かた焼き物語

お仕事で

その昔の、忍者の携帯食をイメージして作られている伊賀の名物「かた焼き」。木槌がないと割れないその硬さに面食らいますが、香ばしく甘く、なかなかおいしいものです。

その「かた焼き」が、“ただある”だけでなく、何か新しい発想でまちづくりの“物語”ができないものか?「かた焼き」を研究し、そこからアイディアを湧かせるワークショップをやりました。

三重県伊賀市、先回のブログでもご紹介した研修(厚生労働省 平成24年度新事業展開地域人材育成支援事業「三重県観光新企画づくり塾」)で今回は伊賀市が開催地。テーマは「地域に根ざした食の魅力を探す」です。

観光資源として“食”は大事な要素ですが、ただ名産の●●がある、というだけで終わってしまっているケースが多いものです。

それが今、どんな意味をもち、どんな可能性を持って存在しているのか、またはさせるのか、というあたりを整理し、その“食”を磨いていかないと、つまり“物語”をつくらないと“ただある”で終わってしまいます。

地域資源を活かすには、深く掘り下げるか、違うものを繋げるかです。そのお稽古として、ここでは「かた焼き」を掘り下げ手法で物語化することに挑みました。

というほどオーバーなことでもなく、たかだか4時間のワークショップなので、軽いトレーニングということなのですが・・・・。

市内に8軒の「かた焼き」屋さんがあるということですが、この名物を網羅した「かた焼き」マップなどはなく、「かた焼き」ガイドブックもありません。

それならばと、先ずは手に入る「かた焼き」をすべて入手して、それぞれのざっくりした特色をうかがうことから始めました。

そもそも「かた焼き」は小麦粉と砂糖を練ったものを、カチカチに焼いたもの。ゴマか青海苔がついているのが定番。形が刀の鍔に似ているのも特色です。

店により極端に硬いところ、子供も食べられるクッキー風のところも。ピーナツやアーモンドが混ぜられたり、餡入りもある。今回はベーシックなものを主に迫りました。

焼いているところを見よう!焼いているのを見せてくれるお店に突入しました。何でもできていく様子を見るのは面白い、見ていて飽きません。

粉の塊に、海苔かゴマをちょんとつけて、鉄板へ。「槌」と呼ぶ丸い道具で押して、丸い平らな形にして、その後、じんわり焼いていきます。

弱火で最低30分。上に分厚い木片を乗せて。これは重石であり、保温であり。鉄板の右端で焼き始め、何度もひっくり返しながら一番左まで移動した頃には焼き上がりです。すでに、石のように硬くなります。

途中のまだやわらかいものを食べさせていただくと、熱々で甘くておいしい。30円で楽しめる地元ならではの味わい。ワークショップ参加者から「美味い!」の声が上がりました。

もう一軒のお店に行くと、ここは元祖を名乗り、かつ、もっとも硬いとかで、「かた焼き」を割る専用木槌も売っています。巨大かた焼きもありました。

こうして参加者みんなが、にわか「かた焼き」研究家になってから、今後の観光振興のためにどんなアイディアがあるかを出します。

先ずは発見。「油や卵を使わないからヘルシー」「2年も持つのなら、非常食になる」「硬いものを噛むのは目が覚める」「噛むのはボケ防止になる」「子供の歯を丈夫に」「即、量を食べられないからダイエットにいい」「香ばしくて意外においしい」などなど。

そんな「かた焼き」の特色を活かして、できそうなことは?「かた焼きカフェを作ろう」「かた焼きで食器を作っては」「ハーブ入りを作って若い女性に」「骨の形にして砂糖を抜き、ペット用に」「赤ちゃんの歯がため用のミニサイズを」「食べられるアクセサリーに」「かた焼き体験できるように」「全国堅物コンテスト、お堅い人集まれ」
「いまどき硬いは貴重ですキャンペーン」「かわいい女性好みのかた焼きミュージアムをつくろう」「かた焼きを噛む時の音を録音して、音楽を」「かた焼きブックをつくろう」「童話にあったお菓子の家のような、かた焼きの家をつくろう」などなどが出てきました。

実施計画には届きませんが、“忍者の携帯食 かた焼き”として、“ただ土産物としてある”よりもぐっと世界が広がり面白くなってきました。

何でも柔軟なものがいいという時代に、シフォンケーキ
と対極にある「かた焼き」を現代の堅物として際立たせ、硬くて何が悪いとえばってみましょう。

堅物大好き女子が集まって、1ヶ月がかりで作る「かた焼き」の家。これはすごい!「かた焼き」の強度も科学的に検証しましょう。なんだかわくわくしてきます。

一つのことをみんなで掘り下げると、意外なアイディアが出るものです。こんなやり方で、皆さんの地域資源を磨いてみませんか。