楽しい仏壇通り
長野県飯山市の市街には、仏壇屋さんが並ぶ通りがあります。その山側には寺通り。
仏壇と寺、楽しさとは無縁に思えるのですが、先日はにぎやかなお祭りが行われていました。
木彫・蒔絵の体験、刃物研ぎ、仏壇屋さんのお話しなど。仏壇に関する技術や知識は実におもしろい。流しそうめんや五平餅、笹餅も。
眺めていて、この通りはもっともっと楽しい通りにできる!と確信できました。
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飯山でいつごろから仏壇が作られてきたのか、また、なぜなのかははっきり分からないのだそうです。
室町時代から浄土真宗が盛んだったこと、元禄時代の初めに甲府から来た人が素地仏壇を作ったこと、などに出発するようです。
仏壇事業協同組合のHPには、①仏教信仰の厚い地②城下町政策及び寺社政策③原材料が豊富④漆塗りに最適な気象条件、などが上がっています。
ともかくも、昔はもっと多かったとはいいますが、新幹線の止まる飯山駅から北へ少しのところに、仏壇屋さんが10件、約300メートルの通りのまわりに、仏壇づくりの職人さんも集まっているのだそうです。
本当は愛宕町雁木通りという名があるのです。人口22000人の市に、仏壇だけの通りがあることがとにかく面白いではありませんか。
飯山仏壇の高度な技術は昭和50年に国から「伝統的工芸品」の指定を受けて、職人さんたちは今も伝統の技を守り続けけています。
その仏壇通りのお祭り、正式には「奥信濃特産まつり」、もう32回も続いているそうです。せっかくのお祭りに、雨です。それでもちらっと見たいと出かけました。
雪や雨を避ける屋根付きの歩道、雁木がついています。ある意味普通の商店街なのですが、「○○仏壇」のという看板があっちにもこっちにも。
仏壇がずらりと並ぶ店の前に、赤や黄色のお祭り露店が並んでいる。地元の方には当たり前なのでしょうが、面白い光景です。
ある仏壇屋さんで、東京からの知り合いのグループが仏壇のお話を伺っていました。私も混ぜていただきます。数百万円という値段にびっくりするばかりですが、お話を聞いていると納得してきます。
仏壇はたくさんの職人が分業で作っていること。そのたくさんの工程を経て技の総結集で形になっていくこと。
すべてが分解できるので一度作れば、「おせんたく」といって、バラバラにして洗い、塗り直しなどして新品同様になること。
リニューアルできるのです。また、密封性が高く、火事にあって、外が黒焦げでも中は安全だったこともあるとか。なんともスローライフな逸品なのでした
おやおや、雨が収まって、お祭りに人が出てきたようです。
小さな農産物屋さん。「笹もち」を売っています。「笹ずし」は知っていたのですが、お餅は初めて。
あんこが入っているのかと思ったら、普通のお餅だそうで、笹の移り香を楽しむそうです。笹の葉の美しくなるこの時期の地元の方の楽しみでしょう。
仏壇に刃物はつきもの、だからでしょうか研ぎ屋さん。ああ、自宅の包丁を持って来ればよかった。
彫刻体験コーナー。みんな無心に木彫をしています。こういう作業って、頭が空っぽになってストレス解消にいいですよね。
ここは蒔絵体験。贅沢にも金粉をたっぷり使っって、伝統の技を体験できます。
これも仏壇?ではありません。おみこしですよ。
通りの真ん中に用意されたのは、恒例のようですそうめん流しの装置。雨が上がって、いよいよそうめんがゆでられます。
仏壇とお寺に包まれて、何だか人々が安心できる通りです。
飯山駅前には、巨大なスーパーがあり、その先には仁王門のある広場。この仏壇通りまでは歩くと10分の距離があります。
でも、この10分を遠く感じない仕掛けがあれば、東京からわざわざ出かける、訪ねる物語のある通りになるかもしれません。
スキーをしたり、高原を歩いたり、千曲川を散策したり、それには飯山駅からの次の交通が必要です。
新幹線で来ても、そのあとがお手上げなら、新幹線利用者は増えないでしょう。
駅から歩ける範囲で十分楽しめる街があるならば、車をあてにしなくてもぶらりと何度も飯山詣でができます。
できたばかりの駅なので、きれいではありますが駅前にまだ表情がありません。
飯山駅前で飯山らしい暮らしや文化、人々に出会うことがないならつまらない、車でどこかに行くしかない?ように思えます。
そういう視点では、飯山駅前からほど近いこの仏壇通りは飯山の宝です。
駅からポツンポツンとでも、歩いてたどりたくなるお店が出ているとか、仁王門広場ではフリーマーケットが出ているとか。
いよいよ仏壇通りに入ると技を紹介する体験コーナーが点在していたり、仏壇に関係なくともスローライフを体感できる、昔の暮らしや技を知る企画があったりとか。
そんなことが、年に1回から始まって、季節ごとに、そして毎月と行われればもっともっと楽しくなるし、しょっちゅう訪れたくなるでしょう。
名付けて「飯山スローライフ逸品市」、歩いた一番先の仏壇通りの端には、おとずれた人が誰でも参拝できる“象徴仏壇”があって、お参りすればするほど健康に長生きできる、というストーリーなんて作っても。
このフリーマーケットには、飯山の人も外部の人もお店を出せる。そうすれば観光客相手のお土産市ではなく、飯山の人も楽しめる交流市になる。
今回の楽しいお祭りを当たり前にやってのける商店街なのですから、もう少し広域で、いろいろな人がかかわっての実行委員会を作ればだんだんできると思います。
この秋、11月23日にはスローライフ・フォーラムが行われる飯山市。
それに向けて既に2回、3種類の分科会が開催されています。この「市」のプランは、その中でも語られているもの。やれそうです、やりましょう。ワクワクしてきました。
日本中で、新幹線駅近くに信仰という精神性なことと、技とがまとまってあるところは珍しいです。
寺町と仏壇通り、これを生かして飯山に表情を作りましょう。もっともっと楽しくね!
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