集落に学ぶ

お仕事で

今年度の奈良県十津川村谷瀬寄合が2回行われました。

小さな集落の小さな会合でいつも思うのは、皆が平らかな関係にある清々しさです。

高齢者も、若者も、女性も、よそ者も皆が意見を言い、皆が実行する姿勢で取り組む。

しかも「ねばならぬ」ではなく「楽しんで」。なので、物事が動いていく。

皆がお互いを必要としている関係、これが社会の原点なのでしょう。
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山の稜線の手前に、集落の人たちで作った水車が見えます。「ゆっくり散歩道」の名で伸びる道、集落の人の生活道ですが、外来者には吊り橋から展望台まで続く散歩道。歩くだけで緑と鳥の声に癒されます。


水車の近くに行くと、伸び放題だったカヤの原が刈られています。後から聞けば「熱中症ギリギリで刈った」のだそうです。
おかげで、散歩しながらの見晴らしが開けました。


会員制で酒米を育て、純米酒づくりをしています。その稲もフサフサ茂りいい調子。春にはいいお酒になるでしょう


展望台へ行く階段に「マムシ注意」の看板。「観光客の方からマムシがいたって聞いて早速4枚つけた」とのことです。


手づくり道案内案山子も増えています。これは有志の女性群の仕事。「だんだん職人みたいな気分で、面白くって」なんだそうです。


ちょうど百日草が盛りでした。花に詳しい方が音頭をとって、奈良女子大生も一緒に植えている、散歩道沿いの花たちです。


これが谷瀬名物?寄合風景。ほぼ一カ月に1回寄り合います。先回、みんながやりたいことを書き出しました。そしてこの回では、その中で特にやりたいことを選んでいきます。


やりたいことのなかでも、「即やること」「年度内にやること」に分けて整理していきます。板書が上手な「たろう」さんは、もうすっかり住人になり切った数年前の移住者さんです。


ほんの40人足らずの少人数で、この大きな山里の空間を維持管理し整備していくのですから大変です。実際に動いている人はそのうち10数人。

それぞれが得意なことを受け取って、いつまでにどうやるかを決めていきます。


水の配管工事から、空き家の整備、その整備した空き家に住みついたコウモリの退治、なんでもやる人たちです。「コウモリの糞、売ったりできないかね~」なんて冗談も。


今年度やることが出そろいました。一番やりたい意見が多かったのが、「文化的な催しです」。

これまでとにかく他所の人に来てもらおうとばかり考えてきましたが、もう少し自分たちが豊かな時間を過ごし、知的な谷瀬にしていきたい。

古民家を改築した休憩所「こやすば」を、来訪者だけでなくまずは自分たちのくつろぎの場にしようというわけです。

「お月見近辺で、みんなでサロンを開こう」「純米酒・谷瀬を酌み交わそう」「昔のLPレコードをゆっくり聴こう」「ギターを弾こう」「秋の花を活けよう」こんなワクワクが育っていきます。


既に、真空管を使った昔のステレオセットが整備されていました。音にこだわるようです。

こうした小さな試みが、やがて来訪者にも伝わります。そして淀んでいない、流れているせせらぎは、必ずそこに新しい水が流れてきます。

“谷瀬の人口を増やそう。集落を維持しよう”みんなの目標はひとつですから、サクサクっと物事が進む。

体力のない人は昔の知恵を出す、赤ちゃんは場を和ます、納屋に古い民具がある人は展示物に提供する、花の水やりを集中してやるひとも。

こういうつながり方がいくつも連結した日本なら、どんなに素晴らしいか。

となりの人と会話もしない東京新宿の小さな部屋で、そう思う私でした。