東京半分・地方半分

ちょっとしたこと

都内在住ですが、月の半分は地方に出かけます。行った先では土地の人を訪ね、様々な体験をし、何日かして帰るときには毎回大荷物で帰ります。

お土産というより、その土地の暮らしそのままを持ち帰る感じ。男性は仕事だけであっさり帰りますが、女性は違う。

結果、東京でも地方の生活文化を半分抱えて暮らしています。おかげで地方のことをいつも考え、心と身体が健康でいられます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

観光で訪ねるのではなく、仕事で地方に行くのではありますが、何日もいると、暮らしている感覚になります。だから風光明媚なところでなく、日常のふとした景色がいいなあと思えます。

朝、仕事場に向かうときに渡る小さな川。「あ、今日もサギがいる。水がキラキラしてきれい」なんて思いながら、深呼吸です。

道ばたの庚申さんに花が上がっている。造花じゃない花です。誰かがちゃんと世話をしているんだ。

河原にどんど焼きの用意がある。明日燃すのかなあ~。

おばさんが犬とお散歩。堤の上を毎日歩くんだろうな~。のどかだなあ。

あ、水に鯉がいる。水草がきれい。

あ、旅館の女将さんがお掃除。自分の家の前だけじゃないんだ。通りのずっと向こうまで、丁寧に掃いている。みんながそうだからこの通りきれいなんだ。

向かいのお豆腐屋さん、朝早くから働いて、いま少しほっとしている時間みたい。

こんな風な時間を過ごすと、私の身体に溜まった東京のアクが消えていくように思います。

新宿区のうちの近くにキラキラ輝く流れはあったでしょうか?そこに悠然とサギはいたでしょうか?

庚申さん自体がない、花を活けて世話をする人はもっといない。

どんど焼きをする河原がない、する人もいない。犬の散歩はもっぱらアスファルトの上、あちこち糞だらけ、犬も人も深呼吸などできません。

東京で道をお掃除するのは誰でしょう?煙草のポイ捨ては相変わらず、街路樹の下にはペットボトル。夜は酔っ払いがさらに道を汚します。

地方にある日常が、まっとうな人の暮らしが東京にはない。だからそれに感動し、私の心が清らかになって行くのです。

これは単純な観光ではない、浄化の時間です。だからそこで知り合った人とは、清らかな関係になれる。そこで知った味は持ち帰って、夫にも食べさせたいと思うわけです。


今回過ごしていたのは、おなじみの雲仙市。国見町で4泊5日でした。

会う人ごとに仲良くなって、前に会った人とはもう親戚みたいになって、だから「これ持って行って~」なんてものが集まります。

けっして市販のおみやげ品ではないものたち。そして、私がもう2年通ってきている中で覚えた、この地の人が普段食べている美味しいものたち。

キャリーバックが閉じるかどうかぎりぎりの量、持ち上げるのにやっとの重さです。

「ゴードーフ」は呉豆腐、豆乳を葛やでんぷんで固めたもの。ぷるぷるで美味しくて、長崎県や佐賀にもあるそうです。スーパーで売っているのを、買ってきました。

雲仙ハムは、地元の人から熱烈な支持のあるソーセージ。お弁当にも入れるし、晩酌にも食べるし、地元の焼き肉屋さんでも出てきます。夫の好物です。

ギンナンをここまで綺麗にするのがどんなに大変か!それを惜しみなく「持ってって」といわれると、こちらお遠慮しません。

直売コーナーで買った「わかめ菜」。サッとゆでるとシャキシャキとわかめのような食感で美味しい。

これも地元の人に教わったもの。


おかず納豆とかもろみ納豆とかいうなめ味噌と、鯖の水煮缶を煎り付けたもの。

私はスーパーフードと呼んでいます。とにかく美味しいし、栄養がある。これは売っていません。さっき通りをはいていた女将さんのお宿のご主人(ムーミンというあだ名)の発明。


ザボンはバラのたくさん植わったお庭と菜園の世話にに忙しいあの方からのプレゼント。彼女の二胡の演奏を今度は聴かせてもらおう。

これらの物がなくなるまで、口に入れるたびに私の暮らしは地方に戻る、あの人を思い出す、心があの地へとなびくのです。

観光でも、定住でもない地方との付き合い方。私はたまたま、仕事の延長でこういう関係ができますが、皆が機会あれば「半分地方」の暮らし方を、望んでいるのではないでしょうか?

東京人は地方に憧れ、地方の人は都会人に地方の良さをおすそ分けしてもいいよ、という気になっている。

いきなり月の半分本当に地方に移動しなくても、別荘など持たなくても、常に地方と生きている気持ちになることから始めたらどうでしょう?食べ物から始めることでできます。

地元の食べものなどに興味のないおじさん方には無理でも、私のような食いしん坊おばさんにはすぐにできることです。地方の物を食べる、の次は、その延長で、産地の畑を訪ねて手伝ったり、その地の行事のある時は泊まりに行ったり、年に何度も訪ねるようになっていけます。

東西南北にそういう関係のある個性的な土地ができれば、なんて楽しいでしょうか。

「半分地方」の暮らし方を皆が実践できるように、今年は知恵を出していきましょう。"