とうふ家

美味しい話題

何を食べるかで、その時の会話の内容も決まってくる、と思っています。先日、名水の地でのお豆腐料理のときは、話題も清々しいものでした。豆乳から始まり、3色の豆腐、あげ豆腐、豆乳雑炊など。お豆腐三昧を味わいながらの会話は、健康や心洗う旅、落語についてなど。脂っこいお肉や、魚をパクパク食べる食卓とは違う、清らかな内容でした。福岡県大刀洗町に行った際のことです。

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正確に言えばこのお店は大刀洗町ではなく、お隣の朝倉市秋月にあります。名前は「秋月とうふ家」。でもここのお豆腐は大刀洗に工場があり作っているとかで、では大刀洗名産?なのか??いずれにしても、お豆腐も水も美味しいのでした。

初めての土地に行って、最初に口にするものが大事だと思っていますが、今回はこのお茶と豆乳でした。唸るほどおいしい!大刀洗町役場の人が横で自慢げにしています。

出ましたお豆腐3種盛り。塩でいただくのが美味しい。いつも私が食べているスーパー豆腐の冷奴とは、全く別物です。

手作りのコンニャクも、ぷりぷり。お野菜を食べるマヨネーズは、油を使っていない豆乳製。どんぶり一杯食べられそうなさっぱり味です。

メインはこれ。豆乳に浮かぶ湯豆腐。あったかくて優しくて、、、。暑い日でしたが、するする入ります。飲み込むほどに、身体が綺麗になっていくみたい。

唯一の油ものはこのあげ豆腐。から揚げなので、なかは普通のお豆腐。しつこくありません。

湯豆腐のスープになんと珍しい「干し飯(ほしいい)」が入り、雑炊になりました。このお店では「糒(ほしい)」という昔の呼び方をしています。一度炊いたご飯を干したもの。昔の携帯食、いまでいえば非常食。ほんの短い時間で、カリカリ乾いていた「干し飯」がふやけ、スープをすって膨らんで雑炊になります。これに、手作りの赤い柚子胡椒をつけてすするのですが、途中で濃いお出しのスープのあんかけをとろりと掛けると、また味わいががらりと変わりました。

お店に入ってから「美味しい、美味しい」の連発なのですが、肉や魚といういわゆる前時代的なご馳走は出てきません。徹底したスローなご馳走の連続。そうなると、話の内容も違ってきます。「なんだか、都会の悪いものがこのお豆腐で流されて、善人になったみたい」と私。「そう、ここで食事すると、“ととのう”って感じなんです」と町の方。

「こういう物を食べて身体を整えれば、心も落ち着くし、そういう旅がしたい。観光よりも心鎮め、身体を整えたい、そういう人が多いと思うしこれから増える」と私。「デトックスのために来てほしいですね」と役場の方。「そういえば豆腐が出てくる落語がありましたね」「なんて落語だったか」今度はほかの方が落語文化の会話です。

お店の方と「干し飯」の作り方、柚子胡椒の作り方、豆乳マヨネーズの話やら、塩の話やら、器の話やら、炭入りの水の話やら・・・。健康と美味しさとの話は尽きません。これが脂ぎったステーキがドーンとか、お刺身の船盛が鎮座する宴会などでしたらどんな会話になったでしょう?

お店の名が「とうふ家」です。ここのように、どこのお家も身体にいい、手間をかけた、素朴な美味しさに満ちていたら、そのお家は清らかな会話があふれるのではと思ったのでした。我が家も「とうふ家」を目指しましょう。