豚丼に満足

お仕事で

北海道・帯広で開催された「地域再生セミナー」で『食と人を活かして~スローライフ時代のまちづくり~』 という話をしてきました。

そのなかで、つい“北海道というと満腹にさせてくれるって感じ。でもこれからは、満足させてくれないと”など叫びました。

でも、翌日いただいた帯広名物の「豚丼」には、満足!何より地元の方が、この味を愛していることに感激したのです。

「豚丼」と書いて「ぶたどん」と読みます。「とんどん」ではありませぬ。それと「牛丼」に慣れている人は、お肉が煮込んであるものと思われるかもしれませんが、全く違います。

豚肉を焼いて甘辛味のタレを絡めてまた焼いて、と、鰻の蒲焼みたいにしてあるのがご飯の上にのっている丼です。私は、帯広でなく、阿寒で食べたっきり。発祥の地でぜひと思っていました。

街には「豚丼」の看板がやたら並びます。だからついつい、会う人ごとに「豚丼はどこがおすすめですか?」と聞きます。

タクシーの運転手さんは「我が家の女房が作ったのが一番」とか「あの店は味が落ちた」とか「こげたのが好きならあそこだ」とか。3回乗ったのですが統一見解は出ません。

セミナーのあとの懇親会でもちょっと「豚丼」についてうかがうと、一気に話題は「豚丼」一色となりました。今宴会で食べている料理はどこかにとんで、「豚丼」の話題で持ちきり。

皆さんの解説を要約すると、店により炭火で炙るところと、フライパンで炒めるところがある。タレにも辛い甘いがある。肉はロース、肩ロース、バラがある。厚い、薄いもある。トッピングはグリンピースや白髪ネギ。

私が「初心者にはどこがいいですか?」と聞けば、また十人十様、あそこがいい、ここがいい、と結論が出ません。背広姿のおじさんたちが「豚丼」の話で興奮。こんなに愛されている「豚丼」は幸せ者です。

この日は素敵な煉瓦造りのホテルに泊りました。帯広ならではのモール温泉です。庭に面した部屋はナチュラルな造り、朝食はこんがり焼いてくれたパンがおいしい。庭ではかわいいリスが戯れています。

と、なんともロマンチックないい時間なのですが、私の頭は夜から朝にかけて「豚丼」一色。「どこで食べようか、何時ごろ食べようか、ならば朝食はこの辺でやめようか・・・」

なおかつ、ホテルからの送迎バスの運転手さん、観光案内センターの方、地元スーパーのレジのお姉さん、にまで「豚丼どこがおすすめ?」と食い下がり、結局は駅ビルの中にしたのでした。

これです!!肉の枚数で値段が違います。私は普通の4枚のもの。約900円。運ばれてきたのは、少々表面がこげた炭火炙りのグリンピースタイプ、ロースです。パクリ!柔らかい、甘い、辛い、おいしい。ご飯がすすむ、すすむ。もちろんビールも。

「おいしい」と騒ぐ女性一人客に、お店の人がさらに自慢します。「北海道の豚肉の中で3%くらいしかとれない、肉を使っているんです」「きゃ~~~~」


私の帯広「豚丼」初体験は大成功でした。スーパーでも「豚丼」用の肉を売っている、タレだけでもコーナーができている。まさに帯広は「豚丼」なのですね。タレと豚丼おかきをお土産にしました。

でも、地元の人がとことん愛する味には、こちらが口を運ぶのが一番。またゆっくり行きましょう。

ところで、帯広の開拓に活躍した依田勉三は静岡県松崎町出身。静岡に30年暮らしていて私にとっては、なつかしい地名です。しかも松崎は大好きだったところ、ここの大沢温泉ホテルは依田勉三の生家、何度もうかがいました。

帰路の飛行機で、そのことを思い出したのです。あの暖かい松崎、ナマコ壁の生家から寒い北海道に渡り、帯広に豚を連れて入った彼のおかげで、今日の「豚丼」の満足があったわけです。