湯沢の食

美味しい話題

先日出かけた秋田県湯沢市では、地域の味を楽しみました。

長い根っこも味わう「三関セリ」、雪の中から掘られるアサツキの芽「ひろっこ」、茄子と菊の花とお米を使った甘い漬物「花寿司」、地元の人のおやつ「オランダ焼き」、名産の「稲庭うどん」、地酒。そして、地元女性グループによる様々なお料理の試食。

「食」は地域の顔、表情豊かな湯沢に魅了されました。
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この前は「湯沢の雪」について書きました。http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=504

今回は「食」です。真っ白な雪に閉じ込められたようなこの街で、人々は何を食べているんだろう?

いつも私は、その土地の普通の人が食べているものが気になります。今回も、湯沢の人が毎日のおやつに買っているジモティーな味からスタートしました。


「オランダ焼」です。以前来た時に食べ逃し、気になっていました。駅前にある、お店で焼いています。

よく見ると、「高市青果」というお店。もとは八百屋さん?まそんなことどうでもいいんです。

メニューはけっこうあるのですが、お客さんのほとんどは「オランダ5つと、イモ5つ」なんて買い方。


人気はこの2種に集中しているので、私も迷わずこの2つにしました。

何でオランダ?という質問をしたくなりますが、それもどうでもいいんです。

とにかく三角に切った耳の赤いペラペラのハムが2枚入り、マヨネーズがコラショと絞られる。


今川焼の中身があんこではなく、ハムマヨというしろもの。「さつまてん」は甘味の強いサツマイモをホットケーキミックスでくるんで揚げたような感じ。

熱々を店先でいただきました。食べだすとお茶がすっと出てきます。休憩中のお店の女性が、自家製の即席漬けも勧めてくれました。


その土地に行って、最初に口にした味で土地の印象が決まる。と、いつも思っています。

湯沢での最初の味は大成功でした。「ウェルカムオランダ焼」ってところでしょうか。

商店街を歩くと面白い!見るのも聞くのも初めてのようなキノコ類、山菜の塩漬け等が売られています。食べ方を教わりたいな~。

ホテルでの夕飯です。「せりのキムチ風」、「せりのかき揚げ」、きりたんぽ鍋にもせりがどっさり。そう、湯沢はブランドせり「三関(みつせき)せり」の産地、しかも根っこまで食べることで知られています。

根の歯ごたえと香りがたまりません。エビの天ぷらは全国どこでも食べられますが、このかき揚げは湯沢だけでしょう。

この日、私は「スローライフのまちづくり」という話をさせていただいたのですが、その半分は食べ物の話でした。地域を大事にていねいに暮らすには、土地固有の食べ物、食べ方が大切だからです。

私の話を証明してくれるように、講演会のあとは湯沢の女性グループによる伝統の味・健康な味の試食会。さっきまで壇上にいた私も、いただきま~すモード!

「いぶりがっこチーズのせ」これはお酒がほしい。

「せり焼き」というものも。これはせりの炒め煮のようなもの。これもお酒が合いそう。

「切り干し大根の煮物」はいい味、あ、海草を使った「エゴ」もあります。ああ、お酒が。


ご飯を半殺しにして丸めて汁に入れた「だまこ汁」、普通のうちでよく食べるのはきりたんぽよりこちらの方が多いのだそうです。

これなら私にも作れそう。でもお米の味がやっぱり違いますね~。


6団体の方々がお料理を作ってくださっていましたが、どのグループも「ね、美味しいでしょう!」と自信たっぷりの顔。

この女性たちの永年鍛えた技と、胸を張った笑顔がこの美味しさを作り出すのですね。伝統の味だけでなく、それを活かしたアイディア料理もあり、作り方を知りたかったのでした。


私はあまり時間がなく、つまみ食いでしたが、ゆっくり食べれば、そして皆さんと「お茶っこ」しながらいろいろおしゃべりすれば、さらに美味しい時間となったことでしょう。

この「こざきねり」という不思議なデザート?も忘れられません。


ところで、私はどうしても、どうしても、「三関せり」が欲しくなってしまいました。

すぐなくなってしまう人気ブランド品です、予約をしておいていただき、しっかりと入手!こんな立派なせりは初めて見ました。


栽培している地元の方から、料理のレシピもいただきました。根っこはよく洗ってあること、冬場はビニールハウスの外側は寒いので丈は短く、中側は長く伸びること。いろいろ教えてくださいます。

もっとゆっくりうかがって、三関せりのウンチクをうかがえば、さぞかし面白いだろうと思いました。


せりと一緒に、「ひろっこ」も美味しいよと勧められ買いました。アサツキの芽、雪の中から掘り出すのが大変だそうです。雪深い土地の、春を求める味なのでしょう。

海苔で巻いて天ぷらに、酢味噌和えも、と、同行の方からアドバイスがあります。

紫色のものは気になっていた「花寿司」です。土産物屋さんのものはもっと潰れてしまっていますが、これはさっきどなたかが作ったばかりという美しさ。

ご飯も入り、寿司ではあるのですが、甘い。菊の花の香りと黄色と紫の色と、紅い唐辛子が何とも言えない華やかな美味しさ、美しさです。

さて、いよいよ帰路に着きます。車で送っていただいたまでは良かったのですが、ワサワサ勢いよく繁る長いせり5束、ひろっこ、クルミ、花寿司、これ等の買い物に、お土産にいただいた「稲庭うどん」が私の荷物の現実となりました。

それなのに夫に「オランダ」+「イモ」のセットをお土産にしたく、さらにどっさり買ってしまい、湯沢駅での私は行商の人のような姿になってしまいました。

大荷物、雪のホームで佇みながら考えました。湯沢の食は人を虜にする・・・。

街なかのお店を回りながら、少しずつ地元のものを食べる。ゆくり歩きながら、あっちに寄り、こっちに寄り、もちろん地酒もちびりちびり。

せりの扱い方や、キノコ料理、ご飯の“半殺し”の仕方、などなど地元のおじちゃん・おばちゃんから教えてもらう。花寿司などスイーツ感覚で作りたいもの。

食のツーリズムが可能です。今あるもの、人、技術を活かし、繋げるだけでできる、スローフードウォークです。都会へ食いしん坊集まれ!と呼びかけてみましょう。

実は、今回書ききれていないもっとたくさんの味があります。これだけ固有の食文化があれば、敵なし。伝承のためにも交流は欠かせません。毎月代わりで、いろいろなカリキュラムを作れますね。

何だか食いしん坊としては、ワクワクしてきました。