プチ・ミュージアム

ゆとりある記

和歌山県田辺市の「秋津野ガルテン」は古い木造校舎利用の都市と農村の交流施設、ガルテンとはドイツ語で庭のこと。

ここで私が気に入ったのは「ミカン資料教室」、手作りの小さなミカン・ミュージアムです。

農具や昔の畑の写真、子どもの絵など、家にあったものをついさっき展示しました、という素人っぽさが親しめます。こういう展示手法でいろいろなミュージアムを作りたいなあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「秋津野ガルテン」については、ホームページをご覧いただければ詳しくあります。少しお年を召した方には等しく懐かしい木造校舎。


長い木の廊下に教室が連なり、今は、その一つ一つが視察対応のお部屋だったり、調理室だったり。

「ミカン資料教室」はその2階にありました。廊下にいきなり昔のミカンづくりの農具が並びます。


ご挨拶文によるとこの展示は、地元のミカン農家の有志が作ってきたようです。

「公的な団体でもなく、一人一人が農作業の合い間に作成してきましたので、専門的な観点から見て、思い違いや不備な点がございましたらご指摘いただければ幸いです。・・・紀南晩柑同志会」とあります。


そういう素人展示でも、ミカンのことを伝えようという思いは伝わります。そして、「へえ、なるほど」という学習や発見が沢山あります。

あまりに身近なために知っているつもりになっているミカンですが、種類だけでもすごい!そして、はるか昔からある!


ミカンの樹は、ほとんど接ぎ木で増やされる。なんてことも、都市住民は知りません。黒板に丁寧に解説がしてあります。


「採りぼっつり」・・・なんて可愛い名前でしょう。ミカンを収穫するときの樹に吊るしておくかごだそうです。プラスチック文化になる前は、なんでも竹。だから皆が竹かごを作れたし、竹やぶも手入れされていたことになります。


小学4年生の男の子による、柑橘類の葉っぱの研究。まあ、すべて実物が押し葉で収集され、詳しく観察が書かれています。この研究をまとめた子は、今、いくつでどんな仕事をしているのでしょう?会いたくなってしまいます。


各家のアルバムからはがしてきたのでしょうか?昔のミカン畑の写真です。お母さんたちは、おぶい紐で子供を背負って畑に行ったんですね。

総てがこういうかわいらしい展示です。素人と呼ぶより、プチ・ミュージアムと呼びましょうか。専門家がお金をかけて造ったミュージアムより、何だか心に届く。そこらへんにあったものを並べても、それがすごく大事に思える。

いずれも、展示した人たちの、どうしても世の人たちに伝えたいという気持ちがあるからなのでしょう。

小さくとも、こういう庶民の日常を伝えるミュージアムがあちこちにあっていいはずです。私もこういう仕事を残したくなりました。"