北の屋台へ

ゆとりある記

北海道帯広の「北の屋台」といえば、まちづくり拠点としての“屋台ブーム”の火付け役。街を良くしたいというみんなの思いが屋台に結集し、20件の店が寒さの中で奮闘しています。

せっかく街にこんな場があるのなら、訪れた側は暖かいホテルの中だけにいないで、コートをはおって「よし、それ!」と外に繰り出さなくては。小さなカウンターでの味、話はまた格別です。

平成13年にできた帯広「北の屋台」、銀座通りからひょいっと入った所に店が並んでいます。先ずはトイレに行って、その美しさにびっくり。屋台といえば汚いトイレがつきものですが、さすが。トイレで知り合った人と、名刺交換までしてしまいました。

腰を下ろしたのは、ブラジル料理の屋台「オブガリータ」。帯広でなぜ?と思われるでしょうが、地元の人も利用する屋台ですから、いかにも帯広という店ばかりじゃ飽きちゃいますよね。韓国料理などもあり、ここの屋台村の構成が上手いなと思います。

ブラジル料理といっても、こてこてブラジルではありません。基本、地産地消。店のメニューには、野坂さんのユリ根、波佐さんのインカの目覚め、神谷農場のニンニクなど○○さんの△△という表示です。

早速、地元の源ファームの生ハムを、ここのママさんが切り分けてくれました。彼女は長くブラジルに住んでいたとのこと。離婚し日本に戻ったことをきっかけに、人に使われるより自分でやってみようと、屋台にチャレンジしたそうです。

まちおこしだけでなく、屋台は自分おこしの装置でもあったのでした。娘さんと二人でがんばっています。

同じブラジルに定年を機に渡り、ボランティアで現地の学校づくりに協力をしてきたというもと教員のご夫婦が、なつかしいブラジルのお酒を飲んでおいででした。カウンター越しに、いろんな人生が交わります。

ふらりと向かいの屋台へ移動、ここには「緑提灯」がぶら下がっています。私はこの提灯の仕組みを知りませんでした。
北海道・小樽から始まった、日本の農水産業を向上させようと飲食店が地場産品を使う運動の象徴だそうです。

日本の食料自給率が約40パーセントなので、お店のメニューが地産地消50パーセントなら★ひとつ。60パーセントなら★2つ、90パーセントなら★5つという仕組みだそうです。


「農屋」と書いて「みのりや」と読むこの屋台は、堂々★5つ!でした。ここのご主人は、さまざまな料理を現場で学び、それでも全く違う商売もしてみようと運転手などもやって、そして、この屋台に行き着いたという人。北海道でよく登場する山ワサビを漬け込んだ、焼酎をすすめてくれます。

ふっくらとウエストの太い本物のシシャモ。薄味に煮た白子。バター醤油で食べるジャガイモのイモ餅。“地場産品応援の店”だけあって、「おいしい、おいしい」の連続です。


メニューにある「とまらない豆」がまたおいしかった。いわゆる浸し豆なのですが、これが本当に止まらない、お箸の行ったりきたりが止まらない。作り方を教わったのですが、そのレシピは酔いとともに飛んでいってしまいました。また、食べに行くしかありません。

もしこの晩、私が「寒いから、ホテルのなかに居よう」と閉じこもっていたら、こんなおいしい時間は過ごせません。帯広の印象も違ったはずです。人と味に触れ合うには、行動力必要。誘ってくださった方々、ありがとうございました。

で、帯広の最後は、有名スイーツ。空港に向かう前に量り売りスイートポテト1キロを買い込んで帰ったのです。