千々石休み5「きれいにぎやかな朝」

ゆとりある記

朝です。よく寝ました。廊下が回る8畳間に布団を敷いて、目覚まし時計の音もなく起きました。マンション暮らしの目覚め景色と違います。目を開けたとたん日本建築のていねいな手仕事が見え、ガラス越しに緑の柿の葉とキラキラ朝日。本来、人の目覚めはこうあるべきなのでしょう。

畳の部屋が4つもあるこの広い母屋から、パジャマのままヌッと交流スペースに顔を出します。由利さんがすでに掃除機をかけて「竹添ハウス」の朝は始まっていました。歯を磨いていると、「おはようございます~」と昨晩一緒だったヤシマ君、出勤前にわざわざ“紫蘇ジュース”を届けてくれました。勤めは?出勤は?と心配になるのですが、どうやらコーヒーを飲んでいく様子。

上司に「ちょっと立ち寄り箇所ありまして」なんて電話をしています。その最中に由利さんたら大声で「ねえ、ミルク入れる?」「少しは気を使ってよ、電話してんだら!」とヤシマ君はあわてます。もちろん彼はこういう意味のことを長崎弁で叫ぶのですが。おやまあ、電話の向こうの上司は何と思ったやら・・・。

ふと気がつくと私はスッピン、しかも寝起き姿なのですが、そういうことは関係なくてどんどん家に人が上がってくる土地柄なんですね。続いて今度は「野菜で~す」と、由利さんのお仲間「ちーまま」というニックネームをもつ田中さんが現れました。

朝採りの野菜、サトイモの葉にくるんだフレッシュブルーベリー、自作のブルーベリージャムも。なんてきれいなナスでしょう、ゴーヤでしょう!これで滞在中の野菜は十分です。

あれ?ご近所さんが花の球根を持っておいでになりました。「雨降り草っていってね、雨が降るとすっとつぼみが出て咲くの。この辺に植えればどんどん増えるから」と由利さんに説明しています。

そんなこんなに混じりながら、私たちはパンをかじり、ブルーベリーを食べ、身支度を。東京の我が家に来る人といったら、宅配便の人ぐらいです。マンションの入り口は暗証番号でないと開きません、2重のロック。こんなにきれいで、しかもにぎやかな朝に、とことんびっくりしたのでした。"