おきりこみ
久しぶりに、群馬県富岡市を訪れました。市役所庁舎や商工会議所が新しくなっていました。富岡製糸場のイメージに合った、おしゃれなデザインです。
こういう歴史のある街に来たら、古くからの郷土料理を味わいたい。「おきりこみ」をいただきました。
小麦産地ならではの手打ち幅広生麺と、野菜の煮込みです。どんなにハードが新しくなっても、この味はきっと変わらないでしょう。
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会議の予定に私の予定が合わないまま、ずっと欠席で、2年ぶりくらいに富岡市の会議に出ました。
その簡に、あら~~~新庁舎が。
隈研吾さんらしい、木をたくさん使った建物。富岡製糸場のレンガ造りの横にあってもぴたりとするようなデザイン。なんといっても建物前の芝生が心をのびやかにしてくれます。
製糸場で働いていた工女をモチーフにしたゆるキャラ「お富ちゃん」も石像で!
昔は製糸で栄えた土地です。まちのあちこちに当時をしのばせる立派な蔵などがありますが、それを活かしたというこの建物。
富岡市商工会議所です。江戸時代の老舗へ入っていく感じ。
内部もなかなか素敵。こんなテーブルを使って、まちづくりのワークショップなどやれば、良いアイディアが出そうです。
さてそんな新しい建物とは対照的な昔からの商店街、そこの「おきりこみ」の幟の店に入りました。
もともとはお寿司屋さんだそうです。
「おっきりこみ」なのか「おきりこみ」なのか、いつもこの「っ」についてが話題になりますが、どうも正解はないようです。
群馬県は小麦の産地、その小麦で幅広の麺をうち、季節の野菜と煮込んだのが「おきりこみ」。
打ち粉と一緒に煮込むので、汁がとろりとする。味噌味か醤油味かはその店か、家の好み。
少し秋も深まった富岡に来たのだから、熱々の「おきりこみ」をなんとしても食べたい!と駄々をこね、友達と一緒にこの日やっているお店に連れてきていただいたのでした。
座敷にドーンとあるのは、「おきりこみ」のストックです。一度煮たものを、食べるときに煮直して食べる、これを「たてっかえし」というそうです。できたてよりも味が染みている。
ここのおかみさんは、前日に粉をまとめておいて、朝、麺棒で伸ばし切る。煮干しの出しをとり、この大鍋で煮るのだそうです。
「手打ちを出しているのはうちくらいだよ」と自信ありげ。小さい頃から打って来たから、何十年かの大ベテランだそうです。
1人ずつの鉄鍋に、「たてっかえし」をいれ、熱々にして「鍋に触っちゃダメ、やけどするよ」と出してくれました。
これに一味唐辛子をかけて食べるのですから、温まりますね。
多少塩辛いものの、これが上州空っ風の地の味でしょう。
おかみさんが話します。
「いま40歳になる息子が小さい時に、おきりこみを出したらこんなもん食えるか、といったことがあって。頭にきて、車にのせて河原に置いてきた(笑)。そんなことがあったねえ」
郷土の味というのはその家々の、いろいろな思い出も染み込んでいるものなんですね。
石臼が普及した江戸時代中頃から、この料理があるそうです。米の貴重な時代、おなか一杯になる粉食は嬉しかったでしょう。
また、上州はかかあ天下の地で、女性が強くたくましく働いていた中で、短時間で作れるものでもあったようです。
街はいろいろ変わっても、こうした食文化や味の記憶は何かしら残り、受け継がれていくことを願うばかりです。
帰り道、もとは繭の倉庫だったという建物が地場産品の店になっていました。
早速、お土産に「おきりこみ」を買いました。おかみさんのように芋がらなどは入れられませんが、それらしきものを作ってみましょう。
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