移住促進

お仕事で

鹿児島県主催の「かごしま移住・交流促進対策会議」で、市町村担当者の方々へむけてワークショップをしてきました。

皆さん、わがまちにぜひ来てほしい、という思いでそれぞれに悩んでおいでです。

移住促進活動の上で大事なことは何か?みんなで考えると、なるほどというキイワードが出てきました。要は、人口だけ増やせばいい、というわけではないのですね。

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この日はまず移住者の経験談があり、その後に私のワーショップとなりました。

屋久島にかなり前に移住された方は、「当時、島に1年以上住んでいる人でないと町営住宅に入れなかった」と語りました。
その後すぐに改善されたそうですが、かつてはそんなこともあったわけです。

それまでのコンビニ業をきっぱりやめて、トマトなどの農業を始めた方は、「助成金など頼らずに自分で仕事を作るハラが座ってなくちゃダメ」と語りました。そして、「農家としてやっていけるまで、周囲の方々がいろいろ教えてくれて助かった」とも。

今や全国で、人の取り合いのように、移住促進を進めています。即、助成金と空き家と仕事の斡旋だけに走りがちですが、それよりももっと大事な事々があるのではと思いました。

<移住・交流促進のために>というワークショップでまずはこんな話をしました。この日は市町村の移住・交流担当者の方々なので、なぜ、移住が必要かという話は置き、普段の実務における話です。

①「鹿児島全体を意識しよう」
どこかに移り住みたいという人は○○県の▽▽町と最初から、ピンポイントでは考えません。県全体の魅力が語れないと、
「他は知りませんが」では通らないでしょう。

②「自分は地元のここが好き!を誇りを持って語ろう」
以前、私が東京からある田舎に移った時「こんなところによく来たね」といわれました。担当者の方が「ここより、東京の方がいいに決まってる」と思っているとそれは伝わります。何でもいいので、自分の土地のここに惚れているということ語りましょう。蛍でも、名物でも。いきなり不動産屋さんみたいな話では・・。

③「新しいライフスタイルにいつもアンテナを」
大きな空き家の天井裏を「物置」というか「ロフト」と捉えるかで、夢の膨らみ方が違います。結婚している女性を「嫁さん」と呼んだ時に、都会の女性は何か違和感をもつことなど知らないと。

④「マイナス要素もはっきり伝えよう」
例えば、天井からムカデは落ちてくる、カメムシは布団の中まで入ってくる、網戸を開けたら虫だらけ、なんてことも伝えないと。その虫がいるような土地だから、美味しい野菜も食べられるわけですから。

⑤「外への呼びかけと同じパワーで、住民の交流心を育てよう」
「自分たちの土地に、他所の人の力が必要なんだ。新しい人と、一緒にやて行こう」という地元の考えが育っていないと、なかなかうまくいきません。私の関わる土地では、まず他所の人が集落内の道を散歩することを受け入れ、他所の人に触れる機会を作り、その後にようやく受入心が育ってきました。

⑥「完璧を求めない、小さな多様な仕事でいい、リニューアル済みでなくていい」
フルタイムで働く就職先があれば、そもそも人口減少などないわけです。でも、移住者も地元ももう少し目を開くと、小さな仕事はいろいろあります。それに、田舎で暮らすのに、都会ほどのお金はいりません。小さな様々な仕事をあちこちに顔を出してして行くうちに、知り合いも増えます。「仕事」の捉え方を変えていかないと。

空き家も完璧に綺麗にしなくとも、地元の大工さんと一緒にリフォームする手作り時間を楽しむ、と視点を変えましょう。

⑦「人口を増やすのではなく、共に暮らす仲間をつくろう」
人の数だけ増えればいいのか?空き家と職があればそれでいいのか?移住希望者と地元がお互い仲間になっていかないと。どんな暮らしをどんな人たちとしていきたいのか、何処に暮らす、以前にそこを個々人が考えるべきでしょう。

       

こんな話をしていると、移住・交流という課題は、私たちに生きるとは、暮らしとは、地域とはなど、様々な問いかけを突き付けます。そういう意味ではとても良い機会提供にもなっているわけです。

私の後に、参加者が自分たちだったらどんなことが大事かを考えるグループワークをしました。自分の思うことを書き出して、それを皆で寄せ整理して、各テーブルでこれだ!ということを3つ決めて発表です。

駆け足でしたが、なるほどという言葉が出てきました。

「地域をよく知る」「目線を変える」「一度実際に来てもらう」「言葉の荒々しさ」「まちの特徴を強みにする」「まち全体のWi-Fi化」「一か月の生活費を伝える」「地域の気になるお店にまず行く」他にも「地元をトコトン歩く」「集落すべてに入り飲む」などの言葉も出てきました。

なるほど、“地元をよく知る”はまずもって大事でしょう。東京で移住相談の窓口にたつ女性からは「幼稚園でママ友とのお付き合いの程度は」なんて質問もあると話がありました。

地元の空き家や仕事を把握しても、生活・暮らしの範囲もしっかりわかっていないと。“知る”の範囲は広いのです。気になるお店などに足を運ぶなども、地元の人の言葉の荒々しさも怒っているのではなく素朴な表現であるという理解も、汲み取り料金がいくらくらいかも、なのです。

県のパンフレットには流しそうめんを楽しむ子供たちの様子の写真が。こういう暮らしができますよと、暮らし情報を具体的に伝えないと。

“地元の理解”を進めるためにまず集落で飲んだり、マッチングするように配慮したりも。実はここが一番大切と私は思っています。

先に書いた私が通う集落では、数年がかりで受入の心を育てています。今も毎月寄合を続けて、移住者受入に向けてのアイディアを集落の人たちが語り合い、具体的に動いています。

この両方があって、初めて新しい人はやってくるのでしょう。その地元の努力が感じ取れないような移住者は、地元の方からお断りくらいでいいと思います。

今回の研修機会をいただいて感じたのは、移住・交流担当者同士の交流がもっと必要だということです。参加した方から「他の町の同じ立場の人と知りあえて良かった」とメールをいただきました。隣町と人の奪い合いをするのではなく、連携して悩みを打ち明けて、移住・交流を進めていくべきです。

もう一つは、こうした研修機会は、住民にも必要だということ。いくら行政だけが張り切っても「よそ者なんて入れたくないよ」という集落なら困ります。よその人を受け入れるということは、自分たちの幸せにどうつながるのかを自分たちでつかめるように、何度も話し合う場が必要でしょう。

帰りにながめた鹿児島中央駅の観覧車、小さな市町村が手を繋ぎ合って、大きな鹿児島県をゆっくり変えていく、そんな象徴に見えました。