白石集落の蕎麦
岩手県山田町、大きな震災被害のあったまち。そばでむらおこしをしている白石集落を訪ねました。
「そばづくり全部体験」という全5回の体験の一つ、そばの刈り取りに参加しました。
汗だくで刈っても、束ねるとわずかばかり、実となるとほんの少しでしょう。そば一人前の粉を取るには大変な道のりです。
白石のそばは、都会の老舗高級そばとは違う世界、さまざま教えてくれるそばでした。
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いま、山田へ行くには、盛岡、宮古経由で、バス・車での移動です。鐡道の開通は何時になることやら。
震災後も、最近も、がけ崩れや台風など、これでもかと災害が襲ってくる印象です。
まちに入ると、どこもかもが工事現場。高層の復興住宅や、そびえる堤防、道路、商業施設の工事、公共施設の工事、工事。
まだまだつらい現実があり、多くの皆さんが仮設住宅に暮らしておいでです。
そんななか海側から、山の方にしばらく行ったところにある、白石(しろいし)集落は、震災以前、10年ほど前から休耕田でそばを作っています。
なだらかな稜線、中山間地の里山風景の中に、そば畑?らしきものが広がっていました。
なるほど、花が咲いていればともかく、素人目にはそばがどこにあるのやらなかなか判別できません。
道沿いにあるのが、水車と加工所。白石のむらおこしの活動拠点になっています。
「白石そばづくり全部体験」という催しですから、これまでに、①種まき、②そばのお花見が行われ、この日の③収穫、
そして今後④スイーツづくり⑤十割そば手打ち体験が予定されています。
そば打ち体験だけはよくありますが、ここまで全部というのは珍しいですね。
集落のお母さんたちがご挨拶。14~5人の参加者は、鎌を片手にヤル気満々。
さて、刈り始めました。草取りが間に合わなあったとかで、そばはボウボウに茂った草の中に混じって生えています。
草を抜き、そばを刈り。あ、と気が付けば、そばを踏みつけ。こんがらかりながら、せっかくの実をこそげ落としたりのそば収穫。
そばだけを寄せてみれば、なんとなく実がたくさんあるように見えますが、これを粉にしたとして、何人分になるのか?
もちろんこの日だけでは刈れないくらい、そば畑はあるので結果多くは採れるのでしょうが、普段食べているそば一枚がどれほどの作業の先にあるものなのか!が感じ取れたのでした。
秋の小川がサラサラ流れる横を、そば刈り隊はのどかに次の畑に移動していきます。
作業の間、歩く間に、初めて同士がいろいろおしゃべり。そば友達というか、仲間というか。そんな気持ちが育っていきました。
ふと見ると、私たちそば刈り隊が汗だくで刈ったくらいの畑を、地元のおばあちゃん二人がサクサクと刈りあげています。
しかも美しく。さすがプロの仕事だと思いました。
水車に戻ってのお昼ご飯。おむすびと煮しめと、漬物、天ぷら。おいしいおいしい。
「そばが好きなんでね、とにかく最初から最後までやってみたかった」と中年の男性。
「こっちの暮らしはいいですよ。皆さん親切で。こういうことも楽しめるし」と、ご夫婦で移住したしてきた方。おしゃべりが広がります。次回のスイーツ作りも楽しみになってきました。
そばは一つの手段、そばを通して仲間が出来たり、地元を知ったり、風景を楽しんだり、深呼吸したり、汗をかいたり、昔を知ったり。
高級店のおそばにはない、他の美味しさが大盛りの白石そばなのです。
この体験とは別に、夜、集落での集まりがありました。その時、かわいい温いそばが出ました。
細ーく切られた、上品なおそばとは違う、お母さん風のそばです。
なんだか、ほっこりする味。老舗のおそばは向き合うと多少緊張感が走りますが、ここのはくつろぎのそばとでも言いましょうか。
白石の風土や人柄が、そのままそばには出るのかもしれません。
さあ、このそばを核に、どんなむらおこしを展開していくのか。粉をこねて、形にして、さいごは皆を笑顔にする。
そのそば作りの技を、むらおこしにも活かしましょう。のどかに、そぼくに、ゆったりと、お母さんパワーを繋ぎに。
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