ふるうつ雛

ちょっとしたこと

最近は、各地で地域おこしの催しとしてお雛さまが飾られます。商店街や廃校校舎や神社の長い階段などに家庭で眠っていたお雛様が。

この地域雛、数やスケールにはもう慣れてしまいました。それなら、地元の特色を出そうと作られたのが「ふるうつ雛」です。

顔はハッサクや柿、キウイ。コスチュウムもユニークな野良仕事風。産物の果物を感じてほしいという、紀の川市民の試みです。

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私が通う和歌山県紀の川市、借りた家は粉河駅前にあります。ここ粉河という町は、粉河寺という名刹があり、もとは商店街も栄えていたとのことですが、いずこもおなじいまはひっそり。

それを昨年から、地元の有志がメインストリートをこの時期「雛通り」にしようとお店のショウウインドウにお雛様を飾っています。さまざまな催しも。

私の宿舎はみんなが使う拠点でもあります。せっかく粉河にあり、道路に窓も面しているのだから、地元の地域おこしの動きに参加しない手はありません。

「私たち、フルーツ・ツーリズム研究会もお雛様を飾ります。仲間に入れてください」と申し入れたのが1月中旬のことでした。


フルーツでまちおこしをしている団体なのだから、お雛様にもその思いを込めよう。

というわけでフルーツがテーマのお雛様を作ろうと動きだしたのです。

まあ、呼びかけて、作りたいという人が居なければ、私が折り紙で作り、顔だけフルーツにしようかな・・位に思っていました。

それが、2月始めのワークショップの日には、雛段が運ばれました。夜おなかのすく時間に、女性6人が組み立てます。

組み立てながら、既に、ああしよう、こうしよう、と「フルーツ雛」の構想が湧きだしました。


子どもが見て笑えるもの、生のフルーツを使おう、フルーツのまち紀の川市について何か学べる要素も。

コンセプトが決まると、「おすましじゃなくて、おかしな顔にしよう」「何も着物で無くともいい」「農業の町なのだから、果物を作る農作業の道具を持たせよう」なんて、ビックリ案が出てきました。


いろんな色のフリース、100円均一で買った小物もどんどん集まってきます。

そのたびに、Facebookのメッセージで、「フルーツ雛」参加者のグループにこんなもの買ったよと、買い物写真があがります。今はこうして買い物情報も共有できるんですね。


で、商店街に普通のお雛様が並んだ2月22日。

どこのお店もショウウインドウをのぞけば、こうしてお雛様がしっとり美しく、なのですが・・・。


きゃ~~~!こんな面白いお雛様が手作りで完成となったのでした。名付けて「ふるうつ雛」。

こんなお雛様は世界で初めてでしょう!

女雛のお顔は柿。真空保存の生が使われています。男雛のお顔は今盛りのハッサクの生。

三人官女のお顔は作り物の桃、五人囃子、いや、六人囃子のお顔は、生のキウイと手作り粘土細工のイチジクです。


しかもよ~く見ると芸が細かい。高枝切狭を持っていたり、鎌や熊手、塵取りを持っていたり。今、そこの畑から戻ったような、素朴感です。

この生の果物たちは、まさか自分がお雛様の顔になるなんて、夢にも思わなかったでしょう。今、採れるけれど飾れないイチゴは作り物で、回りの飾りになっています。

紀の川市の主な果物、をすべて網羅して、窓にはその収穫高の順位などが学習材料として貼りだされています。

ね、素敵なコスチュウムでしょう?

紅もさし、まつ毛まで整えておりますのよ。


すぐ横の和歌山線の粉河駅ホームからもよく見えます。夜は、動くものに反応してライトがつくので、なおさら目立つでしょう。


この「ふるうつ雛」かなり人気で、ジッと立ち止まって見入っている方が多いものです。そう、ぱっと見ただけじゃあ、理解の域を超えていますから!

「ふるうつ雛」は毎日眺められて何を思うのでしょう。「フルーツのまち紀の川市が、こんなふうにアイディアで楽しくなっていくといいなあ・・」「この時期のこの「ふるうつ雛」が、その市民の動きの象徴で~~す!」なんて、誇らしく座しておいでのようにも見えます。

3月12日には「フルーツ甘酒」の振る舞いがあります。展示は3月31日までです。お見逃し無きように・・。