湯浅の時間

ちょっとしたこと

和歌山県湯浅は、醤油のまちです。こういう昔からの産業や歴史のある街には、その傍らに想像力を駆り立てる、いろいろなシーンや物が静かにあるものです。

塀の上に置かれた古い漬物石、ずっとぶら下がっているようなフグ提灯、何年も経っているようなマネキンの白い手。

観光の主人公にはならない、もう一つの時間が流れている。そんな脇役の多いまちの方が、面白いのかもしれません。

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まちなかの観光ルートをたどってもたどらなくても、私的にはこういう物に目が行ってしまいます。

このイルミネーションは機能しているのかしら。誰が何時、どんな気持ちで吊るしたのでしょう。今、この午後の陽が当たって、その影が何とも可愛い。イルミネーションのシルエットが、壁に飾られたネックレスのようです。

商店街はひっそりとしています。どこの地方の街も、今はそうですね。人通りも極めて少ない。

そんな中で、このお店にはマネキン人形の人口密度が高い。しかも皆、喪服を着ています。白い手が街を操っているように見えてしまうのは、街が静かすぎるからかもしれません。

この店は何時まであったのでしょう?ツタがはって、古いネームプレートといい雰囲気を出しているのですが、それはよそものがふらりときて言うセリフですね。


見学できる醤油工場や土産物店に、観光バスのお客さんは流れていきます。

でも、この工場横の道に並ぶ出番待ちの醤油瓶が美しい。湯浅の冬の時間が、この瓶を磨いているようでした。


この日、お休みだった魚屋さんの戸の前に、ポンポンに膨らんだフグが揺れています。風に、影も揺れている。

このお店が、空いているときにまた来たい。道路に面した外の流しなどが綺麗に片付いている。古いけれども、小さいけれども、きっといいお店なのでしょう。伝わってきます。


午後の青空が、布団をポカポカ膨らましてくれます。人のまちでも、人の布団でも、こういう様子を見ているだけで、なんとなくほっこりする。


う~ん、思わずうなってしまいました。普通のお家の門近く、塀の上。丸い石は何でしょう?漬物石?かつて何か役割があったのでしょうか?

「あなたを驚かすためにここにいました」なんて声が石から伝わります。


私の大好きな花「皇帝ダリア」が、背筋を伸ばして咲いていました。そのバックが、さびたトタンでもなんでもいいじゃないですか。かっこいい~!


夕方の日差しは、思わぬ絵を描いてくれます。古い灯篭、何度も場所を動かされた祠の近くにスッと立つ。いい形でした。

こんなお散歩ができる街、とろんとした時間が流れている。湯浅の時間に浸りに、また出かけましょう。"