谷瀬にみんながやってきた
2012年、十津川村谷瀬は、人口減少で集落を維持できない状況でした。でもここの人達は、寄合でアイディアを出し、それを確実に実行。奈良女子大の学生さんも加わり、酒米を育て「純米酒谷瀬」に。空き家を休憩所に。動き出すと移住者や子供も増えました。そして今回、スローライフ学会員が各地から来て、変化した谷瀬を視察。その様子を眺め、ついこちらはホロリとしました。
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実際にきちんと私が谷瀬に通い始めたのは、2013年になってからです。寄合を繰り返し、いろいろなことを決めて進めてきました。大きな目標は、吊り橋から集落の中に他所の人を入れること。そして「谷瀬がいいなあ」と思ってもらい、また来てもらう、そしていつか住んでもらおうということでした。
あわせて、お金が稼げるように何か考えよう「酒でも作るか?」なんて話から本当に休耕田に酒米を作り、地域おこしに熱心な酒造会社の協力を得て、「純米酒谷瀬」は誕生していきます。集落の伝統珍味「ゆうべし」や、高菜漬けの加工品も、ずっと公会堂などで作業をしてきましたが、本格的な加工所「つくりば」も出来ていきます。空き家を泊まりがけで農村体験できる施設にしたり、そして休憩所「こやすば」には、今、男衆が囲炉裏を整備し始めています。「ゆっくり散歩道」を整備し、吊り橋を眺める展望台も造り、ベンチも水飲み場も水車も造ってしまうここの人達は、まさに「“むら”に生きる」をきちんと実行している人達でしょう。
実は私はここに通っても、寄合の進行をするだけで、何かを具体的にはしていません。田植えも稲刈りも、空き家の掃除や草刈りも、手を汚したり汗をかくのはもっぱら集落の方々と、奈良女子大の学生さん達。私は、「わああ、すごいね」「それはいいね」「よくやったね」とほめちぎったり、「いつまでに誰がやる?」「全然進まなかったの?」とちょっと嫌味を言ったり。そんならくちんな役に徹してきました。
昔から、まちおこしのお手伝い、アドバイスにあちこちにうかがいますが手を出さない、らくちんに口だけの立場を貫くのが私のやり方です。コンサルタントはプレイヤーになってはいけないと、いつも思っています。センターをとって、自分が手を下すのは楽しいし、やってる感はありますが、そこの土地のためにはならない。「野口さんは、つべこべ言うだけで、何もやらない」と言われる立ち位置でずっと来ました。
だから、ただただ家から8時間半かけて、バスに揺られて谷瀬へ通ってきただけなのです。それの繰り返しでした。谷瀬が変化していくことが、その報告を受けることがうれしくて、多少傍観者的に「すごいね、よくやったね」と言い続けてきたのでした。それだけの役の私を、村はよくぞ声をかけ呼び続けてくださったと思います。今年度はほんの数回しかうかがいませんが、それでもZoomという手段もあり、不便ながら話し合いにも参加してきました。
そんな谷瀬に、11月20日(土)NPOスローライフ・ジャパン、スローライフ学会がやってきたのです。バスに乗った20人が、集落を見学してくれます。本当は、「ゆっくり散歩道」を歩いてほしかった、集落の人と話をしてほしかったのですが、時間がない。もともとは谷瀬には帰りに寄るはずだった予定を、無理やり変更し、行きに寄ってもらっただけでもよしとしなくては・・・。「吊り橋茶屋」で皆さんが土産を買い、谷瀬の新作「酒粕入りアイス」を買って、食べてくださって、なんとなくゆっくり楽しい思いをしてくださったことが、何よりうれしかったです。
数年前まで、この集落にこのメンバーがやってきてくれるなんて、想像もしていませんでした。このたび「スローライフ・フォーラムin十津川」が行えて、こんな記念写真を撮ることができました。シャッターを押していて、気持ちがウルウルしてしまった私でした。