2つのお花見

ゆとりある記

雲仙市小浜で、いま「ジャカランダ」という青紫の花が見頃です。

世界三大花木のひとつ、アフリカから50年前に種が届き、温泉で地面の暖かい小浜で上手く育ったようです。

市の木「ヤマボウシ」も見頃。花のようにみえるのは総苞片という葉の一種ですが、奥雲仙の草原で真っ白に咲く様子は雲のようです。

東京では経験できない、温泉地ならでは、高原ならではの花見でした。
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ジャカランダは葉はねむの木のようで、花がなくてもなかなか風情のある樹形をしています。

夕日で有名な小浜の海岸沿いに植えられ、シルエットはいい雰囲気。いつか花を見たいと思っていました。


今回見事に、開花時期にうかがうことができました。

かつて花の咲いたこの樹を見た人が「紫雲木」と呼び、日本に紹介したというのが分かります。

大木はこんもりと紫の雲のようにみえました。


知人がアフリカに行ったときに、「街路樹で青紫の花の咲く樹があり、それはそれは美しく、日本の桜並木のようだった。」と写真を見せてくれたことがあります。

海辺の温泉、小浜のまちも、そんな風景になりつつあります。


近づけばこんな花。藤のようでもあり、スミレのようでもあり。ひとつひとつが筒状になっている。

ふんわりと香りもしています。


説明看板と顕彰碑がありました。

ジャカランダの原産地は南米ブラジル。南米やアフリカ、オーストラリアなどでは、街路樹や公園樹として植えられている世界三大花木のひとつ、とあります。

日本でこの花が咲く街は、雲仙市と日南市、熱海市ということでした。


50年ほど前にアフリカ諸国の政府顧問をしていた南島原市出身の方が、ジャカランダの種をこの地に贈った。

それを、既に故人となられた元小浜町長はじめ、たくさんの方々が、育て増やしてきた。今も、地元の方々が大切に苗を増やし、植え続けているのだそうです。


開花情報を確かめてやってきたという観光客が、盛んに写真を撮っています。私もその一人。

道路の向かいのパン屋さんにはたくさんの鉢植えが。やがてあの苗も、この温泉街を飾っていくことでしょう。


翌日うかがったのは、奥雲仙田代原。牛の遊ぶ高原です。

ここに市の木、ヤマボウシが咲いているというニュースを見て連れてきていただきました。


キャンプ場の中に大きなヤマボウシが、満開です。

標高500mくらいのところを好むというヤマボウシにはここが適しているのか、今までこんな立派なヤマボウシを見たことはありません。

こちらもまた白い雲かと思えるような姿で、何本もそびえています。


ヤマボウシの花にみえるのは、蕾を包む「総苞片」という葉と同じもの。その中心にあるのが本当の花です。

枝の葉の上にこれがついているので、大木であればあるほど近くに寄ると白い部分がみえなくなってしまう。綺麗なものは遠くから眺めましょうということでしょうか。


黒い牛が草を食む草原の向こう、緑の中にあっちにも、こっちにもヤマボウシの木が白く見えます。

なんとものどかな時間。


キャンプ場には地元の方々が「ニュースでみて」と見物に来ています。

キャンプをしなくても、やはり花は人を呼ぶ。


自分の住む土地で、ぶらりと出かければこんな花々に出会えるのは幸せですね。

東京の樹々は窮屈そう、ビルに囲まれ、公園でも人だらけ。

のびやかに咲く花木をおおらかに眺める、こんな観光も雲仙市にはあるのでした。