つぎのワークショップ

お仕事で

和歌山県広川町津木(つぎ)という地区に、3回ほど地域おこしの会合のために通いました。

「ワークショップなんてしたことないよ」という土地、皆が意見を出すのも下手でした。それが、最後は"つぎのくつろぎ"というテーマを決め、短期プロジェクトの発表までに。

何より女性たちが加工品の試作まで、ササッとやり出した。次はどんな展開になるか?次の津木が楽しみです。
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津木地区は、広川町の海辺から少し離れた山里です。最初のワークショップでは、まずは「スローライフ」の話をしました。

これまでは東京中心の速く・強く・大きくの時代。これからは、地方を大事に、ゆっくり、小さくてもしなやかに、というような時代。都会の人は今、田舎に憧れています。津木のような、山里が主人公になる時代です。

とはいえ、頭で田舎にあこがれても、すぐに田舎に人が移住するわけでもありません。日本全国のどこにでもある田舎同士が、自分の個性を引き出して、魅力合戦。人口の取り合いみたいになりつつあります。

なので、小さなところでもどんな顔を持った土地なのか、更にそれを地元の人がどれだけ楽しんで愛しているかが大事になって来ます。

というような話をしました。

フェストライフの物差しで計れば何もないように見える土地でも、スローライフの物差しで計れば、ここにはあるものだらけ、です。

鶯は鳴く、清らかなせせらぎが流れる、みんなで造ったツリーハウスで遊べる、お花畑が美しい、蛍は乱舞する、珍しい黒竹がある、珍しい露茜という紅い梅を作っている、「鯖めし」というソウルフードがある、山椒や薬草も、などなど。

というわけで、それらを活かして何をしよう?と考えてもらいました。最初は何もアイディアなんてない、と言っていた人たちからだんだん言葉が出てきます。

話し合いをいきなりすると、声の大きい人や、いつも牛耳っている人の天下で、意見を出さないで帰る人も出てきます。でも、紙に書くなら女性も、新住民もできる。

数人ごとのグループに分かれ、一人最低4つずつ書きましょう、と。全員が書き終わるまで待ちます。その後、そのカードを混ぜて、自分のお気に入りを選びます。

無記名ですから、自分の案を選んでもよし。それぞれ選んだ理由を話します。それを全員がやりますと、さっきまで頭の中がさっきまでの日常でいっぱいだったのが、だんだんむらの将来や、自分の夢にピントが合ってきます。

カードの内容に意見を言うのはけっこう無責任でいいので、そのうち笑も起きます。グループには同じ立場の人が固まらないこと、男女が混じることは鉄則ですね。

美味しいお菓子や漬物、飲み物も欠かせません。で、どんな話し合いがあったか、どの案の支持が多かったかなどの発表を各班がします。

3回のうちには、進行や時間係、発表者など、何かしらの役が回ってきます。私は苦手などと言っていられない、なんだかんだ楽しいからやってしまう、というムードが出てきます。

アイディアを、すぐやること、少し後にやることに分けます。そして、全体のテーマコピーも決めていきます。本当は、コンセプトを出してから、それを実現するアイディアを出すのでしょうが、最初から小難しいコンセプト?すべき論?なんて始まったら、途中で帰りたくなりますものね。

そして、最後は3つのチームが考えた案を一つに絞っていき、模造紙にカラフルに描く。

ここで「つぎのくつろぎ」というテーマの言葉が出てきました。説明係りになった女性が「今までのくつろぎに飽きたら、次のくつろぎ。津木のくつろぎで~す」と張り切ります。

で、すぐやることの中からも、更に絞り込んで、何時までに、誰が、どのようにやるのか。お金はどうするのかも考え、初めの一歩を発表します。

「まずは5月17日にお花畑のイベントに合わせて、山菜の加工品を売り出します」

発表の後、他のチームから鋭い質問を出すのもルール。「誰が何時、何の山菜を採りにいって、加工はどこまでやるの?」「価格の決定は、何時、誰がどうやるの?」

そんなことをお互いに詰めながら、決めていきます。マンパワーの少ない土地です。たかだか山菜を売るだけでも大変なことなのです。

行政などには頼らずに、できることから。無理をしないで、でも少しだけ頑張って。その具体を皆で決めていく。みんなが関わって決めた、注出液の一滴のような初めの一歩ですから、愛しい小さな一歩なのです。

で、拍手を持ってこのプロジェクトが決定しました。

とかく、大きな話と小さな話が混在したまま話され、結局会議のための会議の時間になりがちです。何も発言せずに誰かの演説を聞いただけの時間なら、なおさら地域おこしは嫌な時間になっていきます。

皆で決めて、前にでる。皆で決めて、前に出る。を繰り返し、方向を間違えなければ必ず大きな変化に繋がります。大丈夫!

津木で、次にワークショップをした時には、どんなことが起きているでしょう。小さいけれどたくさんの経験をしたその素材を持ち寄って、今度は更に深い内容になりますね。

女性有志が加工品の試作として持ち寄った、お菓子を食べながらそう思いました。