40年ぶり合気道同級生
今年のお正月、高校時代の友達に「私、合気道をやっているの、一緒にやらない?」と誘ったところ、彼女は4月から奮起、道場に熱心に通っています。
おばさん2人、40数年ぶりに同級生になりました。老後や病気の話をするより、自分を鍛えよう!とはいうものの、覚えないし汗だくで大変です。
でも、稽古を終えて、肩を並べて帰るとき、何だか気分は女子高校生になっています。
※写真は先日一緒に行った「全国合気道演舞大会」
以前にも合気道の話は書きました。私は50歳半ばから夫と共に始めています。黒帯もいただきましたが、2週間も道場に行かないと、全てを忘れてしまう情けない始末。夫からは「なんちゃて黒帯」と呼ばれています。
※以前のブログ↓
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=137&cat_id=4
今日も稽古がありましたが、一緒にやっていた15歳のアメリカ人の女の子のおばあちゃんが、私より若いと知り、唖然としました。孫と同じ年齢の子と、同じ稽古をするのだから、肩で息をして、汗まみれはしょうがないと自分に言い聞かせます。
同級生の彼女ときたら正真正銘60歳の1年生なのだから、ずいぶんしんどいはずでしょう。高校時代はもっとサボリ屋だったのに、やっぱり年月は人を育てる?セッセと通って来ています。
合気道の良いところは、争ったり勝ち負けを決めたりしない、自分の体力で無理をしないで、それなりにできることです。受験勉強のように締め切りと詰め込みはありませんから、まさに生涯スポーツにはぴったり。
彼女は海外生活が長く、ボスと呼ばれてきた実業家。なので、日本に戻って、こういう“道”にはまるというのは新鮮な時間でしょう。そのような地位は今は捨て、ピカピカの1年生、しかも昔の同級生と再び同級生です。
50代の女性友達2人で、スタートしたケースもあります。このお2人は去年の6月頃から始めて、ほぼ毎日通う真面目さ。暇なのではありません、原稿書き、翻訳、編集、校正やらをバリバリやっている女性たち。
いつも仕事に追われているからこそ、身体を使って頭を空っぽにする時間が必要なのでしょう。仕事を抜けて道場に来て、血色良くスカッとしてまた仕事に戻るということも。1年前には全く食欲のなかった一人は、今はすっかり筋肉がついて、素敵な笑顔になっています。
50代の女性の一人がある日言いました。「私、みんなの手が好きなの。それぞれみんな違う」
普段、手を繋ぐのは夫や恋人だけ、という方にはこれはわかりにくいかも知れません。男性も女性も年齢も関係なく、順番に組んで稽古するために、道場では確かにいろいろな手を触ります。
市場で働く男性のゴツイ手、高校男子の手、柔らかい細い女子の手、暮らしで荒れた手、妙にすべすべの手。パソコンにばかり向かっている毎日では、自分の生身や他人の生身を忘れがちです。
人肌を感じ、その重さや勢い、力を受け止めながら、共に学ぶ。こういう時間は、頭脳労働が多い人ほど自分で用意しなければならない時代です。
稽古の後に、みんなでお茶を飲みます。冷たい麦茶や紅茶を湯飲みでごくり。誰かが持ってきたおせんべいやチョコレートを食べながら、稽古の話やたわいもない冗談で笑う。
「この時間が一番好き」という人もいます。企業や家庭にもない、様々な人の輪と和やかなひと時がいいものです。
だから、40数年ぶりの私と彼女も積もる過去の話などはどこへやら、最近知り合った女学生気分で、カラカラと笑いあっているわけです。
昔、仲の良かった同士が、また仲良くなるといっても、ご飯を食べたり、お酒を飲んだり、小旅行に行くくらいがせいぜいでしょう。
自分をそのままさらけ出し、飾りようのない稽古の時間を共に過ごす。合気道のおかげで、60歳にして、同級生になり直し。60歳にして、スッピンで付き合える友達関係が育っていきます。
6月始めはその彼女の初めての審査の日、5級の試験がうまくいきますように。奈良の出張から間に合うように戻って、応援しなくちゃね。
※写真は、40年ぶりに同級生になったわが友が、コンビニで買った「ぶっかけキシメン」を食べようとしている図。盗み撮りごめん。"