元気、大崎。

お仕事で

和歌山県海南市・大崎という港へ、NPO団体「げんき大崎」の招きで行ってきました。

「発掘!大崎のお惣菜~地元家庭料理の魅力再発見講座~」という催し、素朴なお料理がずらり、参加者は、おばあちゃんたちがずらり。

祭りのサバのなれ寿司について作り方をうかがうと、とたんにみんながしゃべりだしました、にぎやかで止まりません。こちらも、すっかり元気をいただきました。
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和歌山市と有田市に挟まれた海南市、その下津町に大崎はあります。和歌山駅からきのくに線に乗って、加茂郷駅下車。ここから車でちょっと、約6キロのところ。実に交通の便のよい、海辺の田舎といえばいいでしょうか。

海上交通が盛んの頃は、重要な港として栄えたそうで、なんと大崎を歌った歌が『万葉集』に2首も収められているそうです。

うかがった日は風が強く、沖合では大型船が風をよけて止まっています。船の大きさは違っても、昔からこんな風景があったのでしょう。

それでも驚くのは、岬の懐奥に位置する大崎港の静かなこと。小さいながら、天然の良港です。地元では、底引き網の船が中心。海運業の経営者がこの地区に何軒もありそうした船はかなり遠くまで出かけ、ここの男たちは家を空けているとのこと。

そのためか、集落に人の姿はなく、女達が留守を守っているという静かな風情。それでも500人を超える人が、ここに暮らしているそうです。古い浮きが細工され、港でにっこり笑って出迎えてくれました。

山側に上ると柑橘類が実り、棕櫚やフェニックスが育ち、温暖の地なのが良くわかります。山から下りる途中の小学校は閉校。わずかな子供はタクシーで遠くの小学校に通っているとか。

旧小学校の教室には今、地域から集められたお雛様が飾られ、ここだけ人口の多い賑やかな雰囲気。「ひなの間に 女は話す 事多し」、黒板に書かれた前で地元の女性たちが語らっています。お菓子をつまみながら、しばらく混ぜていただきました。

路地を歩くと、何時頃どこから運んだのか、素晴らしい石積みです。その間にサボテンが育ち、かわいらしい。

なんと、大崎流100円ショップがありました。お店らしきものがないこの地に、貴重なお店です。地元産のレモン3つで100円を、さっそく買います。

今回、声をかけてくださったのは、大崎でまちおこしの活動をもう7~8年している「げんき大崎」という大崎区のNPO団体。35人ほどで、ワカメ刈り体験の催しをしたり、地域物産の加工販売を計画など、いろいろ動いているとのこと。

その方々の活動拠点?的な、地元の船会社の別荘に泊まらせていただきました。夜は、メンバーが集まっての宴会です。焼いて食べたのは、ここの底引きで獲れる「足赤エビ」。このエビは実においしい、クルマエビの上をいく感じです。

一見、普通のおうちですが・・・。

お造りやら、鍋やら、漬物やら。紀の川市の方も参加で盛り上がること・・・。こういう宴会のできるたまり場・秘密基地があることは、地域づくりには必須ですね。

翌朝、メンバーのお一人の「のぶちゃん」が、おうちの畑に連れて行ってくれました。趣味の畑とはいえ、広いです。ブルーベリーがいっぱいあります。

ラディッシュを抜いたり、ミニキャロット抜いたり、収穫体験をさせてくださいました。久々の土の匂い、手触りです。風のないところなので背中がポカポカ、横では水仙が香ります。
今年初の、春のゆっくり時間を過ごせました。

さあ、いよいよ本番の催しが開始。婦人会の方々が用意したご馳走が集合。サゴシの棒寿司、イトヨリのさつま揚げ、エソのロールキャベツ、などなど。最近引っ越してきたというカレー専門店の方の、本格的なキーマカレーまで飛び入り。

食べ物が口に入ると、歩くのも大変そうだったおばあちゃんたちが、急に活気づきました。珍しい料理には感心し、切干大根やヒジキなどには自分なりの批評を加えます。どれもみんなスローフード、おいしいおいしい。

私が少し話をした後、皆さんに聞いてみました。この地でのスローフード「なれ寿司」についてです。昨日から皆さんの話に出ていた話題でした。

10月のお祭りに作るサバの押し寿司、ササ寿司とも言います。作って数日で食べるのは「早寿司」と言って、いわゆる市販の押し寿司くらいの柔らかさ。押しをして、楔まで打って、固めた寿司は水が上がったらひっくり返し、さらに押したままなれさせるのだとか。これが、本当のなれ寿司。

「周りに黄色いカビが出て、糸を引くようになるくらいがおいしい」とおっしゃる方もあるのですが、いやはや食べたいような怖いような。

フレッシュタイプの早寿司は柔らかくても、本当に押して押して「なれ寿司」となったものは固いようです。あるおじいちゃんは「歯がいいときは良かったけど、もう早寿司しか食えない」と。

ううむ。どんなに固い寿司なのか?糸はどんな風に引くのだろうか?究極のスローフードを見てみたい。つまんでみたい。お酒に合いそう、でも、怖い。

よそ者の私がしつこく質問するために、おばあちゃんたちはテンデに寿司づくりの極意を語り始めました。会場が、ドカーンとおしゃべりに満ちます。きゃ~、私、すべてを聞けないよ~。(この時は、写真どころではありませんでした)

でも、自分がやってきたこと、今でも唾が出るようなことについては、こんなにみんな元気に話すんですね。それが私には大発見。今度ここで、寿司教室をやってくださいな。学びたい、都会の食いしん坊は男女共にたくさんいるはずです。

帰り際におばあちゃんから「記念写真を撮りたかったね「私、なんだか蘇ってきたよ」なんて言われました。ここの女性たちはおばあちゃんも肌がきれいです。コラーゲン一杯の、底引き網が獲る舌平目などをよく食べるからだそうです。柑橘類もあるし、うらやましい。

また行きますから、“大崎の元気のおすそ分け”よろしくお願いします。