ワインな時間
先日、ゆっくりワインを楽しむ時間がありました。私は、ワイン通とかではありません。でも、今はワインがいいなと思いました。ジョッキのビールではつい声が大きくなる、日本酒だとついお酌をしたくなる、その点ワインは落ち着いた大人同士、距離を保って静かに語り合う雰囲気があります。この日は特に物語がある「十勝ワイン」、もちろんマスク会食、お扇子も導入しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東京駅八重洲側にある「レストラン十勝」。十勝ワインの専門店、お店はオーソドックスな設えで、どっしりと落ち着きます。なんといっても、働いている方々がそこら辺の若者でないのがいい。ワインのこと、十勝のことならなんでもお聞きください!といった専門知識の自信にあふれたおじ様方。大人の空間です。
ちょうど、池田町のワイン原料用ブドウの独自品種「山幸(やまさち)」が、国際ブドウ・ワイン機構から品種登録されたとのこと。日本産のワイン原料用ブドウで国際品種登録されたのは、これで3品種目だそうです。今までは「日本産ワイン」としか表記できなかったのが、今後EUに輸出する際は「Yamasachi」と名乗ることができるのだそうです。
ブドウの生産ができないと言われていた北の地で、野生の山ブドウに目をつけて、そこからワインづくりが始まり、品種を掛け合わせ掛け合わせ、その努力と回数は気が遠くなるほどのものです。池田町の「十勝ワイン」造りについては、あまりに語ることが多く、ここでも何回かご紹介してきましたが、その「山幸」が世界に胸を張って出ていけるというなんだかうれしい夜なのでした。
昭和の雰囲気のお店には、大声で騒ぐ酔っぱらいはいません。「山幸」良かったね、と肉料理を食べながら静かにほほ笑む時間が流れます。鹿も、羊も、牛も美味しい。しかもこのご時世ですから、すべてが各自の小皿に盛られてくる親切さ。こういう料理に「山幸」の酸味が合います。
赤だけでなく、白もいただきましょう。華やかな香りの辛口、こちらもゆっくりです。実はこの日、マスク会食を心に決めていたのですが、ちょうどニュースで「会食では扇子を使って話すといい」と聞いたばかり。なので、お扇子持参でお食事となりました。
3人での会食ですが、皆がお扇子を使って話をすると、なんだか平安貴族のような面もちになります。特に笑うときは、おほほほほ!と。扇子がある分、大笑いをつい控えて、上品になっていきます。ワインはそもそもどんちゃん騒ぎに合わない、さらに扇子も使えばよりおとなしく落ち着いていく。ワイン効果と、扇子効果ですね。
とどめはアイスワインでした。トロッっと甘い、希少なワイン。デザートとして舐めるようにいただきます。
氷点下12度以下の冷え込みが続いた明け方に収穫する、凍ったブドウだけで造るというものです。水分が抜けて甘みが凝縮されているブドウなので、ごくわずかしか果汁は絞れません。メニューにある写真に驚きます。その甘さたるや、さっきの「山幸」とは全く違う表情。贅沢にも、アイスクリームにかけて最後はいただきました。
コロナ禍でいただくお酒は、静かに飲むのがいい。飲むより味わうほうがいい。しかも、いい人といい話題で飲むのがいい。免疫力がぐっと上がったように思えました。