「古い」を「新しく」
あるもの探しをして、それを活かす。というのは地域おこしの原則です。高知県梼原町でパネリストのお一人、中村桂子さんは「古いものを捨てないで、新しく」と発言されましたが、今回のフォーラム会場そのものがそうでした。古い芝居小屋をシンポジウム会場に設え、山の紅葉や地元の神楽に使うお面や太鼓で装飾。取り組んだ若者たちは、「どうですか、素敵でしょう」と胸を張っていました。
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さて、下の写真は、「スローライフ・フォーラムinゆすはら」での、私の進行の様子ですが、この設えをご覧ください。もしもこのシンポジウムが、普通の無機的な会場でしたら、こんなホットな雰囲気にはならなかったはずです。
整えてくださったのは、梼原町の若者定住対策審議会、略して「わかてい」の方々と役場の担当課のお若い方々。
開催前日の11月8日に、私が予定より遅く到着すると、もう出来上がっていました。手伝うつもりだった私は反省しきりでした。
もともとは芝居小屋だった「ゆすはら座」です。その古い建物を捨てることなく、残してきた町も偉いです。それを今回はシンポジウム会場に使わせていただきました。本来、座布団が並ぶ客席に椅子が並び、同じく「わかてい」の方が司会をする前には、太鼓や神楽のお面が飾られています。
お面は普段、大切に保存されているもの。町の宝。それが観客を迎えるように、舞台上に飾られていました。お面を立てられるように、同じ町の若者に頼み、急遽立てる道具を作っていただいたのだそうです。
また、町には津野山神楽の演目に因んだ「よさこい」の連があり、それに使われる「よさこい」踊りに不可欠な鳴子もテーブル飾りになっていました。普通なら、シンポジウムのテーブル上には花などが活けられるのですが、鳴子です。
さらに、「よさこい」に使われる神楽演目「タイ釣り」の可愛いタイの作り物も登場しました。赤くてかわいいから、テーブルに飾っちゃおう!という訳です。いよいよ華やかになりました。
芝居小屋なので、舞台にあがるのは花道しかない、なんとか舞台にあがる階段がつけられないものか・・・?と気づいたのは、フォーラム3日前。それが、見事に階段、演台もできていました。梼原の大きな文字付きです。竹灯籠の催しに使われたらしい、竹製の梼原の文字が、再利用されていました。台も、本来どこかで何かに使われていたものです。
モミジの枝を「わかてい」さんの女性が「ノコギリ使って切ってきたの。手がつかれた~」と自慢します。格天井や、舞台袖に飾られてぐっとムードが上がります。
都会では、考えられない大きな枝を惜しげもなく切ってきてくれて、ビックリしましたが。「いいのいいの、切った方が良いくらいなの」とさっぱり。
こうして舞台は出来上がりました。鹿のはく製までがドンとセンターに居ます。古いもの、使わないもの、違う用途のものを、新しい利用の仕方で、役立てる、使いこなす。「わかてい」さん、役場の方々の知恵と工夫に脱帽しました。下の写真はフォーラムが終わって、ほっとした時間の役場の担当者3人と、増田寛也さん・野口の記念写真。本当にいろいろお疲れ様でした。
民宿で、私がいただいたふかし芋も、古いものを活かす、象徴に思えた梼原でした。