ミツマタ群生

スローライフ運動

京都府綾部市、この5月に「スローライフ・フォーラムin綾部」が開かれる地。市街地から離れた、福井県境に近い老富(おいとみ)という山里を訪ねました。もともとミツマタとシャガの群生があったところに小道を整備したら、人が集まるように。ならば、「栃餅」も搗いて売ることに。ミツマタの香りに包まれて、鶯の声を聴く。大満足のひと時でした。

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綾部市街から西へ車で3~40分ほど走ります。途中で見える家々は大きな立派な屋根が多く、驚いていると、茅葺屋根をトタンなどで囲っているんだそうです。なかから見れば茅葺なのだそうです。

老富地区と言っても広い、そのなかの市茅野というところに「シャガ・ミツマタ群生地」と看板がありました。たったそれだけなのですが、皆さんご存知なんですね、駐車場に次々と車がとまります。

小道を森に向かうと協力金箱が。環境保全のための協力金200円!あああ、車に財布を置いてきた。ご案内の方に出していただきました。こういうのを払うと、この地を大事にしよう、気を付けて見せていただこう、という気になりますね。皆さんまじめに支払っています。

杉林の中を行く小道が、それこそ三又に分かれたところ、矢印を行くと、なるほどミツマタの樹が茂っていました。枝先にクリーム色の花をつけて、にぎやかで可愛い可愛い。かつて植えたミツマタが、特に利用されることなくそのままあったのだとか。地元の方には当たり前の場所だったのが、ここを「水源の里」と呼び、市役所が応援してくれるようになり、ボランティアの方々がここに階段や小道を整備、歩けるようにしたのだとか。

よく見ると、花はいくつもの花でできていて、構造は沈丁花に似ています。あ、そういえばミツマタは沈丁花科でしたっけ。そしてミツマタは確かお札を造る原料、これだけあるとどのくらいの紙ができるのでしょう。でも、今や、そうした材料にするよりも、こうして人が訪れて愛でる方がいい、今はそんな時代です。

花かんざしがたくさんあるみたいな、ミツマタの樹。差し込む光でできる影も可愛いです。よく見ると、樹の根元から少し上あたりで大きく曲がっている枝が多い。なかにはパックリと折れているものもある。「ここらは雪が降りますから、大雪の時にやられるんですよ」とご案内の方が教えてくださいます。それでもこれだけ咲いているのですから、強いですね。

こんなにたくさんのミツマタを見たのは初めての私です。甘く、ちょっと果実酒のような香りが満ちています。この香りで気持ちいいのでしょうか、鶯が鳴く、鳴く。姿を追うのですが、分からない。どこだろう?と思ってみていると、違う方から「ホ~ホケキョ♪」私が鶯にからかわれているみたい。このままずっとここに居れば、体中にミツマタの香りと、鶯の音色が沁みこんでいくことでしょう。

もとの道に戻りますと、もう一つの道はシャガの群生です。ここも同じく、もともとあった地元にとっては当たり前の場所。ここが人を呼ぶようになりました。光に葉が光って綺麗なのですが、どうもご案内の方々は憂鬱そう。

なぜか?なるほど、普段はもっと葉が茂っているのだそうです。よく見れば、葉は結構途中でちぎられたようになっていて、痛々しい。鹿の仕業でした。1メートルも雪が積もるところ、雪が解けたら鹿たちはシャガの新芽をワシワシと食べたのでしょうね。「今はこうでも、あとひと月もすれば花芽がが伸びて、綺麗に咲きますよ」と私。ところが地元の方いわく「葉よりも花芽が美味しいから、みんな食べられるね。あれらも生きなくちゃいけないから」

あら~~残念。例年通り、同じく咲くだろうと勝手に思うのは人間の勝手。鹿も、シャガもミツマタもそれぞれの事情を抱えているのでした。下の写真は看板にあったもの。こういうシャガ満開は今年は無理そう。鹿さん、来年は食べないでね~。

ミツマタとシャガでむらおこしができたここでは、とち餅なども作って、売店で売っています。カメラを持って宝塚、大阪、福井、地元市内、など高齢者からお若い方まで散策しています。花はいろんな層に愛されていいですね。

今後、途中どこかに、ミツマタやシャガについて学習できるポイントがあると、もっとありがたみが増すかもしれません。ミツマタの花言葉は「強靭」「壮健」、シャガは「友達が多い」とか。両方の花言葉から、おもしろい物語が紡げそうです。花を見て終わりにしないで、さらにここに来ると元気になるとか、友達が増えるとか、そんなストーリーを作りたくなりました。