新しく見る
岡山県新見市へ行ってきました。古い町並みや建物、路地が残るいい街です。
昔の食器、料亭の造りなどを解説していただきながら見学すると、そのデザインや機能、昔の人の遊び心などに驚きます。
今の時代こういうことが必要なのでは?古さの中に新しい暮らし方を発見できた思いでした。
“新見”とは、新しい見方ができるところ、新しさを見出せるところ、ということなのですね。
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新見は江戸・元禄時代につくられた町。今は人口3万人。ピオーネや千屋牛でも知られています。また、石灰の産地でも。
出かける前に送られてきたのは「にいみ世間遺産まち歩き」のマップ。
“世間遺産”?と首をひねりながら見ると、2軒の家に挟まれた小さな倉庫「サンドイッチハウス」とか、屋根の上に植木鉢がずらりと並んだ印鑑屋さんの「空中庭園」、本やラケットのモチーフで作られた「手すり看板」、「手描きのなまこ壁」なんて、とにかくクスッと笑いたくなる身近な遺産が網羅されています。
要は、古いものなどを面白い、いいなあ、という視点で見る土地なのだと理解しました。
昔の中心街・御殿町に行くと、いよいよ景色は昔のまちミュージアム風になります。
なかに入ると、室内に水路が流れている。冷気が通ります。
今、こんな工夫のある家を建てたら、どんなに素敵でしょう。水音と、共に暮らせる。これこそ潤いのある暮らしです。
昭和30年くらいまで料亭だったという「松葉」に案内されました。
わあ、、この路地がたまらない。都会のレストランひしめくファッションビルの入り口には、こんな風情はありません。
入口の飾りガラス。お客様や芸妓さんなど、キラキラ輝きながら迎えてきたのでしょう。
職人さんの丁寧な仕事でどこまでも整えられていて、わが身を技で包まれていく印象です。
足元の曇りガラスに松の柄。粋ですね。
こういうことが分かる、大人たちの世界だったわけです。今どきのおじさん達に、この粋が分かるのでしょうか?ただ酔っぱらて、このガラスを割りそうですね。
使われていた食器。氷の水を切れるようになっている刺身皿。
こんな機能的でいい感じの食器が、ずらりと残っています。
可愛い徳利。こういうのでお酌をし、盃洗を使い、返杯を。ああ、そういうちゃんとした宴会をしてみたい。
「まず、生~!」と叫び。その後、ギンギンに冷えた焼酎サワー。枝豆の皮を飛ばしながら、大騒ぎ。しかも一皿300円のつまみの店を探して、男女がきっちり割りカンで。
ドライな暮らしもいいですが、我々はもう少ししっとりしなくてはいけませんね。
箸置きも、お猪口もたくさん展示されていて、これらを使って大人の宴をしたくなります。
というか、そういう時間の過ごし方のお稽古をしなくては・・・なのです。
百円均一の食器を使い、量販店の家具に囲まれ、発泡酒を飲み、ゲームをしながらゴロゴロしている。そんな暮らしが、はたして進んだ文化・文明なのでしょうか。
究極はこれ、「携帯燗風呂」。銅製の携帯お燗装置。左に小さな火種を入れて、右にはお酒を。
左右を繋ぐ部分から左側は二重構造になっていて、注ぐときにはお燗ができているという仕組み。
これを持って花見や野遊びに。そして俳句でもひとつ。そして誰かが都都逸などうなりだす。それぞれが芸を持っていて、座を盛り上げる。広げたゴザの上で、卵焼きや蒲鉾など食べながら
今の、やたら真黒に焦げた肉をほおばる屋外のバーベキューなるものと、質が違います。
昔の道具たちは、「あなたたちはこういう豊かさを捨ててしまったでしょう!」という言葉を突き付けます。
「これからも、そんな暮らしをしてていいのですか。みんなが下を向いてスマホばかり見ていて、それで未来は築けるのですか?」と問いかけます。
昔戻りが正解とは言いませんが、そこに発見する知らない文化、ある意味新しいと受け止められる価値観を、私たちは素直に受け止めるべきでしょう
昼食に「タカキビ」のお餅が入ったけんちん汁をいただきました。珍しい赤紫の色、風味ある穏やかな旨みです。
古いけれども新しい、それを発見した新見。このキビ粉でニョッキ風の料理を作りましょうか。"