発酵と浄化

お仕事で

佐賀県鹿島市に行ってきました。肥前鹿島干潟がラムサール条約に登録されたとのことですが、昔の“おかず獲り”の干潟ほどきれいではないそうです。

日本酒造りが盛ん、酒蔵を巡る催しもあり、発酵文化のまちです。

干潟の生物が水をもっと浄化すれば海が綺麗になる、酒粕などを人が食べば身体が元気になる。発酵と浄化について考えるために、また来たくなりました。

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鹿島市は佐賀県の西南部にあり、東は有明海、西は山。福岡からも長崎からも電車で1時間くらい、3万人強のまちです。

そう、あの泥だらけで干潟でスポーツをする「ガタリンピック」をやっているところ、といえばおわかりでしょう。

その干潟が渡り鳥の重要な中継地・越冬地となっているということで、今年「ラムサール条約湿地」に登録されました。

肥前鹿島駅に降り立つと、誇らしげな看板が下がります。勉強不足の身には、ラムサール?なのですが、ともかく世界的に大事な干潟がある、ということは分かります。


もう一つ看板を発見!「発酵文化の香る街」。酒蔵がいくつもあって、それを巡る「酒蔵ツーリズム」というのがあるとは知っていましたが、さらに、発酵文化と名乗るとは、いいですね~。

その自慢の干潟に連れてっていただくと、学校の先生方?が専門家から干潟についての説明を受けているところでした。ずっと遠くまで干上がっていますが、これが満ち潮になると満々と足元まで水がくるというのですから、不思議なものです。


遠くの少し水のあるところに、鳥がたくさん休んでいます。望遠鏡でのぞかせていただきました。世界で三千羽しかいないという希少なクロツラヘラサギがいます。というか、そう教えていただきました。

なるほど大きなくちばしの先がおしゃもじのような形、泥の中をさかんにつついて餌を探しています。はるか遠くから、この干潟を目指してやってきた鳥たちは、ここでゆっくりしながら干潟の幸でおなかを満たすのでしょう。

わあ~~~~、泥の上でうごめいているのは、あの有名なムツゴロウです。可愛い、可愛い。


干潟をゆっくり室内から観察できる建物もあり、有明海の生物をコレクションした可愛い水族館も。隣は道の駅「千菜市」。私にとっては、この有明海の幸を食べる、買い物する方が興味が湧きます。

しかし、昔はこの干潟で山ほどのアゲマキガイが獲れ、子どもがおこずかい稼ぎにもなってたそうですが、今やすっくり姿を消したそうです。獲り過ぎというよりも、海に流れ込んだ農薬や生活雑排水のせい、と土地の人が説明してくれました。

効率を求める私たちの暮らしが、干潟をを殺してしまっていたのですね。ほどほどの健全な汚れなら、干潟のプランクトンが食べてくれる。そのプランクトンを貝が食べて、きれいな水を吐き出す。そうやって浄化が上手くされていたのでしょうが・・。こうなると鳥だって、いつまで来てくれるか分かりません。

人が入り、踏んだり掘ったり、干潟を結果的にかき混ぜるドロリンピックをやる辺りの干潟の方が、干潟の泥の状態が良いそうです。空気が入るから、微生物が生きていけるのでしょう。

それならば、ここに通って、干潟を掘り返すことを観光メニューとしてやったらどうでしょう?さらに、泥はお肌をスベスベにするとか。女子には、干潟と自分をきれいにするのと、一石二鳥です。


道の駅には、地元のおやつ。「だごやき」を売っていました。小麦粉を焼いて黒砂糖を包んだもの。アツアツが美味しいです。こんな干潟の地元スイーツ作りを体験したいなあ。

有明海の幸も、その料理の仕方を地元のおばちゃんから習いたい。小さなタコを柔らかに煮るには?なんて知りたい。名産の海苔の活用法も知りたい。干潟料理や干潟スイーツを習い、会話することで、都会の人たちはもっと干潟を愛するようになるでしょう。

どこにでもあるカキ焼きで観光客からお金をとるよりも、ずっと今日的だと思うのですが。

有明海に注ぐ浜川の河口は昔、宿場町として栄えたところ。肥前浜宿の名があります。重要伝統的建造物群保存地区です。ここには6軒の造り酒屋があり、個性あるお酒を造っています。中でも世界チャンピオンに輝いた「鍋島」はあまりに有名なお酒。

この酒蔵を巡りながらお酒を試飲しながら、街の風情を楽しむイベントが「酒蔵ツーリズム」。3月末に開催されます。この細い昔ながらの道が、人でぎっしりになるそうです。

酒蔵があり、銘酒が生まれるということは、水がいい。鹿島の人たちは通常豊かな湧水を飲んでいる、家に井戸がある人も多いとか。道沿いにお水を飲める用意もありました。


「寅雄さんのお水」札がかかるい水場。美味しかった~~。ガイドさんに案内されて、短時間でもまちの事がよく分かりました。イベント以外のときにゆっくり来るのもおすすめですね。

お酒だけでなく、その上質の酒粕を使ってのかす漬け屋さんもありました。試食をいただいて、大根を買いました。すると、ここの女将さんが、サラサラ~と説明してくださいます。

「大根以外の酒粕はもう一回使えますから。塩サバを漬け込んだり、さっと塩もみしたキュウリを漬けたり、簡単にできますから使ってくださいね。おいしいですよ」

熱心に教えてくださる女将さんの後ろには、樽に立派なユリが活けこんであります。花をほめるとまた女将さんが・・・。

「鹿島は花の産地ですから、地元ではとても安く手に入るんですよ。好き勝手に活けているんです」

地元の安い花を、たっぷり、酒造りの中で使う器などに、たっぷりと活ける。しかも歴史的な建造物の環境のなかで。

女将さんと一緒にここで、伸び伸びと花を活けたくなりました。酒蔵通りはお酒を飲み歩くだけでない、様々な装置になりそうです。

ちょっと立ち寄った、少額のお客をお嫁さんと一緒に見送ってくださる。こういう酒蔵の女性たちから、酒粕料理を教わりたい。発酵文化の料理をここで味わいたいと思いました。

酒粕は美容パックに使ってもいいとか。味噌汁に入れるほかカレーなどに入れてもいいとか。酒粕を中心にした、麹、発酵と拡げていけば、都市部からここに定期的に通うお教室が成り立ちます。

そこで、鹿島市に女性を中心にした鹿島流のスローツーリズムをご提案しました。テーマは発酵と浄化です。ここに何度も通いながら、発酵文化を身につけて、自分の身体を元気に綺麗にすると同時に、干潟を愛し、干潟を健全に保つために汗を流すような仕組み。

都市部から、渡り鳥が休みに来るように、ここに通う人がいるはずです。みんなで仕組みを考えてみましょう。


ムツゴロウの目は美しい青い色、しかもハート形であることを知りました。ならば、このブルーハートをシンボルマークに、いろいろ考えられます。環境にやさしい暮らしをしているかどうか、このブルーハートが見守ってくれる、そんなストーリーもできますね。

酒蔵通りにあった、新住民の方が開くロウソク屋さん、ここでブルーハートのろうそく作りをして、お土産にしたいものです。ブルーハートのアクセサリーもほしい。

などなど、妄想は止まらなくなるのですが・・・。
よそ者が乗り込んで勝手にこのようにいうのは簡単です。

でも、あの干潟を知った以上、あの酒粕文化に触れた以上、あの花を見せていただいた以上、また来たくなった鹿島でした。