6つの提言

スローライフ運動

今回、奈良県十津川村で「スローライフ・フォーラムin十津川」を開催してきましたが、そこでは、6つの提言が発表されました。これはフォーラムに先立って、村民の方々と、我々村外のスローライフ学会会員が分科会を開き、話し合った内容を凝縮したものです。

フォーラムでは私とともにこの分科会のアドバイザーをされた、奈良女子大学の室﨑千重先生と村民の平瀬肇万さんが「6つの提言」を読み上げました。会場で配られた、当日プログラムにある内容をそのままこちらでご紹介します。

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<提言6つ> 守りたいこと、これからのこと。

1、山での子育てを楽しもう
・子どもたちが大声で挨拶する。近所が「子ども、みといたるで~」と声をかけてくれる。そんな環境がいい。
・5歳の子が地下足袋で1000m級の山に登ったりできる。戻ってくると目が輝いている。親の考え方次第で山で遊べる。
・小さな集落に子どもたちがいると賑やか、イモ堀りも稲刈りも移動保育所みたい。「いもたばり」の行事もやっている。
2、人の繋がりを大事にしよう
・人口が少ないのに、都会より人と交流できる。都会では何でも一人でやらなくてはならないが、ここでは一緒に歩いていく。
・「あげる」文化がある。あげるために野菜を作る。もらえば自分もあげたくなる。急峻な土地で厳しいから、人がやさしい。
・自主自立の村。決めたら自分たちで実行する。なかったら、みんなで作ればいい。「ゆい」の文化を次世代にも伝えたい。
3、伝統と自然を大切に
・在来種の作物「ムコダマシ」という餅粟や「十津川高菜」を作っている。各地で少しずつ違う伝統の「ゆうべし」も美味。
・盆踊りの曲が沢山あり、字ごとに違う踊り。8割の人が踊れる。村民が張り切る手作り駅伝が66回も続いている。
・日本一広い村だから、日本一の自然がある。夜、空を見ると、全部星。蛍も、珍しい花も。そして世界遺産が二つも。
4、広いからいい、不便だからいい
・一日では回れない、だから立ち止まる観光を。滞在して、ご飯を炊いたり川で遊んだり、誰かに一日お任せする、そんな体験も。
・アクセスが悪い分、落ち着いてワーケーションをするのにいい村。仕事ができる環境がある。SNSなどをもっと活用し発信もしよう。
・ここの暮らしそのものが素敵。サッと回れないから、何かを見るのではなく、ゆっくり暮らしの魅力をおすそ分けしてもらえる。
5、心と身体の健康をうたおう
・健康や身体づくりをテーマに。コロナ禍で屋外の遊びに注目が。「源泉かけ流し」の上質の温泉も村民は当たり前もっと発信を。
・自分の辛い気持ちを発散させるところが身近にある。温泉や山や。来訪者も疲れた心を癒し、和んだと言って帰る。
・哲学的に教えてもらえる。自分修行の旅ができる。裸の自分と付き合ってもらえる村。
6、力を借り、維持し、稼ごう
・都市部の人が汗を流して手伝ってくれ、それで癒されたと喜んで帰る。外の力で村を維持する仕組みがあれば。
・お土産や地域の新しい産物を作ろう。そして、関わった人たちがきちんと報酬を得られるようにしていこう。
・自然は無料で手に入ると思っている都会の人に、維持する苦労をきちんと伝える。この村にビジネスチャンスはいろいろある。

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私は特に6番が大事だと思います。とかくこうしたフォーラムなどでは、きれいごとの話が展開されます。特に外部から来た人は(私たち)村をほめあげ、自然が豊か、懐かしい暮らし、星が綺麗、人情がいい、などと語りますが、それではズバリ儲かりません。「むら」で生きるには、お金が要るのです。

昔の暮らしが魅力的でも、女性たちはシステムキッチンを使いたいし、買い物は週一回の移動販売車では満足しません。子どもをいい学校にやりたい、そのためには村外にマンションを借りて子どもと母はそちらに住むなんて現実もあります。コロナ禍でも、自分の家の前をどやどやとハイカーが通り、洗濯物を干していたおばあちゃんと記念写真を撮りたがる。もう来ないでほしい!という悲鳴が上がって当然でしょう。

分科会の参加者が「都会の人は自然が無料と思っている、維持するのにお金がかかり苦労もしていることが分からない。自然がいいと言いながら、汚れることや虫がいることを嫌がる」と発言がありました。全くその通りです。身勝手で無教養な都会人ばかりですもの。

フォーラム会場では「都会の人は現実を知らないよ」と思いながら座っていた村民の方が、少なからずいたはずです。ごめんなさいね。

一方、分科会で「ビジネスチャンスはいっぱいある」という発言もありました。都会の人が「懐かしい暮らしが素敵」というならその体験をしてもらい、それをビジネスにしましょう。木の枝で箸を作る、木っ端でスプーンを作る、そんな村民の技術を伝授してお金をもらいましょう。足腰の弱い都会人を、地下足袋で少し山を案内しましょう。雑穀「ムコダマシ」を蒔いて、収穫し、餅に混ぜるまで、都会から年数回来る関係を作りましょう。藁を使ってサツマイモを繋ぎ吊るして干し芋を作る体験もいいです。すべてがお金になるはずです。温泉が豊富なら、そこでの温泉療法プログラムも出来ます。今回、ステージを飾った、山の幸の飾りも枝葉をまず取りに行き、山のコサージュを作って帰ることがしたいものです。そうして村人と一定の時間を付き合っている間に、村人の厚い人情も伝わるはずで、都会人の心も癒えていきます。

そういう関係ができると、今度は休耕田を一緒に耕したり、一緒に田植えをしたり、お客さんではなく「むら」を維持する側にも立ち、労力も提供するでしょう。少し時間はかかりますが。

そんなプランを村の方々と、スローライフ学会で作れないかと思います。学会メンバーが十津川村・奥大和の応援団に、親戚になる仕組みを考えたいものです。そこまで踏み出さないと、フォーラムをやって意味がない!村内外が繋がり、稼ぐアイディアを共に出し、共に実践する。「むら」は素敵、なんて言ったからには、一緒に維持していく側に回りたいと私は思います。