トイレの神様

お仕事で

「トイレの神様」は昨年ヒットした曲の名ですが、山梨県富士吉田でそれを見つけました。ここでは新築・増築の際、櫛・かんざし・リボン・白粉・紅などを土に埋めトイレの女神様にお供えします。

お供え物はセットになっていて、セットそのものもいつしかトイレの神様と呼ぶようになったとか。「そう売れる物じゃないけど、どこかで売っていなくちゃね」と、小さな雑貨屋さんが今も作っています。

2月22日号「スローライフ瓦版」の富山県高岡市「たかおか屋から」のコーナーにも、トイレの神様が載っていました。
http://www.takaokaya.jp/news/2011/02/17-183850.phpこちらはまた迫力あるお姿でした。

地域によって、トイレの神様の姿や信仰はさまざまなようです。富士吉田のようなものは逆に珍しいのかも・・・。

最初に知ったのは2年前のこと。商店街活性化の仕事で「一店逸品」運動をやろうと研究会に通っている時、「松島屋」さん(化粧品・雑貨屋さん)の奥さんが「うちは仕入れて売る商売なので、逸品などはなかなか考えられないけれど‘トイレの神様’がありますよ」ということからでした。

何?それ?とびっくりしました。が説明をうかがって、「それは逸品!それこそ逸品!」と私は絶賛してしまいました。

松島屋さんでは大正時代から売っているそうで、かつては建築の際に欠かせないものだったとか。トイレが造られる辺りの基礎、地中に埋めるのだそうです。昔は水洗ではありませんから、まさに穴に埋めたわけです。

最近になってハウジングメーカーによる住宅が増えると、神様の出番は少なくなったのですが、今でも、個人業者の方はこの風習を守り、浄化槽近くに埋めたりするそうです。

松島屋さんの本店は荒物屋さん、建築関係の方の出入りも多いのですが、神様だけは奥さん担当の女性雑貨のお店の方で扱うようになりました。

確かに毎日売れるものではありません。しかし、彼女がおっしゃるように「どこかで売っていなくちゃ」というものが、地方の商店街、個人商店にはあるものです。

消えものなので、そうそう頑強なものでは困る。でも一応形はなくては。ここでは、奥さんと義理ののお姉さんとおばあちゃんと、3人の女性でこの神様を作っているのだとか。

白粉は小さなビニールに入り、紅は本当の口紅が盃にちょこっと。折り紙で折ったお姫様も。「リボンはおばあちゃんの担当。私たちじゃこうしてふっくら結べるないの」と奥さん。3人がおしゃべりしながら神様を作っている姿が目に浮かびます。

この手作り「トイレの神様」は750円。歌のヒットで、探し当てて買いに来る人もあるとか。

先日、この松島屋の奥さんから手紙が届きました。「手紙など書くのは何年ぶりでしょうか。・・・「トイレの神様」を扱っていること、新聞にこんなに大きくとりあげていただきました。嬉しすぎて、早く野口先生にお礼状を出さなければと・・・」

奥さんからの手紙には、地元新聞の「ヒット曲と同名、儀式セット90年前から販売」の大きな記事が同封されていました。

「これを機会に冨士吉田に沢山の方が訪れていただけたらと、トイレの神様の商品と一緒に富士吉田のカタログを手渡しながらがんばっている毎日です」

無欲の勝利といいましょうか、トイレの神様がきっと応援してくれたのでしょう。松島屋さん、良かったね。

↓写真左が奥さんの荒井一代さん、右は夫のお姉さん。