道の駅考

ゆとりある記

全国1100近くある「道の駅」、暮らしに定着していますがいくつか巡るとそれなりに大変だろうなと感じます。千葉県南房総市・鋸南町の4つを回りました。

90年代にできた老舗は、農産物の一次加工売り上げが頼り。別のところはもっぱら観光バス客へ花の販売。古いハードを持て余しているところも。

そんななか廃校になった保田小学校を改修利用した新しい道の駅には、目からウロコでした。
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ここは「道の駅とみうら・枇杷倶楽部」、1993年全国で103カ所が第1回目の登録となった中の一つ老舗中の老舗です。10年くらい前にもうかがったことがありますが、今なお健在でした。


房州びわにこだわった商品開発、地域密着の体験プログラム、ギャラリーやカフェも。ここが地域外からお客を集め、地域に流す、そんな役割を果たしています。


年に一カ月、びわの時期に加工所が稼働、ここで作るびわのピューレが、カレーにもお菓子にもソフトクリームにも使われ特色ある味を作っています。


地域のレストランから畳屋さんまで紹介するカード。これを見ただけでも、この施設の役割が分かります。旅行会社であり、観光協会でもある。

そして何といっても、他が作れないびわ製品を作っている。多少高めでもおいしいから売れる、この売り上げがこの施設の生命線とのことです。

この成功は、周囲にいくつもの民間施設が追いかけるようにできたことでも分かります。皆が視察にきて、ここから多くの事を学んできました。

失敗も成功も、何でも話してくださるのは、先輩ならではの懐の大きさでしょう。


近くにある「道の駅おおつの里・花倶楽部」。花の好きな方はゆっくり観賞できるでしょう。でもなんとなく、正面に大型バスが並び、観光客が安い花を買いあさっていることが目立ちます。


観光客のざわつきから離れたところで咲く花は、「もっとゆっくりすればいいのに」と言いたげでした。


「道の駅富楽里とみやま」、高速道路からも入れるハイウェイオアシス機能も兼ねています。大きいけれどもなんとなく持て余している雰囲気。2002年にできたにしては、ハードが古びています。


東南アジアのマーケットのようながらんとした空間に、房総名物の巻き寿司がありました。ふだんからよく買い物に来ているようなおばちゃんたちが、品定め。あまりしゃれていない施設は、逆にくつろげるのかもしれません。


最後にご案内いただいたのが「道の駅保田小学校」、2014年に廃校となった校舎を活かし、都市交流施設として出来上がったばかりです。


小学校にあったものがそのまま、新しい発想で活かされている。感心したり、笑ったり。これは尊徳像をシンボルにした「カフェ金次郎」。


学校に飾られてきた数々のトロフィーや立派な絵をそのままに、中国料理店にしてある「3年B組」。


元体育館は「きょなん楽市」という物販施設です。近くの農産物から、千葉県全体の物産も並びます。特筆すべきは、保田小学校ブランドのお菓子やグッズ。陳列台には跳び箱や学校机やイスも。


2階の教室は簡易宿泊施設「学びの宿」。教室に畳ベッドが並び布団が置かれ、大人4000円で泊まれます。もちろんお風呂「里の小湯」もあり。

教室の横の廊下は拡張されて日当たりのいい、くつろぎスペース。巨大な縁側のような空間には、遊具が、平均台も。ここは自由に無料で使えるのだそうです。

こうなると、道の駅というイメージをはるかに飛び越えた、発想の駅のようですね。

今までの古い道の駅が、かつての新鮮さを感じないのは、きっと物販だけに頼り過ぎているからでしょう。今は、物よりもコト、交流や出会いのあるそんな駅を求める時代です。

違うライフスタイルに乗り換えられたり、いろいろな人が交差する場、切符を買って知らない土地に出合える場、そんな要素がこれからの道の駅には必要です。

保田小学校もいつかはまた、古いといわれるようになるのかもしれません。でも建物が朽ちる頃には、ここの新しい発想で刺激を受けたたくさんの人たちが、ここから素敵な未来へ旅立って行っているはずです。"