銅像どうぞう

ゆとりある記

埼玉県熊谷市、街なかに星川という小さな川が流れます。そのところどころに立派な銅像が。あるのだけれども鑑賞することなどほとんどない、というのが街なかの銅像、どこでもそうだと思います。

ならば解説付きでしっかり眺めてみようという催しがありました。まじまじと銅像を見ると、実はとってもすばらしい。身近な場所での芸術鑑賞、この日は銅像もうれしそうでした。

この催しは、この冬に熊谷で行われた「街なか活性化セミナー」http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=91&date=201102
で参加した市民がが企画したプラン。

いよいよそれが実践された最初の日であったのです。星川を中心に、周囲のお店や魅力ポイントを散策し熊谷を楽しんでいこう。街なか観光を育てようという計画。全体をくくるテーマは「星川ロマン物語」です。

星川という名がまずは素敵、川の周囲のお店や花、史跡、人、それらをみんな輝く星としてとらえればどれほどの散策ルート、ストーリーがつくれるでしょう。

今回のテーマストーリーは「私の魅力再発見と初夏の星川散策」。銅像を鑑賞して自分の芸術心を目覚めさせよう、というもの。銅像ウォークの後は、ランチ、ネイル体験、フラワーアレンジメントと自分を魅力的にするメニューは豊富です。

コーディネーターは印刷屋さん、ブティックの店主、ガラス工房の女性。ミーティングして内容を練り、講師を頼み、参加者を集めました。ドタバタ感もありましたが何度か試すうちに、この企画はきっと定着するでしょう。

さて、銅像に話を戻します。銅像というよりも、彫刻の鑑賞には、「量感」「面」「地肌」「比例・均衡」「動勢」というポイントがあるとか。おお、アカデミック!専門家が解説してくれるので、なんだか1日美大生みたいです。

う~ん、なるほど裏にも回って見るのか。あ、後ろはこんな姿。同じ足の親指も、作品が違うとこんなに違う。銅像目線で街を見るとこんな感じ。ややや、おもしろい。

解説してもらいながら15人くらいで銅像を囲んでいると、自分だけでは絶対向き合えない銅像・彫刻との関係が生まれてきます。

本来、1人でも2人でも、日常的に鑑賞すればいいのだけれど、この日の参加者も皆一応に言っていたのは、「銅像があるのは知っていたけどいつも急いで通り過ぎるだけで、ゆっくりなんて見たことない」というものです。

むずかしいことは考えず、この女の人の首筋がきれいとか、この銅像たちは何を語らっているのかしら、堂々とした座りっぷりだなあ、などいろいろ想うだけで充分。この日以降は、この近くを通るときふと目が銅像に向けられるはずです。

誰かが、銅像に付いた蜘蛛の巣に気づきそっとティシュでふき取りました。裸婦像がうれしそうに微笑みました。

銅像と時間を過ごす間に、参加者は皆仲良くなりました。川沿いの花も楽しめました。ネイルケアで爪はピカピカ、フラワーアレンジメントも覚えて、すっかり自分磨きができたようです。

皆さんの街に、くもの巣のはった、誰も眺めてあげない銅像がありませんか?忙しくて、芸術鑑賞どころじゃない、という暮らしはそろそろやめにしましょう。銅像を見つめれば、作品から必ず何かが伝わってくるはずです。