山っ子クラブ
奈良県十津川村で、新しい動きが始まりました。子どもたちを、もっと自然のなかで育てようという取り組みです。
周りは全部緑の村ですが、急峻な山は杉、わずかな平地には住宅、子どもがよりつける斜面や森が無いのです。おまけに移動は車。
豊かな自然を身近な自然にするには、知恵や技術が必要なわけです。
まずは村内で子連れで行ける場を洗い出そう、そんな集まりができました。
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広い面積を誇る村ですが、そのほとんどは険しい山。平地はほとんどありません。熊野古道を歩くハイカーにはいいかもしれませんが、ここで暮らすには覚悟がいります。
山に入ればいまや珍しいナツメの実なども見つかりますが、こういう幸に出会えるのは、山を良く知っている高齢者。
若い人にはどこにどんな木があるかわからない、それにこれが食べられるなんてことも知りません。
山に生まれ山で暮らしているからといって、都会と同じようにテレビは見る、ゲームをする、そのうち川で泳ぐなんてこともしなくなる。塾通いが始まる。親も子も、スマホ生活。
何時しか山はあれども、遠い存在になったのです。
杉ばかりが植わった急斜面が川に迫っている地形、とにかく平地がありません。家を建てるのが精いっぱい。田んぼや畑も小さいし斜面になる。
だから山の中の保育園には庭がわずかしかない。サツマイモなどは、土の無い都会と同じビニール袋栽培になります。
いくつかの保育園が一緒に村の「21世紀の森」に行きました。ドングリを拾ったり、松ぼっくりを集めたり。
ここが車で1時間の距離ではなく、保育園や住まいのすぐそこにあればいいのに。楽しい森は標高の高い、くねくね道の先になります。
そう毎日は行けないのです。
水は美味しいし、空気は澄んでいるし、村に移り住んでアトピーが良くなったとか、ぜんそくが治ったなんて話を聞きます。温泉はかけ流しでどんどん湧いています。
平地がない、身近に公園がない、子どもが遊べる森がない、山に入れない、店がない、とないないばかり言っていないで、いいこと探しをしましょう。
住むと決めたのだから、住めば都なのだから。いえいえ、なんてったて、住んでいる人があったか、情が濃いのです。子どもたちには、都会よりもこの村の暮らしを、環境を与えてあげたい。
そう思う大人が、だんだん増えている時代です。
先日の土曜日、「高森のいえ」の広場に十津川材を使った遊具が運ばれました。
「高森のいえ」は高齢者が暮らす場所、皆が集えるような構造になっています。ここに行くのも車で走らなくてはならないのですが、訪れてみるとお年寄りだけでなく子どもにとってもいいところでした。
しかも、今日は滑り台もあります!
集会室の会議机に、そこら辺の草が飾られました。花は花屋で買うしかない東京などとは違う豊かさです。
トウモロコシは「十津川ナンバ」と呼ばれる、在来種。その粉を使った、マフィンがこの日のおやつです。
お母さんやお父さんが、話し合いに集まりました。もっと自然を活用した子育てができないものか?と。
いろいろな意見が出ます。「昔は椎の実を生で食べた。今もあるはず」「川で泳いだ。一度うまったけれど、また川底を掘れば遊べるはず」「泥遊びをさせたい」「広い広い村なんだ、ってことが分かる景色を見せてあげたい」「山の花をおばあちゃんと採ってきて活けるだけでも、自然とのふれあいになる」「アマゴつかみをできるところがある」「地域の人が整備した小さな広場がある」「子連れで降りられる河原がある」
話しているうちに、「ない」が「ある」に変わってきました。
地元のおばあちゃんが作った「釜炒り茶」が美味しい。マフィンにあう。「こういうお茶の作り方も知りたい」「紫蘇茶、おいしい。これも作れそう」「自分が何も知らないので、もっと山の暮らしを知って子どもにも伝えたい」「サンマ寿司も作ったみたい」「めはり寿司も作りたい」
要は、山の暮らしの豊かさを探し、身につけ、子どもにもさせたい、ということで盛り上がります。
ここで緊急動議!
なんとなく私を始め事務局サイドはこの動きを「森っ子プロジェクト」なんて、呼んでいたのですが、、、、。
「この村に森はないんです。山なんです。だから“山っ子”にしましょう」集まっていたみんなが「そうだそうだ、森じゃなくて山だ」ということになり、私も、そうだそうだね、と「森」を撤回したのです。
「山っ子プロジェクト」の「山っ子クラブ」です。これから何をしましょうか?
まずはみんなの山っ子情報を集めたマップを作ろう。ワイワイ何かを食べよう。皆でキャンプしよう。河原で遊ぼう。やりたいことが沸き上がってきました。
1年後くらいには、「ザクロ採って来たよ~」なんて山っ子たちが現れ、都会から家族が山っ子になりに村を訪ね、“山っ子ブランド”の木製品などを買って帰る。そんなふうに、なるかな?したいな~!
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