藍を食べる
雲仙市小浜の「アイアカネ工房」、綿と藍を栽培する染織工房です。
長崎から移住した鈴木てるみさんは「衣食住のうち、衣を手放してしまった現代人に、ゼロから『衣』を作れることを知ってほしい」と体験もさせてくれます。
更に、昔は薬草として使われた藍を、食べることに挑戦。「食べる藍」を商品化しました。
藍粉末と塩のふりかけや、青いお茶。これまた不思議な体験です。
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小浜の刈水地区、坂道を上がっていったところ。キウイの棚の向こうに橘湾が見えます。
小浜は夕日の名所、昼間は青い空と青い海。そして夕暮れ時は海も空も赤くなる。いつもこの2色を見ている、そこから鈴木さんは「アイアカネ工房」と名付けたそうです。
工房に入ると、本当に藍色と茜色が出迎えてくれました。
畑には綿と藍が。綿の畑の向こうにあるのが工房です。今はこうして眺められますが、ここを借りることになった時はまるでジャングルのように荒れた状態だったそうです。
「一人でコツコツと、長崎から通って整備してきたんです。もう、ほんと大変でした」と鈴木さん。後ろの竹やぶの向こうが住まい。渡る橋も手製だそうです。
この藍の花の写真は、10月に伺った時の写真です。昔、おままごとのときに使ったアカマンマに似ていますね。
子どもたちや観光客も染めや織りを体験できます。そうして何かが出来上がると、確かに「衣」を作ることに少し近づくのでしょう。
鈴木さんの言葉を噛み締めると、たしかに「食」には皆がこだわっている。即席ものやファストフードもありますが、スローフードや手作り、地域の味などに目覚め始めています。
「住」もしかり。住まいの大量生産のニュータウンやプレハブ時代は終わり、マンションやハウスメーカーの家でも、国内産の木や漆喰を使ったりし始めています。ログハウスを自ら建てる人も多いものです。
鈴木さんのような古民家の再利用なども、新しい「住」への取り組みでしょう。いま彼女は、近くの古民家を買い取りカフェにし始めています。
そう考えると、「衣」のほとんどは企業化されてしまった。少し前までは布を織らないまでも、ミシンが家庭にあって、子ども服など母親が縫ったり、セーターは編んだりしていました。和服も浴衣も当然のように仕立てていました。
それが今や使い捨てです。流行などというものに左右される消費の代表が「衣」の分野でしょう。ボタンつけや、裾上げすら家でやらない。運針などできない人間になってしまった。
綿から糸を紡ぎ、染め、織る。ここのそんな体験で私たちは何かの目覚めを得なくてはなりませんね。
ところで興味津々の「食べる藍」です。藍は毒消しになると、江戸時代などは長旅には持ち歩いたとか。藍職人は病気にならないといわれ、藍の抗酸化作用は今、科学的にも証明されているそうです。
鈴木さんの藍は、無農薬栽培。お茶で飲むのに、粉にして食べるのに安心。作り始めたところ、今まであまり知られていなかったハーブティーとして評判だそうです。
良質の塩と混ぜたふりかけやお茶も。藍だけのお茶は、入れればほうじ茶のような色ですが、青い色を求める人も多く、青いお茶も作りました。
それがこれ。
ティーバックにお湯を注ぐと、あお~~~~~~!青い色は同じく無農薬で作った蝶豆の花からの色です。そっと飲むとわずかに甘さがある。色とは違う、穏やかな味。
このお茶をベースに、カクテルなど作ったり、チューハイにしたら夏に綺麗だろうな~。なんて、不健康に考える私でした。
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