蚕曰く、“密”には換気と。

ちょっとしたこと

久しぶりに群馬県富岡市に行くと、駅前に「群馬県立世界遺産センター」が開設していました。世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」が分かりやすく展示されています。シアターで、映像を見ていて驚きました。蚕の大量生産で大事なのは“換気”であることが1800年代終わりに発見され、飼育法が確立されています。“密”には“換気”と、改めてお蚕さんから教わりました。

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上信電鉄「上州富岡」の駅前に、6月にできたばかりだそうです。今までなら、即、富岡製糸場へ行くことになったのでしょうが、ここでいろいろ予習ができるようになりました。

入口に咲く“まゆ”の花。圧倒される美しさ!「写真いいですか?」とうかがうと、「どうぞどうぞ」と。入場無料、撮影OKがありがたい。そうですよね、今時、撮影禁止にするより、どんどんSNSで発信してもらった方がいいわけですもの。

子連れのお母さんもいたりして、なかなかくつろげる空間。座るところがたくさんあるのもうれしいです。

110年前は倉庫だった建物だそうで、当時のレンガの壁がそのまま活かされています。この壁に誰かが触っている。当時の富岡はどんなふうに絹で栄えていたのだろう?レンガから教えてもらいたくなります。

蚕は実際に、こんな風に糸をはり、繭になっていくそうです。「これ、上手くできていますね~」と感心。でも、最近の若者は繭など見たことがないので、「これ本物ですか?」という声が上がるとか。モスラじゃないんだから・・(笑)

シアターをゆっくり鑑賞できました。蚕を大量に飼育して、絹糸を増産していくその歴史がよくわかります。室内で生き物に餌をやり、大量に育てるのですから昔は火鉢を入れて蚕が凍えないように温度管理をしたのだそうです。

さらに大事に考えられたのが換気。蚕を飼う家の天井近くには大きな窓を作り、いつも新鮮な空気が流れるようにした。通風と温度管理を調和させた「清温育」という蚕の飼育法が確立されて、養蚕は広まっていったそうです。

そうなんだ!たくさんの蚕を健康に飼うためには換気なのだ、と改めて認識しました。かつてこの話を聞いたときはあまり実感がなかったのですが、今、このコロナ禍で“換気”の重要性に納得がいきます。密になれば換気が必要、それを怠っていれば蚕は全滅。いま私たちは、蚕と同じ立場です。

窓の開かない高層マンション、窓のない地下のお店、満員電車、みんな素朴に“いやだな”と思うのは、生きものとして当然の反応だったんですね。

「富岡製糸場」「田島弥平旧宅」「高山社跡」「荒船風穴」四つの資産から構成されるこの世界遺産、じっくり全体を学べば、もっともっと現代の私たちへのメッセージをくみ取ることができるはずです。