アンネのバラ
「もし神様が私を長生きさせてくださるなら、私は世界と人類のために働きます。戦争が何の役に立つのでしょう。なぜ人間は仲良く暮らせないのでしょう」ナチスに捕らえられ、15歳で亡くなったアンネ・フランクの日記の一節だそうです。そのアンネを悼み「アンネの形見のバラ」と命名されたバラ。先日、京都府綾部市にうかがった際、咲いていました。黄にピンクの混ざった、可愛い花でした。
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綾部は京都から特急で一時間弱のところ。「グンゼ」の本社がある地で、その本社近くに「あやべグンゼスクエア」が整備され、市民と観光客の憩いのスポットになっています。
いいお天気で綾部市役所からぶらぶら歩き、訪ねました。「グンゼ博物苑」は昔の土蔵のような造り。蚕から絹ができるまでの学びから、製糸業として「グンゼ」という企業が発展していく歴史、そして、今、と時代を追って展示があります。
昔の製糸工場で使われた機械。
グンゼ創業者・波多野鶴吉と葉那夫婦の軌跡。グンゼでは、働く女性を大事にし、教育も躾も、健康づくりにも留意していたのがよくわかります。
そして今の製品がずらり。「グンゼの下着とストッキングはいいよね」と見学していた女性たちが語っていました。今は、医療や包装などの分野にも発展しているそうです。
ちょうど昔の養蚕の様子の浮世絵展も開催中でした。
女性の味方のような「グンゼ」だからでしょうか、バラ園が整備され、あちこちで女性グループがくつろいでいます。このバラ園は、市民参加で造り、ボランティア市民により手入れが行われているとのことでした。
その“みんなのバラ園”に「アンネのバラ」の立て札がありました。
大きな詳しい説明書きがあります。
このバラはバラ育種家から、アンネの父親に贈られたもの。それがいろいろな経緯を経て、綾部市の山室隆一さんに届き、息子の健治さんとともにたった一本をもとに接ぎ木で増やしてきたのだそうです。売り物ではなく、平和を願う全国の方々へ広めてきたとのことでした。
ちょうど見ごろに咲いたバラは、さわやかな香りがします。黄色に桃色が混ざった色合いは、少女のようです。女性の味方の企業「グンゼ」の庭に、この花があることに心打たれます。アンネも自由に生きて、自分の人生を開花したかったでしょう。
私たちは今のこの平和を感謝しなくては、とつくづく思います。それを考えさせてくれた、このバラ園を守る綾部市民にも感謝申し上げたいです。ほんと、戦争なんて何の役に立つのでしょうと思います。
ここでゆっくりお茶をしながら女友だちといろいろ語り合う、有意義な時間でしょう。いいなあ~と思いながら、綾部駅へ向かいました。
前日、綾部駅に降りたときと反対側の駅前広場に出ました。あれ?少女像がすくっと立っています。アンネのバラの中、青空に向かって、すがすがしく。このアンネ像に「綾部に来てくれてありがとう。お帰り、お気をつけて」と送られた気分。いつまでもこのバラの香りが記憶に残りました。