春の雲仙で食べた物
「今年は牡蠣がよくできて安いんですよ。食べた家には翌日牡蠣殻がどっさり積まれてる」「アサリの“貝堀り”はいつからだっけ」「大きくて厚い刺身で、みんなびっくりするよ」「旬のイチゴをババロアにしたの」「伝統野菜の雲仙こぶ高菜のキムチ作りました」「さあ、レタスしゃぶしゃぶしよう!」美味しく食べた物には、いい会話といい人が必ずついてくるものです。今回もでした。
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今回長崎県雲仙市に訪れたのは3月8日~11日です。もちろん仕事ですが、私の仕事には必ず美味しいものがついてきます。うかがった日には雲仙でまちおこしをしている「雲仙人(くもせんにん)」のコアメンバーの方がご飯に付き合ってくださいました。ここで食べたのが牡蠣です。ジャガイモ農家の青年が、ごくごく普通に上手に殻を開けて、私の目の前に置いてくれます。「今年はとにかく安い」のだそうです。「牡蠣焼きした家には殻が一杯出る」「牡蠣焼き小屋じゃ1人バケツ一つくらい喰っちゃうよ」「そ、そんなに!」その殻は、オリーブ園の方が引き受けて、雨ざらしににして塩を抜き、砕いて畑に入れるとか。再利用ですね。
「雲仙人」はイベントを考える班と、自分たちが作ったものを詰め合わせる「雲仙人BOX」を考える班と二つに分かれて活動。イベントでは先日、ハタ(凧のコト)作りが行われ、「ハタ揚げしたら、大人の方が夢中になってた」「若い人がスタッフで来てくれて、助かったね」とかその催しの話が弾みます。「BOX班では、どんなものの詰め合わせがいいか調査したら、酒のおつまみだった」とか。昨年春まで、役所や私がお世話していた活動ですが、見事に市民主導で、自走し始めていることがわかります。なにより、バラバラに参加していた人たちが、“役員”として、私を駅まで迎えに来てくれて、夕飯も一緒してくれる。今まで行政がしていたことをしていることに嬉しかったのでした。
翌日訪ねた「雲仙人」の宿の一軒では、手作りのイチゴババロアをご馳走になりました。雲仙はイチゴの産地でもあります。「普通、下に敷くのはビスケットだけど、これはカステラなんです」と女将さん。カステラも地元の味ですものね。スイーツをいただきながら、定期的に行っているマルシェの話が出ました。頑張ってるんだ~。
「雲仙人の会」の会長がお昼に連れて行ってくださったのが、海鮮丼で知られるお店。そのお刺身の種類、大きさ、厚さにビックリです。ここのご主人は、お客様をお刺身でびっくりさせるのが好きらしい。「食べきれない?ああ、しょうがないな。(笑)たいていみんな、もうしばらくは刺身はいらないなんて言うよ(笑)東京じゃ倍の値段だろうね」食べても食べてもお刺身が出てくる丼にノックアウトされた東京者の私ですが、横で、会長は完食!この空のどんぶりに驚いたのでした。
田舎の人は、都会人を驚かせることが好きらしい。こういう土地では、人間力で最初から東京者などは負けています。そんな私を癒してくれたのがスコーンと紅茶。
カフェスローという店名に、スローライフ運動をしている私としては嬉しくなってしまいました。地方にはいいカフェがなかなかありません。もちろん“スタバ”なんてのが身近にあるわけじゃない。飲み喰いではなくて“ひと時を過ごす”場がなかなかありません。ここではホッとしました。でも、都会にカフェがたくさんあるのは、癒されたい欲求がみんなにあるからなのかも。逆に、地方では、カフェでなくても、景色や豊かな自然、家の縁側などで、充分癒されているのかもしれないです。
一応仕事で行ったのでして、「雲仙人」の皆さんを研修などしました。この時、会長さんが差し入れしたのが、「狸山饅頭」という名物。国見町のサッカーと言えば全国的に知られていますが、そのサッカー部出身の方が作っているお饅頭で、このお店へ通ずる道を今もサッカー部は走っているのでした。春夏はかき氷でも行列ができます。土産物店では買えない、美味しいお饅頭。研修中でも、軽くていくつも食べられます。
翌日のお昼です。チャンポンか皿うどんか?迷って、揚げ細麺の皿うどんににしました。お隣では太麺です。黙々と食べるひと時ですが、これがいい。その土地に行ったら必ず食べる顔になる料理があるというのはいいですね。ぶらりと入った観光っぽい女性一人も、チャンポンを黙々と食べていました。
「雲仙人」のご案内で、あちこちの「雲仙人」に会って、最後にたどり着いたのが、「雲仙人の会」事務局をしている女性のお家。彼女は古民家で暮らし始めている移住者です。そこで彼女の育てた地域野菜「雲仙こぶ高菜」というコブのある高菜のキムチが出てきました。雲仙では在来種の伝統野菜を守り育てる動きが活発です。その中のひとつこぶ高菜は普通、塩漬けですが、彼女は浅漬けにしてさらにキムチにしたのです。伝統野菜を大事にしたいという気持ちが伝わってきます。お土産にもいただきました。
そして、昼間にうかがったレタス畑でいただいた、レタスのしゃぶしゃぶです。生で丸かじり体験をした私は、このレタスに思い入れがあります。お肉よりもレタス、サッと出しにくぐらせて、シャキシャキシャキ。育てている「雲仙人」のレタス農家青年の顔が浮かんだのでした。美味しいレタスをもっと都会で多量に食べよう、無農薬なら高くてもいいとつくづく思います。
食卓には同じく昼間訪ねた「雲仙人」アスパラ農家からいただいたアスパラも並びました。つけるのは「雲仙人」の宿ののご主人自慢の豆腐の味噌漬けです。マヨネーズよりもアスパラがぐっと大人の味になりました。女将さんが「わあ、持ってきて良かった」と笑います。ビールはなんと、和歌山県紀の川市からとどいた八朔のビール、雲仙の女性たちが「ほろ苦くておいしいね、珍しい味」と味わいます。口の中で地域が交流していました。
何種類のものを食べたでしょう、何人の人と話したでしょう、それぞれ2~30じゃききません。お腹も、頭も、心もいっぱいになりました。しかもそれが良いこと良いものばかり、だから嬉しいのです。こういう土地は大事にしたい、日本の財産だと思います。帰りに寄った直売所、ここで地元の一人暮らしの高齢者が買いに来る、おかずセットを買いました。今夜のうちのおかずです。地元のおばちゃんたちが作る安心の手作りおかず、これを東京にいる夫へ雲仙の味としてお土産にしました。