玉子焼き
私の玉子焼きは、かなり甘い、出し巻ではない、上品でない、焦げたりしているごく普通の玉子焼きです。それでも、夫は「死ぬ前に食べたいのは、あんたの玉子焼き」なんておだてます。焼くのが好きと豪語していたら、タマゴ30個くらい焼く注文。義兄と甥から冷凍にするとか。ええ?といいながらも、なぜか焼いていると幸せな気分、苦になりません。玉子焼きの力なのでしょうか?
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これが今朝焼いた玉子焼き。今頃は夫のお腹の中です。卵焼きでもタマゴ焼きでもない、「玉子焼き」と書くのが、私的には好きです。ね、玉子って感じでしょう?
もともと実家の母が玉子焼き名人でした。名人といっても実家では好評、のレベル。甘い、お弁当向きの玉子焼きです。姉も私もその味で育ちました。孫たちは「おばあちゃん、またタマゴ焼いて~」とねだっていました。その母が97歳になり、フライパンを持てなくなり、火も使えなくなりました。
その味を受け継いでいた、同居の姉も、3年前から病に伏し、先日亡くなりました。つまり、実家では玉子焼きの作り手がいなくなったのです。
この上の写真は、姉がまだ生きているときに、家事応援に私が行ったときのものです。温泉卵を作り、それには間違えないように絵を描き、これからタマゴ5個で玉子焼きを作ろうとしているところ。小皿とティッシュは油を敷くための小道具。
この時の玉子焼きは、もはや緩和ケアに入っていた姉も喜んで少し食べました。義兄のお弁当に入れられるからと、小分けにして冷凍を指示されました。
そして先日焼いたのが上のこれです。妻を亡くした義兄から、「お弁当用だけでなく、おばあちゃんも食べるから多めに焼いて」と頼まれました。ちょうどそこに現れた、甥っ子(賢太郎)が「おばあちゃんの味だ、僕の分も焼いて」と頼みます。おばあちゃんの味は、そのまま、妻の味、ママの味だったのでしょう。
焼けないけれど味見はできる母からOKが出るまで、どれだけ砂糖を加えたことか?!普段の私のものより、母の味はもっともっと甘いのです。ようやくタマゴと砂糖の割合が決定となり、にわか玉子焼き職人は30個焼き続けました。焦げる、焦げる、もう大変!
「この甘い玉子焼きがお弁当に入っていると、最後のデザートみたいで嬉しいんだよね~」と義兄。天国で姉も「ウンウン!」と笑っていることでしょう。