遠山郷

お仕事で

1000メートルを越す山地、急斜面にはりつく集落。長野県の最南端「遠山郷下栗の里(とおやまごうしもぐり)」のポスターが我家にあります。

いつも眺めて、いつか行きたいと思っていました。そしてついに先日、ポスターと同じ景色に立ちました。温泉に浸かり、“遠山ジンギス”を食べ、地元の人とも語り合いました。いま、さらに熱い思いでポスターを眺めています。

これが我家に貼ってあるポスター、お風呂の横なのでいつも湯上りにタオルを使いながら眺めます。「どんな斜面なのだろう」「買い物はどうするんだろう」「どんな人がいるんだろう」恋焦がれていた遠山郷にようやく行ったのは、先週のことです。

既に薄暗くなった夕方でした。ポスターにある地より少し下の和田というところ、「道の駅遠山郷」にある「かぐらの湯」に先ずは入りました。お風呂もお湯も意外にいい!食塩泉で身体の芯が温まります。

その身体を運んだのが、お隣の「元家」というお店。ここで、遠山郷観光協会の方と“一杯”になりました。先ずは鹿肉です。味噌に漬けてあって柔らかく、丼にしたらよさそうな味。

続いてマトン、タレに漬け込むタイプのジンギスカン。ここでは何かというとジンギスカンを食べるそうで、“ジンギス”とあっさり呼ばれています。総じて“山肉”という呼び方、イノシシ、ウサギ、なども。けして“ジビエ”などとしゃれないところが遠山らしいです。

お店にカクテルなどもあります。「遠山郷なんて名前のはないですか?」と迫ったところ、しばらくしたら、おおお!出てきました。

「カクテル遠山郷」、新緑の緑色、抹茶のトッピングつき。最初に飲んだ人になって、私は上機嫌。とっても真面目で、人なつっこい遠山郷のひとたち、こういう人と飲むお酒はほんとにおいしいです。

「かぐらの湯」横の「かぐら山荘」に泊まりました。名古屋からここに戻ったという女将さんは「遠山郷は天国です」ときっぱり言います。名物のジャガイモの田楽をほおばると、確かに天国の味でした。

その昔、遠山氏が納めていた頃の史実から「遠山郷土館和田城」という名の、城風の建物に行きました。この地の大事なお祭り「霜月祭」について詳しい展示があります。

全国から神様がお湯に入りにやってくるというお祭り、神楽は、遠山郷の中でも各地でそれぞれ形を変えて伝わっています。お面が実におもしろい、「そうか、ここのお湯に入ると神様気分になれるんだ」。

この郷土館横、龍淵寺には、ミネラル成分の多い「観音霊水」が湧いていて、その水で淹れたコーヒーを「カフェ和田城」で飲めます。ここの喫茶は郷土館にもともとあるテーブル・イスを利用してカフェにしてあって工夫が一杯。

ここで「姫」と呼ばれる素敵な女性が、「都会じゃいろいろなことを考えなくちゃいけないでしょ。ここでは毎日がシンプルよ」とさわやかに笑います。

近くでおばちゃんたちが作る「ふじ姫饅頭」が、ここのコーヒーとあいました。完全手作りの蕎麦饅頭、売り切れごめんの毎日だそうです。

さあ、山を登りましょう。あの景色のところまで・・。途中寄ったのは、「旧木沢小学校」。古いままの学校なのですが、ここで経済アナリストの方が塾を開いていたり、選りすぐりの上質の本がコレクションされていたり。ただ古いだけじゃないことに、驚きました。

下栗の里までは、意外に車で行けてしまいます。確かに急斜面にうねうねと道があり、ここの暮らしは大変かと察しますが、あまりにも有名になったため、観光バスも来るようになったとか。

訪れる人達のために、集落の方々がビューポイントまで森の中に小道を手作り整備し、杖まで用意してくれてありました。ありがとう、ごめんなさい。

ポスターと同じ風景を見たい一心で来た私ですが、「もう、これ以上観光客が来なくても」とい気持ちがよぎります。

マムシを捕まえて焼酎に漬け、軒先においている暮らし。そんな素朴な里だからこそ訪ねたくなるわけで、この道が渋滞?!などしたら、来た人も住む人もガッカリなわけです。

とはいえ、この遠山郷で生業をたて、暮らしを続けていくためには、静かな交流と知的な観光は大切です。

こびることなく、なくすことなく、胸を張ってここのよさをおすそ分けしてあげる、そんな仕組みを育てましょう。

観光協会がんばれ、今が踏ん張りどきかもしれません。遠山郷よ神々しくあれ!

※途中私のカメラのバッテリーが切れ、上記文中3枚の写真は飯田市観光協会の方の撮影のものをお借りしました。