高知でまたおいしいものを

美味しい話題

私の場合、その土地で食べたもので大体そこの印象が決まります。何度目かの高知、またまたおいしいものをいただきさらに好きになりました。地元食材のイタリア料理店、若いシェフが自分の畑のトマトで作ったというパスタ。須崎市のアンテナショップで、人生初の「鍋焼きラーメン」。そして、伝統の高知の「蒸し寿司」。いずれもお安いメニユーですが、いいお味、いい時間でした。

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はりまや橋でバスを降りて、さて、遅いお昼、どこで食べようかと歩きだしました。目の前の時計のついているビルの裏手には小さな流れが伸びています。それ沿いに歩いていくと、ビル群の途切れたところの三角地帯に小さな店がありました。観光客向けという感じがなく、ちょうど出てきたお客様がいい感じの人たち、のぞけば店は空いています。

座るとメニューにひかれました。手書きです。「当店は高知の食材を使った地産地消の料理店です」とあり、続いてお品書きには、ウツボのグリリア、長太郎・マイゴ・チャンバラ(地元の貝類)のインぺパータ、はちきん地鶏の手羽先など、地元食材料理が並びます。

私はトマトのパスタを頼みました。見事にたくさんのトマトが使われたソース。こちらのシェフの農園でとれたチェリートマトだそうです。デザートはユズと文旦のグラニータで、さっぱり。夜ならば、ワインを飲みながら、あれもこれもと注文したいメニューです。しかも、東京では考えられない安さ!

お店の名は「ラ アルベロ グランデ」(LA ALBERO GRANDE、はりまや町)、31歳の長瀬大樹さんがオーナーシェフです。お店も味も気に入ったのですが、何といっても彼が私のコートについていた毛虫を、サッと素手でとってくれたことに感動しました。「農家なんでこのくらい平気ですよ」と笑います。二人のお子さんと奥さんと、「名前のように家族を守る大きな樹になりたい」と頼もしく笑いました。

夜に行った、高知市内にある須崎市のアンテナショップ「まっこと!須崎」(帯屋町)。基本、海の物のお店ですが、「鍋焼きラーメン」というのが須崎の名物とか?頼んでみました。写真は少し伸びちゃっていますが、本当はグラグラ煮え立ち、沢庵も付け合わせにつく、という50年ほど前にできたB級グルメなのだとか。

甘辛味のところもあるそうですが、ここでは普通のラーメンのような味でした。寒い日に、伸びないうちに食べたら美味しいでしょう。

そして、翌日のお昼はずっと前からあこがれていた「蒸し寿司」。「菊寿し本店」(帯屋町)でいただきました。高知の方にご一緒していただき、いろいろお話をしながら。甘酸っぱい香りが食欲をそそります。この日のは、「春の蒸し寿司で」定番の具の上にさらに桜鯛・タケノコ・フキなどがのっていて彩もきれい。

錦糸卵、蒲鉾、でんぶ、ウツボのそぼろなど、いろんな味がしっかり甘めの酢飯と混ざって、なんだか美味しさのオーケストラのよう。食べるほどに見えてくる、この1人用の蒸籠のすのこも年季が入っています。この蒸籠、ここでお土産に買えないかしら?と思ったのですが、売り物ではありませんでした。

周りには、仲良しの老夫婦やご婦人の二人連れや、家族連れも。なんだか幸せそうにカラフルなこの「蒸し寿司」に向かっています。皆さんこの「蒸し寿司が」本当に好きで食べに来ているのがよくわかります。私も『高知家』の一員になった気分で、ご飯の一粒一粒をかみしめます。「高知に行ったら蒸し寿司を食べてね」と言われて意味が分かりました。

味はただ美味しい、まずい、安い、高いだけではないですね。作る人、一緒に食べる人、雰囲気や物語り、総合的に美味しさに繋がる。そしてそれは美味しい土地という評価になる、とつくづく思います。