ビールくださ~い」「銘柄は?」「冷蔵庫に入っていない常温を!」という会話になります。7割ぐらいのお店では「ジ・ョ・ウ・オ・ン?といいますと?」と聞き返したり、「ぬるいビールを飲むなんて気味の悪い人だ・・・」とジロジロ見つめられたりします。中にはちゃんとわきまえていて、(きっと過去にこんな不気味な客を経験しているのでしょう)「常温の中でもお銘柄ございますが」と卓越した仲居さんがいらっしゃる料理屋さんもあります。

いずれにしても、常温派はまだ少数なのではありますが、何で?という理屈を並べればいろいろです。「ビール1本冷やすのにどのくらいのエネルギーを消費するのか、おまけにグラスまでキンキンに冷やして、部屋もがんがんクーラーきかせて。体の中から外からそれだけ冷やして一晩飲むと、翌朝は体がだる~い。これを毎日続けると、体がおも~く、お医者さんに行くことになる。身体にも地球にも全くやさしくない、冷やしすぎのビールは、ああ何とはしたない!」などと飲む席で力説する私を前に、「じゃあ、常温にするかなあ。そもそもイギリスのビールなんか温いよね。日本だけだってこんなに冷やすの」なんて人が、一人二人と増えつつある今日この頃です。

まあ、私の職業上、毎日たくさんの人と飲みながら語り合うことが多いので、固い理屈抜きに、ただ身体を冷やさないように、ということなのですが。これはNPOスローライフ・ジャパンの川島正英理事長から伝授された、スローライフな飲み方です。冷え性の方、夏バテしやすい方、試してみてください。

写真は北海道阿寒湖で冷たいビールを温めているところ。極寒の地では冷蔵庫より常温が冷たいなんてこともありますのでご用心!

その3「スローツーリズム  なんでもない旅」

体験参加・時間消費型観光の時代です。

これまでの景勝地早回り観光、温泉旅館ドンチャン観光、お金払うからテーマパークで遊ばせて観光、とは違う観光ということでしょう。ファストツーリズムからスローツーリズムへと、世の中が確実に動いているように思えます。でも、観光業の方や、観光行政の担当者にとっては、なかなか切り替えが大変なところです。今までの観光の仕組みにどっぷり浸かっているとなかなかスローな発想ができません。自分がスローツーリズムを楽しめないと、人に提供もできないものです。で、私などがワークショップ研修をすることになります。

長崎県大島町の浜辺でワークショップしました。みんな裸足になりたがりません。それを「は~い、海に入るよ~」なんて手を繋いで膝まで水に浸かると、みんなの顔が変わります。少年少女冒険団となって貝を拾ったり、おやつをほおばったり。はしゃぐはしゃぐ!!なんと、久しぶりの“だるまさんが転んだ”もやってしまったわけです。

岩手県田野畑村では、なんでもない港と、なんでもない大根畑で遊びました。「たまにはぼ~っとしたい」と、よくみんないいますが、それなら実際やってみましょうというわけです。時間をたっぷりとってそこにいると、いろんなことが見えてきます。大根の葉っぱのはえ方、虫、フコフコの土。鳥の声、潮の匂い、渡る風。自分自身にも出会える感じ・・・。

「いつも靴はいて、ネクタイして、パソコンたたいてます。裸足になったの、何十年ぶりかな。最近一番の感動でした」「こんななんでもないことで、すごくいい時間をすごせるんですね。うちの町、なんにもないとこだと思ってたけど。なんでもあるんだってことですね」「特別の観光施設を造らなくても、地域の日常に上手に混ざってぼ~っとできるようにすればいいんですね」こんなワークショップ参加者の感想を聞くと、日本各地でなんでもない観光地が増えぼ~っとする旅人が増えてくれそうだなと、こちらはうれしくなるわけです。

その4「スローショッピング 商店街」

昔は、大型店がかっこいいと思っていました。

ガラガラカートを押しながら、ほしいものをポンコラ放り込む買い物の仕方。でもこれだとモノと値段としか向きあえません。「このお魚どうやって食べる?」「おばあちゃんのはく七分丈スリーマーなんだけど」「雨があがって、ようやく布団が干せるねえ」なんて会話ができません。専門知識を得られない、日常会話ができない、四季や風土を感じられない、こんな買い物のしかたはかっこわるいと思うようになりました。

個店や商店街なんて暑苦しい、という考えも分かります。確かに自由にゆっくり見たいときに、店員さんにべったりつかれたらたまりません。でも、お客様が好きに選びたいのか、何か会話をしたいのか、そんなことも判断できないデリカシーのない店には二度と行かなければいいのであって、そんなことで、“商店街”というワンダーランドとの付き合いをやめたらもったいないです。

しかしお店の方も、アメリカ風ワンストップショップが正しい!という風潮に押され、敗れ、自信を無くしてヨレヨレのところがほとんどです。これはファストショッピング、つまり、短時間・効率的・画一的・多量・安価、という土俵で戦ったから。スローショッピング、質・技・知恵・情報・コミュニケーション・地域・文化などの土俵でなら商店街は生き生きするはずだったのに・・・

私は「一店逸品運動」というのをやっています。ひとつの店に何かひとつ“いいモノ”や“いいコト”、つまり“逸品”を皆で育てていく運動です。「こんな店、こんな商店街だめだ」と思っていても、ファストからスローに基準の物差しを持ち替えると、結構いい店、いい商店街に見えてくるものです。そして、本当に逸品づくりに励みます。手作りの広報カタログを作ったり、空き店舗サロンを造ったり、店巡りウォーク(写真は兵庫県宝塚市で)などもしてみます。

結局“お店の人”が逸品になっていくことが一番なので、即効性はありませんが、各地で何か変化が起きていることは確かです。「商店街がいいから、この町離れられない」「訪れた町の商店街がおもしろかったから、また行きたい」そんなスローショッピングなまちが、ゆっくり育つといいな。