龍神村で

美味しい話題

和歌山県の「地域の魅力再発見研修会」で講師をしてきました。自治体職員や住民の方々が集まって、楽しいワークショップとなりました。

研修前に訪ねたのが田辺市龍神村、美人づくりの湯で知られますが、それだけではなかった!

NPOが耕作放棄地にソバを作り、蕎麦屋を経営。もと中学校校舎で巨大シイタケの生産。特産の木を活かした高級家具づくり、など。

私が研修を受けた次第です。
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龍神村にはずいぶん前に、ちらりと寄ったことがある程度。でも、日本三大美人の湯とか、美肌の湯という触れ込みは忘れずにいるものです。

合併して巨大になった田辺市の一部ではありますが、龍神村という名は残っていることが嬉しい。最近は、市より、村という名の響きの方が部外者はそそられるものですから。

お昼はお蕎麦とうかがっていましたが、そのお蕎麦屋さん「和わく」はもと保育所の建物をお店にしたものでした。

何を食べようか迷っていると「龍神マッシュの天ぷらはすごいですよ」の声が。「うん?なにそれ?とにかくそれだ」と頼んだのが「キノコ天蕎麦」。

「龍神マッシュ」とはこの地のシイタケで、肉厚のそれが揚げられてきました。ガブリ、ジューシー。お蕎麦の方もキノコだらけ、コリコリした地元のキクラゲが美味しい。

ここは「ええとこねっと龍神村」というNPO法人の経営。お店の窓の外にはそば畑が広がります。お会いした3人の男性は、とつとつと活動の経緯をお話されます。

最初の頃はただ集まって飲んでいるばかりだったのが、ちゃんと何かやらないと、と、休耕田にソバを植え、そしてお店にまでなったとか。

各種の事業展開をされていますが、なかでも今燃えているのは「公共交通空白地自家用有償運送」について。つまり、足のない人たちのために、NPOが車を出しますよ、という仕組みを始めようとしているのでした。

地元の方と、Iターンの方が一緒にやっているNPO、立派だなあと感心しました。名刺にある「地域を耕す」というコピーが心をつかみます。

さて、お隣の元中学校校舎へと移動しました。ここが「龍神マッシュ」の生産拠点です。

廊下を賑やかに走っていらしたのがここの責任者、伊藤委代子さん。全くの素人だったのがあちこち勉強に行き、ここでシイタケ栽培を始めました。

ハウスの中の棚に菌床を置き、龍神の名水で育つシイタケは、直径8~10センチという大きさで出荷されます。

高齢者や女性が働ける仕事、ハウス栽培なら獣害もありません。もと職員室で袋詰め作業が行われ、伊藤さんのお孫さんになる若い女性が、子連れで働いておいででした。

「龍神マッシュって名は娘が考えてくれたの」、家族や女性たちが仲良く働く場で育ったキノコは、それだけで美味しく育つように思えます。

巨大な龍神マッシュをフライにしてはさんだ「シイタケバーガー」もあるそうです。食べてみたいなあ・・。

私?あんまりキノコが可愛くて食べられないのよ」と元気に笑う伊藤さんのお肌はスベスベ。

シイタケの力なのか、温泉力なのか、水と空気のせいか、うらやましい。


さっきお蕎麦を食べた時に座った椅子も、スベスベで気持ち良かった。その椅子がある「道の駅龍游/ジー・ワークス」に行きました。

ジー・ワークスという名で、龍神の木材を使って、柔らかいカーブの椅子、テーブル、木馬などを作っている松本 泉さんと記念写真です。


「龍神にはアトリエと住まいが一緒になったスペースがあって、何人ものアーチストが住んでいます」とのこと。店内の素敵な藍染めも目を引きます。

道の駅というと、食べ物ばかりを売っていますが、龍神ちょっと違います。

生活提案を感じるおしゃれなものが並び、ずっと見ていたくなります。このお店ごと都会に持っていきたいくらいですが、龍神にあるからいいのでしょうね。


先ほどのNPOの理事のお1人は横浜から移住されたシェフ。龍神に来た頃は中学生だった息子さん・竹内雅美さんは今や結婚し、お父様の開発した「南高梅ドレッシング」を継いでいます。

直売店味工房「梅樹庵(めいじゅあん)」、この小さなお店では、そのドレッシングのほか柚子ケーキや梅シロップ、ジャム、などなどを販売。茶房梅樹庵もあり、冬場はジビエ料理が楽しめるとか。次回はこれを狙いましょう。

今、龍神村では「龍の里づくり委員会」が立ち上がり、地域資源と人材を活かしたまちづくりを始めているそうです。

村の若者中心に集まった40人を超えるメンバーから、27の事業・プロジェクトが発案され、2023年を目標に実現しようという意気込みです。

竹内雅美さんはその企画部会長、要となる人です。がんばれ~~~!

田辺市龍神行政局にはチェーンソーアートの龍が施された看板がかかります。これからこういう看板を増やしていくとか。

村のほとんどが森林で、龍神材は有名なのですからそれを活用し自慢する看板がかかって当然ですね。木はこんなに素敵、こんなに素晴らしいと看板から伝えられますもの。

私もこの看板と同じものを注文したくなりました。


ここはもと役場、ロビーには龍はもちろんのこと、クマ、ゴリラ、キリンなどいろいろな動物が並びます。

そう、この村にはチェーンソーアートの名人もお住まいなのでした。


こんな風に龍神村を回ってみると、龍がぶるるんと動き出している息吹を感じます。

何となく「良いお湯が沸く、静まった山深い湯治場」のようなつもりでいたら大間違い。

龍は眠っていません!何匹もが連なって、知恵を出して、力強くうねり始めています。

研修でお会いした、龍神に住む役者さんも、パステルアーティストの方も、それぞれに意欲的で個性的、キラキラしていました。

役所の方から龍という字を4つ書く文字を教わりました。「てち」と読むそうです。すごいとか、大きいとかの意味だそうです。

調べると64画で一番画数の多い漢字、多言、しゃべり続けるという意味もあるそうです。

まさに、「龍の里づくり委員会」は、すごく・大きく・しゃべり続けましょう!これからが楽しみです。