建物ミュージアムのようなまち

ゆとりある記

高知県高岡郡梼原(ゆすはら)町、高知市内から車で2時間近くうねうねと山道を登った、雲の上にあるような小さなまちです。江戸時代からのお接待に使う茶堂が残り、珍しい屋根のある木橋が架かる、木造芝居小屋も現役。サッと車で回っただけでも面白いのですが、なんとここには建築家・隈研吾さん設計の建物が総合庁舎はじめ6つも。建築好きにはたまらない、まちなのでした。

小高いお寺から街を望むと、すぐそこは1500mを超える山の頂、街が山のうえにあることを忘れるような佇まいです。小京都などとつい呼んでしまいたくなる。

今回は車で早回り見学。このブログもサクッと写真本位でご紹介です。同行の建築家が見たいとおっしゃっていた、まずは屋根付き橋へ。

町の91パーセントが森林というだけあって、木は豊富。こうした木橋がかけられるわけです。「神幸橋」、映画のロケやファッション雑誌の撮影によさそうですね。ずっとここに居たい。

街なかに入ると中心街の道は広々。歩道も広々。でも、情緒を感じる街並みです。雪深い時期はどんな風情になるのでしょう。

街角に「お茶堂」がありました。町内に今も13棟の茶堂が残る、お接待文化のある地です。

なかでもこれは、古いもの。目の前には「坂本龍馬脱藩の道」というのが続いています。強い志を胸に峠を超えていく、あの龍馬がここで一休みしたのかもしれません。

昭和20年代に建ち、平成になって移転・修復したという芝居小屋「ゆすはら座」。ここをのぞく新聞記事が。隈研吾さんのインタビュー記事です。

隈さんはこう語ります。「ゆすはら座を最初に見て、木に囲まれ空間に圧倒される思いがありまして。ああ、こういう空間が私はほしかったんだ、と。木を大事にして生きるということが私の建築の哲学のベースで、それを教わったのは梼原と言っても過言じゃありません」こうして、隈さんは90年代から木造建築を手掛けるようになり、この町にはその最初の建築「雲の上のホテル・レストラン」があるのだそうです。

まちの駅「ゆすはら」も彼の作品。一見、材木置き場かしらと思う、木のボリュウム感ですね。

先のホテルの別館になるホテル部分も含まれます。今度泊りに来ましょう。

店内の内装も木がふんだんに。山の幸がいろいろ売られています。原木椎茸がほしかったのですが、この日はもはや売り切れでした。

隈さん作、「梼原町立図書館」。看板には「雲の上の図書館」とあります。ここのうわさは高く、子供がおしゃべりしても大丈夫な図書館、カフェもある、ボルダリングもある、ここに松山から毎月通う人もいる、などと耳にしましたが、この日は外観だけ。ここも今度ゆっくりです。

隈建築、ご紹介の最後は「梼原町総合庁舎」。役場もここに入っていて、正面の広い窓の部屋が町長室とか。お姿が、駐車場からよく見えます。いくつかの公的機関が入っているのに、威圧感がない、冷たい感じがしない。むしろ入ってみたくなる建物です。一階にはお茶堂もあるそうですが、ここもまた今度。

走り抜けた梼原建物見学でしたが、「こんなに強く、また来たいと思わせてくれるまちは珍しい」というのが率直な感想でした。次回のブログでは、この町でお会いした素敵な女性たちのことを書きます。