ワカメの全身
よく食べていても、その全体を知らない物は多いです。先日、生まれて初めてワカメの全身を確認しました。さらに、いつも使っている部位ではないところも含め、ワカメ全身のお料理にチャレンジ。先生は地元の女性たち。
「おもしろ~い」「おいしい~」と、私は何回叫んだことか。すっかりワカメ博士になって、山ほどのワカメをしょって、鳥羽市答志島から帰ってきたのでした。
さて、どんな体験をしたかというと、鳥羽市での『ぐるとば』(鳥羽の新しい食・旅を創造する試験的な体験プログラム。グルメな鳥羽、ぐるっと回る鳥羽の意)で選んだ、「島のお母ちゃんから教わるワカメ1本まるごと料理体験」す。
「ぐるとば」↓
http://www.city.toba.mie.jp/kanko/gurutoba/top.html
参加は4人、先生の島のお母ちゃん(とはいっても宿の女将さんです)2人。少人数でしたが、内容は濃かった~。
答志島(とうしじま)は今ワカメ漁の真っ盛り。朝の港はあっちこっちでワカメの下処理がされています。ワカメといわれればそうかと思うのですが、いつも使っている、塩にまみれて細く縮れている姿、カットされてカリカリになっている姿とあまりに違う大きさです、ワイルドさです。熱帯のジャングルに生えている古代からの巨大シダの仲間みたいな雰囲気。
おろるおそる持たせてもらうと、おお!大きい、長い。2メートルくらいあるのですが、これでも葉先?は切って捨ててあるのだとか。つかんだ根元、の太いこと。力強いこと。スーパーにあるワカメとはまったく別のものです。
ザブザブ海水が流れる中、漁師さんたちは根元のメカブ、太い茎、葉っぱと解体し、葉っぱの汚れをタワシで洗っていきます。葉っぱには「アリエビ」という小さなエビのようなものが、生存していたりして、つい私はキャ~とか驚くわけです。
ワカメはすぐにグラグラに沸かした海水でゆでられます、その後、多量の塩で揉まれ「塩蔵ワカメ」というのが出来上がります。が、今回はお料理教室ですから、ワカメ全身をいただきました。
作業場付近はワカメの香りに満ちています。これは日本の「かおり風景百選」にはっているとか、ずっといるとわたしも「ワカメちゃん」になってしまいそうな強い潮の匂い。作業がおもしろくて立ち去りがたくしていると、メカブをサッとゆでてくれました。熱に合うと、ワカメは褐色から緑に劇的に変わります。その緑の美しいこと。観葉植物のようなメカブにかぶりつくと、100年長生きしそうなおいしさでした。
さあ、ワカメ料理です。メカブは水で洗うとヌルヌルが出て切れません。同じくワカメはとにかく真水をつけるともたないので、水道で洗うのは最後の最後、ということを学びます。
メカブと格闘。これを千切りにするのですが暴れる暴れる。漁協に「メカブカッター」という商品ポップがあったのですが、この千切りをしてくれるのか否か?今まで、切れているメカブの酢の物をスーパーで買って当たり前に食べていましたが、なるほど誰かがこうして切っていたわけなんですね。
茎はキンピラに、葉はシャブシャブにしました。茎を輪切りにしてキンピラにする前に水に少しさらすのがコツ、海水のしみたワカメはかなり塩っぱいのです。
で、メカブは?というと三杯酢は当たり前。ここで先生たちが一押しだったのが「メーブ汁」。地元では、メカブを
「メヒビ」と呼びます。「メヒビ汁」がなまって「メーブ汁」です。このワカメの時期は、地元の人がみんなこれを食べるのだとか。濃い目の出汁をつくり少し醤油で味もつけこれを熱く沸かします。
刻んだメカブをよく洗い、そこに熱い出汁を一気にかけます。「わ~~~~~~」見事に緑色になって、びっくり。これを白いご飯にかけて、オカカものせ、せーのでザクザクとかっ込みます。『メーブ汁、親の顔見て八杯目』という言い方があるとか。そのくらい確かにご飯がズルズルと入り、おいしい。
ワカメのシャブシャブもキンピラもまったくシンプルなのですが、採れたてワカメですからとにかくおいしかったのでした。
ここで質問、「メカブというと、芽だから、ワカメの先端にありそうなのに、根元にあって何でメカブ?」「ここから胞子が出るの、だから」なるほど、芽が出るもとがここなのでした。
全身について知ると、ワカメのどこも捨てたくありません。茎も葉もすべて。「そこは硬いかも。そこは少し破れて汚いよ」なんて先生にいわれてもナンノナンノ。「もって帰って自慢するんだ~、みんなに教えてあげるんだ~」と、
担いで帰って来ました。
麻布十番の駅まで迎えに来た夫いわく「あんた、完全に行商のおばさんだよ」とあきれるほどに、確かに私のリュックは海水を吸ったワカメで膨れ上がっていました。ただそのくらいどうしてもすべてを持って帰りたいほどに、ワカメを愛してしまったのですからしょうがありません。
興奮して「ワカメ話」をする私に、ここ数日夫は閉口気味。メカブのお味噌汁もおいしいのに、「ワカメ以外のものが食べたい」とはなにごとか!!とはいえ、我が家の冷凍庫はいま、ぎっしりワカメなのではあります。(写真は運んだ5分の1の量)
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