臭水

ゆとりある記

「くそうず」と呼びます。石油の層が地表近くにあるため、油が自然に染み出して、池や川は黒くなり臭う。その原油を「臭水」と呼んだそうです。新潟県胎内市黒川の地名はそこからとか。

昭和30年代まで石油を産出していたこの地には、現在、記念館が建ちますが、驚くことに今も臭水が湧いています。思いがけずハイレベルな自然観察をしてきました。

胎内スキー場の上まで昇ると胎内川がうねうねと流れ、その先には日本海が。はるか昔は、この川に黒い水が流れていたのでしょう。

胎内市黒川庁舎の近くから少し山に入ったところに「シンクルトン記念館」があります。これまであまり興味を持たなかったのですが、今回うかがって驚きでした。

シンクルトンとは、原油を掘る穴の「4面を崩れないように補強して掘るといい」と指導した英国人医師の名前だそうです。明治の始めに来た彼を顕彰し、名前をつけているのはよほどこの土地の人にとってありがたい指導だったのかも知れません。

そもそもは天智天皇の7年(668年)に「越の国、燃土、燃水を献る」と『日本書紀』にあるそうで、その「越の国」は黒川だろうといわれているそうです。今でも毎年、臭水を採油して近江神宮に献上しているとのこと。

昔は水の上に浮いた臭水にカグマと呼ばれるシダの一種の束を浸し、カグマの葉に付いた原油を絞りためて、さらに水と分離させて原油を集めたそうです。

建物の裏山は採油した穴だらけ。記念館の説明員の方が、シンクルトン指導の井戸で実験してくださいました。井戸の底にたまった水にカグマの束を落とし引き上げると、見事に黒々と原油がついてきます。

気長な採油方法ですが、今も黒い油の浮く池を見ると、私もきっとこういう方法をとったろうと思いました。海岸でタンカーが座礁して原油が流れ出た時の、現代の対応に似ています。

説明員のかたが教えてくださいます。「ほら天然ガスも湧いているんです。今日は雨だからわかる」なるほど、敷地のあちこちの水溜りからブクブクとガスの泡が。びっくり!禁煙の札があることに納得しました。

館内にもガスが入ってくるので、換気に気をつけているとか。原油とガスの上に立っているような記念館なのです。

ここだけで立派な観光施設になるはずです。エコミュージアムとしても立派な役割を果たします。子供達が池で採油体験をする、その油で、昔のように灯りをともす。そんな貴重な「臭水体験学習」もできるはずです。今、エネルギーに興味のある大人にも魅力的なメニューになります。

などなど考えるのは私だけでしょうか?もっと、この施設や史実を活かせばいいのに。そもそもこの記念館の名前からは、いったい何なの?と誰もが思い、それ以上に惹かれることはないでしょう。いい施設なのに、年間何人の人が訪れるのか・・・?人

知れず湧く、臭いといわれた水、「ここに湧いていますよ」と知らせるためか、黒々とした池で臭っていました。胎内スキー場の上からの風景、燃土、燃水の地の燃える紅葉です。