五輪が開会して

ちょっとしたこと

炎天下、ブルーインパルスを見上げた日は、夜中までヘリコプターの音が響いていました。翌日、人手の様子を撮影する夫のお供で国立競技場に行くと、本当に混んでいます。みんな汗だくマスクで、2020と描かれた建物や大きな五輪オブジェで記念写真。ものに憑かれて、行進しているようにも見えます。私も含め、感染拡大と経済の混乱という現実を、一瞬でも、忘れたいのでしょう。

買い物に出たら、飛行機雲?あ、今日、飛ぶんだ!と思って見回すと空を見上げる人ばかりです。

驚いているうちに爆音とともに、きました。ブルーインパルス!なんだか興奮します。

誰もが空を撮っているのが面白い。

その後、即、誰かに送るのか、インスタか、Facebookか?スマホに夢中。

どこから乗ってきたのか、人力車でブルーインパルス見物の人もいました。

なんだか、とうとう始まっちゃったなあ~という夜。開会式など見る気はありません。頭の上をブ~~~~~ン、ブ~~~~~~~~~~~~~~~ンと、ヘリコプター。夜中まで飛んでいます。

一夜明けて、国立競技場周りの撮影をしたいという夫について行った千駄ヶ谷駅前。降りてすぐにハンガーストライキ中の人、やめなさいと説得しているように見える外国人。その横で、日焼けした若者ボランティア、見物に来た女の子たち。様々な立ち位置で、人々がいます。

わが夫婦もある意味見物観光客なのでしょう。このご夫婦はどこからいらしたのか?昨夜の開会式を見て、一目見たいとやってきた?

そういう人たちの群れ。続々と、黙々と、ツアー客のようです。

とにかくみんな写真を撮る。入れないけどそこに立った、行ってきた、見てきた、というのが大事なのでしょう。

その様子をレポートしている外国メディア。「入れない競技場を見物に、たくさん人が来ている!」これは確かに報道ネタかもしれません。

突然建てられている二階建ての茶室。建築家・藤森照信さんの“意欲的な作品”ですが、こんなコロナ禍で、無観客で、不賛成な五輪のなかで、なんだか陳腐にみえます。しかも予約制。

建物を撮った人たちがゾロゾロと目指すのは、少し離れた五輪のオブジェです。ボランティアの人に行き方を聞くと「見たことはないですが、あのビルの下あたりらしいです」とのこと。

近くのコンビニでおつまみとビールを買って、五輪ムードを感じながら一杯やりたくなのでしょう。わかります。私もアイスキャンディ―を買って、イートインで食べました。

これがテレビで見るあの五輪?!近寄れないほどの人です。「みんなドケ~、邪魔だ~」と叫んでカメラを構えているおじさんもいます。そのおじさんを撮っている人もいます。そしてここから皆が動かない。まどろみ、眺め、ウロウロしている。

おばさん3人組が、熊本県警の方にお礼を言っていました。聞けば「トイレに行きたくて、どこにもなくて、困ってて。千駄ヶ谷の駅近くの交番近くにあると教えてもらって、ほんとに助かったの」これだけの人が来ても、そんな前提でトイレの設備はありませんから、皆が困っているのでした。おばさんたちは吉祥寺から誘い合って見物に来たとか。

関西の言葉やら、外国語やらが飛び交う五輪前です。この盛り上がりは何なのでしょう。

はしゃいで騒いで、数日後、我にかえったとき、待っているのは感染と貧困です。オリンピックとは、しばらくみんなで見る、幻なのかもしれません。