黒糖作り
サトウキビを絞り、その汁を煮詰める。単純な作業ですが、なかなか難しい。
大規模工場で機械生産なら楽なのでしょうが、昔ながらのかまどで薪をくべ、大鍋で4時間、人が混ぜ続けて煮詰めていくやり方。混ぜ物も一切ナシ、こだわりの黒糖作りです。
出来上がりは単純でない甘さ、なんとなく海の香りもする色々な旨味の含まれた濃い甘さ。元気になりそうです。雲仙市南串山で。
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雲仙市の南側、南串山町。ジャガイモやレタスをつくっていますが、サトウキビも栽培しています。
ザワワ、ザワワ♪という歌がありますが、この海風がどうもサトウキビを健康に育てるらしい。
有馬自然食品の南串山工場にうかがったのは、先月のこと。この冬の黒糖作りの最後に間に合いました。
竹さおのようなサトウキビが積んである、海辺の小さな工場で4人ほどでの作業です。「黒海道」という品種のサトウキビ。これをを刈ったら絞って、汁をとり、煮詰める。その工程は毎日決まった形では行われません。
今日はこの人数でこの作業、今日はやらない、などなど、なかなか見学したくてもタイミングが合わなかったのでした。
作業場の奥に据えられた煉瓦とコンクリートのかまど、火口は4つ。大きな釜が4つのり、それぞれから湯気が勢いよく上がっています。
釜のは30分置きで仕掛けられ、順繰りに4時間立つと汁は煮詰まって、黒糖になっていくわけです。
薪の燃える匂いと、サトウキビの汁が煮える甘い匂いと、湯気と、熱が、作業場に満ちています。
グラグラ煮える汁を、働く男性たちは一時も目を離しません。大きな木製のヘラで、かき混ぜ続けます。
そしてアクをていねいにすくって。
私が舌なめずりをしていたのでしょう、カップに煮えている汁を汲んでくださいました。
「う~~ん、おいしい」サラサラとはしていますが、もう黒糖の味です。
これをパンケーキなどにかけたら美味しいだろうな~。
そうこうしているうちに、一番端の釜が煮詰まって来たようです。温度を計っています。
ここまでドロドロになると、混ぜるのは二人がかり。力がいるし、すぐ焦げてしまう。
鍋に数滴たらすと、代表の宮崎さんが外へ走り出しました。瞬間のかたまり具合と、その色を海辺の明るさの元で確かめるのです。
良しとなったら火を消します。かまどの薪ですから、即は消えません。火を出し、サトウキビの搾りかすをかけたりします。
そして今度は大きなすり鉢へ移して、ゴリゴリゴリ。こうして空気を混ぜ込まないとカチコチの飴になってしまう。
なるほどまた試食したものは、既にお箸の先につければ飴になっていたのでした。
計りの上に型をのせ、重さを計りながら流し込みます。ここまで来るのに4時間から6時間くらい。
何だか魔法の薬ができあがったような感じです。
食べやすいようにサイコロ状に切り分けて出来上がり。
最近は、生姜入りなども作っているそうです。
商売としては全く合わない作業でしょう。こんなに手間がかかるなら、もっと高価でもいいはずです。
でもここの黒糖男たちはそんなことは言わない。要はこの作業が好きなんですね。そして、誰かがやらなくては無くなってしまうから、なのでしょう。
もちろん完全手作り釜炊き黒糖となれば人気です。引っ張りだこで品物は足りない。
でもサトウキビ栽培をしてくれる人が増えないと、黒糖もできないし、釜の前で何時間も混ぜる作業に耐えないとこの味ができない。
ただ甘いだけでない、旨みと、少し塩のような味も感じる、濃い、でもすっきりとした甘さ。上等なお菓子を食べているような本物の黒糖です。
どなたか志ある若者たちが、この作業を継いでいかないでしょうか?
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