女城主のおもてなし
岐阜県恵那市岩村町、昔、女性の城主が治めた城下町。駅には「女城主の里」の看板があります。
古い町並み歩くと、細やかなおもてなしを感じました。
なだらかな坂道のあちこちに杖が置かれている。通りに面した家には、鉢花や生け花が。ベンチやイスもがあちこちに。
目配り気配りのある女城主が、今も町を守っているように錯覚します。住民の皆さんの、おもてなし力ですね。
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合併して恵那市になった岩村町。今回初めてうかがいました。岐阜と恵那に用があり、一泊する宿をたまたま、空き家利用のゲストハウスにしたのです。
岩村の「やなぎ屋」という名の宿。もとは染め物工場だったとか、この春に再生してゲストハウスとして動き始めています。
古い町並みにぴったりの名前幕を入ると、もとはたたきだったところでしょう、白木で床が張られ、フロントらしくなっています。
奥には、洗濯機や冷蔵庫、普通の台所が。自炊しな何日も泊まれるようになっています。一泊なんてもったいない~!
談話室やシャワールーム、中庭も。
2段ベッドもありますが、この日は6畳に地域おこし協力隊の女子と二人で。
シーツを自分で掛けて、布団を敷いて。ご飯は外に食べに出て。戻れば、談話室で他のお客様とお酒。
急に若返った気分。こういう、さらっとした泊まり方も心地良いですね。
翌朝、岩村のまちをぶらつきました。朝ごはんに出かける前のほんの1時間ですが。
町並みに朝がやってきていました。お線香の匂い。新聞を取りに出てくるパジャマ姿のおじさん。花にヤカンで水やりをするおばさん。
まだ早いからでしょう、通りを歩く人はいませんが、今日の暮らしが始まっています。
あら?杖です。緩い坂道のまちにあわせてでしょうか、あそこにも、ここにも、杖たてが。
めずらしい、節が狭まってごつごつした「布袋竹」の杖。表示のコピーがいいです。『歴史のまち岩村へ お待ちしておりました』杖は自由に使って、どこかの杖たてに返す仕組み。
ベンチも目立ちます。ここは木工店の店先。普通のお家にも、小さなイスが軒先に出され、どの家からも「どうぞお休みください」と言われているようです。
花も。家々の花入れに、さらりと活けてある。
盆栽を並べる家、今や見ごろのアジサイの鉢を並べる家、様々な鉢が並んでお家の方が楽しんでいる様子がうかがえるお宅。
ショウウインドウは売るための場ではなく、道行く人をくつろがせる装置。
歩く人を意識して、出迎えてくれているのがよく分かります。
「おはようございます。花が綺麗ですねえ」とご挨拶。「うちなんて少しばかり、もっと綺麗なうちがあるよ」とご謙遜。
女性たちの観光ガイドさんもいるらしい。“せんしょ隊”(地元でおせっかいの意味)のれんが下がっていました。専門性の高いガイドというよりも、女性ならではの楽しいおしゃべりが主のようです。今度お願いしたいなあ~。
古いマネキンや、古い看板、古い路地や、古い家。どれもが、なんとなく懐かしく、人が住んでいるからでしょうか、古くさいという感じはありません。
古いなりに、生活感が息づいているまちです。どこにいても水の流れる音がする、「女城主」というお酒を造る酒屋もある水の清らかなまちでもあります。
恵那駅から明智鉄道という路線があり、かわいい一両の電車が1時間に1本走っています。1時間の旅、企画電車もあり、楽しそうです。次回はこの電車に乗りましょう。
なぜか、ここはカステラが名物です。カステラ好きの女城主などが目に浮かびますが、江戸時代に長崎からその製法が伝わったとか。
朝早いのに、もう工場は動き出していました。可愛い、素朴な表情のカステラです。
さあ、朝ごはんに行きましょう。その前に、富田地区の“日本一の農村景観”という展望台に。
まあ、のびやかな、さわやかで、のどかな暮らしのある風景。優しい澄んだ空気が、指先まで行き渡るようです。
250年前の民家「神谷家」というところ。書家の方のギャラリー喫茶、モーニングもランチもあります。
玉子サンドかおにぎりかを選べて実に安い。お母さんが子どもを思って作ってくれる朝ごはんのような感じです。名産の寒天もあって、ヘルシー。
巨大な観光地で、名旅館で、豪華な晩餐をいただく。観光施設で遊ぶ。いわゆる名勝を眺める。
そういう観光もいいですが、岩村のように、かわいらしい、肩に力を入れていないおもてなしが、最近は好きです。
女性的なもてなしと言いましょうか、ハードに頼らず、できる範囲で、ささやかにというか。
現代の女城主がどこかにおいでになり、岩村流のおもてなしをプロデュースしているのではと思えるまちです。
町民の方々が、何が正しいかをしっかりわかっていて、女城主の里にふさわしいおもてなしを、きちんと物差しを当てながら続けているに違いありません。
駅にあった看板です。岩村の偉人たち。日本の孔子といわれた幕末の大儒学者:佐藤一斎、女子教育の先駆者・歌人:下田歌子、植物学者で天然記念物保護を提唱した:三好 学。
そういえば、まちのあちこちに佐藤一斎の名言が。このまちの人は、一斎の教えに学び、女性視点で、自然を大切に一体となって、と、知らず知らずに偉人たちの極めた道筋を、歩んでいるのかもしれません。
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